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原住民×カエデ(漂着した人) Part2

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 僕…カエデは、近くで聞こえる声で、目が覚めた。
「……」
何を言っているかは分からなかったが、何人かの男が、僕の部屋の前にいるようだ。
僕は、耳をすませた…
「……カエデ…ヨキ……ぅホッ…」
「スグ……スグっ……」
カタコトで、何を言っているのかわからなかった…
すると、扉が開いた。
僕は、慌てて目を閉じて、寝ているフリをした。
「…ヨキネコ…」
1人が言った。
「……カァイィ…」
誰かの手が僕のほおに触れた。
そこで目を開けてしまえば良かったのかもしれない。
でも僕は目を閉じて、必死に、寝ているフリを続けた。
しばらくの間、男達は何か話したり、僕に触れたりした。…怖くて眠れなかった……



数日後……
僕は、30歳になった。
「カエデ!誕生日おめでとうございます!」
いつものように、Aが話しかけてきた。
「ありがとう!あれ…今日って儀式の日?」
「今日は、いつもと違います!これを来てくださーい」
Aが花柄の羽織はおりを僕に手渡した。
綺麗きれいがらだね。何か特別な儀式なの?」
僕が聞くと、
「そうですよ!」
Aが言った。
「ふーん…。」
渡された花柄の羽織を、いつもの白い着物の上から羽織ると、Aが儀式の場所まで案内してくれた…



「ここでーす!」
目隠しを外されて僕が初めに目にしたのは…
がけ…?」
海が、太陽の光を浴びて、キラキラと輝いていた。
「飛び降りてくださーい!」
Aの言葉に、背筋が凍りついた。
恐れていたことがとうとうやって来てしまった。
「な…んで…?」
ようやくしぼり出した僕の言葉を聞いたAは、
童貞どうていの30歳は魔法使いになっちゃいます…。カエデが魔法を使えるようになる前に、排除しなくてはなりませーん。」
そんなことで僕は殺されてしまうのかと思うと、涙が自然とほほを伝った…
「死にたくない…。誰か助けてよ!」
後ろを振り返りながら叫ぶ。島民の何人かと目が合った。
その目はひどく冷たく、儀式の時に見たような優しさや、熱は微塵みじんも感じれなかった。
「嫌だ…死にたくない……助けてよ!」
僕は、その場に座り込んだ。
すると、すぐ近くにいたAが、大蛇のように太い腕で僕の首をつかみ上にかかげた。
「ぁ……くっ……」
首がまる…優しく、温かく僕を触ってくれたあの手が、今は僕を苦しめた。
「さよなら…カエデ…」
Aの手がゆるまり、僕は落ちた…




最期に見えたAの顔は……

いつも笑顔で犬のような顔だった……
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