彼の隣に私は似合わない

4月

隣の席の人

周りにいた先輩や先生たちの案内を受け、教室へ向かう。

廊下ではクラスが離れてしまった友達同士で話している様子などが見られた。

ふふふ、大好きな幼馴染と同じクラスになっちゃってごめんね

なんて性格の悪いことを考えてしまう


「なんか嬉しそう？」


ぷにっと右の頬をつままれる


「…そんなことにゃいよ？」


「目合わない！嘘つきの顔だ～」


おりゃー！っと両頬を大きな手に挟まれる


私の顔面は世界で一番幸せな場所だと思う。真面目に。


そんなことをしてる間に階段から1番遠いA組に着く。

ドアは開け放されており、席の半分くらいが埋まっていた。

前の黒板に席の表が貼られている。

宮下と三芳だから番号でも前後だったから席も前後だったらいいなぁ…という気持ちはあっけなく崩れる。

宮下わたしが1番後ろで三芳かれが1つ左隣の列の1番前。


「鈴乃1番後ろじゃん！いーなー」


たとえ1番後ろでも貴方の隣じゃなきゃ教卓の目の前と変わらないよ、なんて


「ふふふ、いいでしょ。ちゃんと授業がちゃんと聞ける席でよかったですね～」


わざと煽ったりなんかして気を紛らわす。


「どの席でもちゃんと聞きます～。とりま席つこうぜ？」


さっさと自分の席へ向かう彼の背中に気付けばか！なんて念じてもなんの意味もなさないので私もおとなしく席へ向かう。




席について初めて気付いたが、彼の一挙一動がすべて見える。


「…案外悪くない」




「なにが？」



左隣から聞こえる低めの声。


「なにが…ってなんのこと？」


「案外悪くないって、今言ったろ？」


私としたことが声に出ていたらしい


「…ほら、1番後ろだから。4月からラッキーみたいな？」


宮下鈴乃、それは案外でもなんでもない。誤魔化せるわけないぞ。


「…たしかにな」


「納得してくれるんだ！？」


思わず華麗？なツッコミをしてしまう


「俺、矢上恭介。よろしくな。」


「宮下鈴乃です、よろしくね。」




最悪と思った席の隣は強面だけど可愛いちょろいタイプの人。