人形撃

雪水

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禁忌

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世の中には触れてはならないものがある。
今宵、そんな禁忌に触れてしまったとある村の話をご紹介しよう。

その村の名前を唐笠村という。
ある日、唐笠村に1人の旅人がやってきた。
その旅人は方々を旅している途中で唐笠村に立ち寄ったらしく、着いた先の村や集落などになにか悪いものが憑いて居た時は滞在させてもらったお礼として祓っているらしい。

その旅人の荷物の中にはひときわ厳重に保管されているであろうことがひと目見ただけでわかる物があった。
滞在を初めて2日目の昼頃、数少ない唐笠村の子供が興味本位でその荷物に触ろうとしたらしい。
しかし旅人はその瞬間、村のどの大人よりも大きな声で

「さわるな!!!」

と叫んだという。
無論、その子供は泣きわめいたが旅人はその説明を明らかにはしなかったようだ。
それが意味することとはつまりその厳重に保管されている荷物が少なくともこの村に利があるものではないことの裏付けだということだ。

しかし悲劇というものはいつ何時起きるかわからないもの。

ある日の深夜、唐笠村内外問わず野盗の真似事をしている3人組が金目のものを探して旅人の荷物を漁ったところ、その厳重に保管されている荷物を見つけ

(これは金目のものに違いない、)

そう思いリーダーが家に持ち帰ったらしい。

3人組は明朝、改めてリーダーの家に集まりその荷物の正体を見てみることにした。
布を取ると中からは上質な木箱が出てきた。
その木箱を開けると中には綿がぎっしり詰められていていよいよ3人組の期待値はピークに達そうという時、綿の中から出てきたものは木製の人形の胴体と足や手などのパーツだった。

てっきり宝石や歴史的価値のある巻物などが出てくると思っていた3人組はいきなり出てきた人形を見て腰を抜かしてしまった。

この人形、見た目は和装の少女の人形だが完全に油断しているとなかなか根源的恐怖を煽る見た目をしている。

3人組はプライドが傷つけられたのかその人形の首を折ったり別で布に包まれていた腕や足を折るなどをした。

してしまった。

ほぼ同時刻、旅人も目を覚まし人形がなくなっていることに気がつく。
「ッ...」

一瞬にして旅人の顔が青ざめ頬に一筋の汗の跡を描いた。
次の瞬間旅人は走り出した。

理由はもちろん人形を探し出すため、ではなくこの村から出ていくためだった。
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