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一章 転移編

グラススレイブ

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光が収まると7人は広いが何も無い真っ白い空間にいた。
「ここは一体……」
「ここは大広間ですよ、我が使徒。」
「誰!」
六葉が振り返ると、そこにはアメリカ軍の情報士官用の軍服のような服を着ている女性が立っていた。
「私は、ルシフェル王国軍総合情報士官のアルミリアと申します。階級は中尉です。」
「ルシフェル王国?聞いたことない、ここは何処ですか?」
「ここは、地球のほぼ真ん中に位置する人間族の国家です。」
「ここは地球なの⁉︎西暦は何年ですか?」
「西暦2580年です」
「嘘…でしょ。まさか本当に異世界転生とやらをしてしまったの?」
「その表現は妥当ではありません。我らが崇める創造神LL(エルツー)様によって、呼ばれたのですよ。貴方達は。」
「……ふぅん。それは飛んだ迷惑ね。時にアルミリアさん。貴方はそのLL様とやらに会ったことはあるの?」
「……何が言いたいのですか?」
「だから、その神様とやらに会ったことはあるかって聞いてんのよ!」
「だから何を………」
「その神様を自分の目でしっかりと見た?しっかりと声を聞いた?しっかりと肌に触れた?紙面上じゃなく、実物を見ているの?いいや、絶対ない。この世に神様なんて存在しないのだから。」
「何を仰っているのですか!LL様は実在します!」
「むにゃむにゃ………何やってんだ六葉。…うん?ここ何処?その人誰?」
アルミリアと六葉が口論していると、後の6人も起きてきた。
◇◇◇◇
「えっ、まじで!ホントに異世界に来たのか!?」
「えぇ、本当らしいわ。そこにいるアルミリアさん曰ね。」
「マジかよ……信じらんねぇ。」
六葉は後から起きてきた6人に今の状況を説明していた。
アルミリアさん曰く、ここは未来の地球で、六葉達の年代から歩み続けること約100年後の2119年に宇宙船で人類は外宇宙に進出した。しかし、人々の考えの相違から人類は2つの勢力に分かれ、戦争したらしい。そして一方の使った対生物核弾頭の余波によって地球の生物が突然変異を起こし、その二大勢力が地球に戻ってきた時には、今の有様だった。
「…ということだそうよ。」
「にわかには信じらんねぇな。」
「そうね。今回は誠司と同感。そんなこと言われたって証拠がないとはいそうですかなんては言えないわね。」
「私も、千明と同意見。ねぇ、アルミリアさん。証拠を見せてくれますよね?」
春香がアルミリアに迫る。するとアルミリアは少し考える仕草を見せると1つ、ため息をついた。
「まぁ、貴方達がそう言い出すことは何と無く想像出来ました。分かりました。証拠を見せるついでに貴方達の機体を見せましょう。それで、皆さんも納得してくれるはずです。」
「機体?それはどういう事?」
茜が聞く。
「我々の唯一の戦闘手段ですよ。」
アルミリアの口がニヤリと斜めになる。
「分かったわ。案内してちょうだい。」
「分かりました。では、お連れ致します。」
7人はアルミリアに連れられ大広間を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇
アルミリアに連れられて歩く事10分。六葉達が連れてこられたのはまるでSF映画にでも出てきそうな如何にもな格納庫だった。
「さぁ、着きましたよ。これが貴方達が見たがってた物です」
「「「「「「「うわぁーー」」」」」」」
六葉達の目の前にあったのは、高さ約5mはある人型ロボットだった。
「これは?」
「我が国の誇る最新鋭FBF、グラススレイブです。」
それを聞いた六葉は唖然としていた。それと同時に彼女の心の中にある感情が生まれた。
「これに………乗ってみたい!」
「おいおい六葉、大丈夫か?今お前らしからぬ発言が飛び出した気がするんだか。」
「まぁいいじゃない誠司。基本的に物には興味なしの六葉がようやく興味を示したんだからさ。」
「とは言ってもさぁ、千明。六葉が物に興味を示すなんて天文学的な確率だぞ。」
「そろそろお喋りを慎んでください、我が使徒達。」
「分かったよ。」
アルミリアの制止でみんなが黙った。すると奥から二人分の足音が聞こえてきた。
「ダグラス技術士官にアイラ技術士官補佐。ご苦労様です。」
アルミリアが話しかけたそのダグラスなる人物は、アルミリアの発言に対してすごくかしこまっていた。
「いやいや、アルミリア情報士官殿。労いの言葉なんて勿体ない。僕は趣味の一環でこれをやっているだけなんですからね。」
ダグラスという人物はアルミリアに言い終わるとまるでマッドサイエンティストのような不気味な笑みを浮かべると、六葉達の方を向いた。
「君たちが噂の使徒様だね?僕の名前はグラス ダグラス。気軽にダグラスと呼んでくれ。早速なんだが、君たちにはグラススレイブに乗ってシミュレーションをしてもらう。いいね?」
「質問、いいですか?」
「どうぞ。」
「シミュレーションをして一体何をするのですか?」
「うーん、そうだな……簡単に言えば目的は2つ。1つはその個人に合わせたチューンを行うため。もう1つは戦闘に慣れてもらう事。それだけだ。」
「……分かりました。」
「先にこの少女に説明した通り、シミュレーションをしてもらう。みんな、好きなところの機体に乗ってくれ。」
六葉達はダグラスに促され機体に搭乗した。機体のハッチが閉まるとモニタが起動して仮想マップが表示された。
『モニタは全方向見られるんだな。』
『確かに。誠司の言う通りだね』
「おお、夏樹。もしかして聞こえてた?」
『みんなに筒抜けだったよ』
「そうね。私も聞こえたわ」
『そんなー。六葉まで……』
『みんな起動出来たみたいだね。それではこれより仮想戦闘訓練を開始します。』
ダグラスから通信が入り、六葉達の機体の画面に接敵警報が表示された。そしてモニターに映ったのは……
『何……あれ。』
『敵なんだろうけど……見た目キモい虫だよね。』
「とりあえず、自分の得意な距離で戦いましょう。」
《了解!》
戦闘が始まった。まず誠司が敵陣に突っ込み、拳を使って一匹ずつ上空に打ち上げ、六葉がライフルで撃ち抜く。残りの5人は分散した敵を各個撃破していった。そうして戦闘する事約二時間。やっと殲滅が完了した。
『お疲れ様でした。先の戦闘データから個人に合わせたチューンをしておきます。明後日から実戦です。しっかり休んでください。』
「ふぅ。」
六葉は軽くため息をついた。

    
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