異世界転生を知らない幽閉王子は死にたがり。

いちご食べたい人

文字の大きさ
8 / 25
転生

5

しおりを挟む
5

連れられた部屋で呆然と立っているとノック音がして使用人らしき少女が入ってきた。

年齢は…10~12歳ぐらいだろうか?
使用人服を身にまとい無表情の顔で僕を見ていた。

オドオドしている医者が彼女を紹介してくれた。と言っても名前は教えてくれなかったけどね…。

「しょ…紹介しますね、彼女はここで君のお世話をする使用人です。 僕の指示しか従わないので、城の状況とか諸々の情報を聞き出そうとしても…意味ないですからね!!
そうだ、そ…その服は、汚いので……新しい服を着てください。正面の机においてありますので。
では…失礼します。」

そう説明した彼は、そのまま部屋を後にした。
言いたいことだけ言って出ていった…名前もわからないしオドオド先生と命名しておこう。

とりあえず着替えようと体を動かした瞬間、横にいた少女が過敏に反応しこちらを睨んできた。

「行動するのであれば先に言ってから行動して下さい。変な動きをした瞬間取り押さることと、貴方の行動を終始目視して報告しろと命令されています。
貴方には信用なし微塵もないのですから。
それと、逃げ出そうとしても無駄ですので…無駄な行動はしないで下さいませ。
また怪我を増やしたくないですよね。」

彼女は冷たく、冷め切った目でこちらを睨んでいた。

地下牢よりはマシな部屋だと思ったが、さっきよりも警備は厳しいようだ…。

息苦しい。

とにかく…まずは着替えてからだな。

「わかった。 では…着替えたいから服を取りたいんだ。歩いてもいいだろうか。あと、着替えられないから手の手錠を外して欲しいんだが……随一報告とはこんな感じで合ってるのか?」

「着替えは主人様あるじさまが用意してくれているのでそれを着てください。手錠があっても着れるようになってますので、残念ですが手錠は外せません。
しかし、言葉が通じてよかったです。こちらの話を聞いてくれないと困りますからね…。では、夕食の時間なので取りに行って参ります。
それまでウルス殿に監視を頼みますので、くれぐれも妙な行動はとらないようにして下さいませ。」

そう言い残し彼女は部屋を後にした。

「はぁ…。」

無駄に広い部屋に僕のため息が響いた。
物も少ないのでかなり響いた。

ウルスも同じ部屋にいるはずなのに物音ひとつしないので、誰も近くにいないように感じる。

まぁいいか。

テーブルに置かれている着替えに手をかけ、着替え始めた。ウルスの監視を背にボロボロの服を脱いだ時だった。

「…っ?!」

息の詰まったような声が背後から聞こえてきた。きっと僕の背中の傷に驚いているんだろう。

どう考えても公爵家の息子がつけられていていい傷じゃないから…。

でも、こんな傷はただの昔の思い出だ。
魔法測定のひに魔法が使えないと言われた日、貴族なのに使えないなんて!!と怒り狂った母に屋根裏部屋で叩かれた時の傷…だったはずだ。

ご親切に、傷が残るよう黒い鞭で何回も何回も叩かれた…。

その時の僕は、僕ではない・・・・・・ので痛い思いをした…という記憶はあるが僕自身身が体験したという感覚がない。
だから昔の記憶という感覚なんだ。

でも、実際の痛みは分からないがその時も胸の痛みは今でもわかる。胸が締め付けられるような悲しみが…思い出すたび僕に襲い掛かるからだ。

多分傷の痛みよりも…胸の痛みの方が強かったんだと思う。

あの時から、僕の扱いはより一層酷くなった。
でも、あのころは“頑張れば報われる”とか“いつか振り向いてくれるように努力するんだ”などという決して報われない思いを胸に抱いていた。
希望を持っていた。
だから、そんなに苦しくても・悲しくても頑張れた。

でも、今は違う。

もう、報われないということは知っている。

そんなに努力しても!

どんなに我慢しても!

初めからダメだったものはどうしようもないんだ。
だから決めたじゃないか、なんで…もう一回頑張ろうなんて思ったんだろう。

どうせ、結果は同じだ。
同じだったじゃないか!!

服を着ている手を止めて、そよそよと入る風を感じ手を止めた。

ここって何階なんだろうか、風が吹いていて気持ちいなぁ。

風が入る窓に吸い寄せられるように近づいた。
窓を出るとエントランスがあり、そこから見える景色はとても綺麗だった。

高さは…マンションの3~4階くらいかな。

「…綺麗だな。」

足が止まらない。
外の景色に見惚れているとエントランスの端には足先がついた。

「痛っ。」

結構な力が入っていたのか、親指の爪が割れていた。そういえば、靴も履いていなかったっけ。

でも、もっと景色が見たい。
…この真下はどんなふうになってるんだろう。

エントランスの縁に身を乗り出し、下を見た。真下には、花壇に不器用に埋められた花たちがあった。

そういえば昔、学校で朝顔植えてたな。…日本での記憶が一瞬蘇った。

あれ…でも、その花はどうなったんだっけ?あれ……。
その先の記憶は白い靄がかかったように思い出せない。

なんでだろうか?

真下には花壇を眺めて思い耽っていると、不意に少し強めの風が吹いた。

花弁が散って風に乗っている…綺麗。


ーズルッ

手が滑って体がエントランスの外に放り出され、体が宙に浮いた。

周りには一緒に落ちている花弁が舞っている。

「…綺麗」

あぁ、今度こそ。




ー死ねる。


ーーーーーーーーーーーーーーー

誤字・脱字があったらすみません。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

処理中です...