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??×僕

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    僕は…恋ができないと思っていた。
なぜなら、女の子を好きになったことがなかったからだ。
周りの友達の会話に入っていけず、
「どの子がタイプ?」
と聞かれると、戸惑とまどって、
「恋愛とか興味なくてさ。」
と答えるしかなかった。
僕だって、人を好きになる…恋をするということを知ってみたい。
家族を愛するのとは違う感情を…知ってみたかった…




「びー…える?」
聞きなれない言葉に、僕は困惑した。
「そうそう!Boys Loveボーイズ ラブの略で…なんか、男同士で恋愛する…みたいな?」
びーえるとやらの話をしてきた友達…イサオが言った。
「ふーん…男同士とかあるんだ。」
「俺も初め聞いた時はビビったよ~。でも、彼女が好きみたいでさ~。」
イサオは、大の彼女好き人間で、彼女の為ならなんだってする男だ。
「それで、どうするんだ?…まさか、男好きになる…」
「違う違う!そうじゃなくて、BLを読むんだよ!」
僕の言葉を遮って、イサオが言った。
「BLを…読む…?」
言っている意味が少しわからなかった。
"BLと言うのは、男同志で恋愛することを意味するから…【BLを読む】とは、空気を読むというのと同じなのだろうか…?"
頭の中で考えをめぐらせていると、
「あー…えっとな…漫画とか、小説とか…アニメとかあるんだよ。」
と説明してくれた。
「へぇ…」
つまり、イサオは漫画、小説、アニメを見てると言うことだ。
「それがさ!めっちゃ面白くて…明日もってくるよ!!」
イサオがいつにも増してイキイキしている…
彼女に近づけて嬉しいのか、それとも…余程よほど、BLが面白かったのか。
「…あー…わかった。」
僕はイサオの勢いに負けて、明日、BLを借りることになった…




次の次の日…
結局昨日は、イサオが本を持ってくるのを忘れて、すごく謝られた。
そんな、読みたいって訳じゃないし…僕は気にしなかった。
「すまんすまん!これが、この前言ってたヤツ!」
イサオに紙袋を渡された。
「ん…ありがと。」
僕は、代わりにお菓子を渡したが、
「俺が無理やり渡してるからいいよ!それに…本当は昨日渡す予定だったしさ。」
と断られた。
"無理やり渡してる自覚あったのか…"
そう思いつつ僕は、
「わかった。…じゃあ、読む終わったら返すね。」
と言った…




僕は家に帰ってから、イサオに渡された紙袋の中身を見た。
普通の本が2、3冊入っていた…

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