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6月
荒れ模様の文化祭-01
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飲食系や体験系などそれぞれで決めた中で、私達のクラスは劇をすることになった。
他に3クラスがすることになっており、それぞれの持ち時間は30分から1時間を割り当てられた。
私達は、文芸部に所属する白崎さん考案の現代版眠れる森の美女に決めた。
劇は代々続く由緒正しい家の娘が、高校一年生のとき突然眠ったまま目が覚めなくなるところから始まる。
その原因は蔵から発見された巻物に記されていて、呪いの一種だということがわかる。
日本国内からは有名な神主さんやお坊さん、海外からはエクソシストなども呼んで目覚めさせようとするが、娘が起きることはない。
ずっと娘のことが好きだった幼馴染は医者を目指し、彼女を目覚めさせるために苦手だった勉強をひたすらに頑張り、見事医者になることができ、原因が呪いでも何でもなく、病の一種であることを発見し、彼女を目覚めさせてめでたしめでたし…といった感じだ。
元が童話であるから、かなりファンタジーな感じになってしまうがなかなか面白い。
そこまでは良かった。
話の内容は素敵だし、うちのクラスには裁縫が得意な子も絵がうまい子もいて、劇の完成度はとても高い。
でも配役が最悪だった。
娘役に李雪、幼馴染役に裕太が選ばれた。
理由は簡単、クラス内で最も華がある男女がふたりだから。
最初は実行委員だからという理由でふたりとも断った。
しかしクラスの過半数は退かない。
実行委員を押し付けておいて、今度は劇の主役まで押し付けるのだから勝手な話である。
最終的に、ふたりと背格好が似た別のふたりと交代で前半後半を演じることに決まった。
半分に減ったとはいえ、李雪と裕太の実行委員の仕事はほとんどこっちへ回ってきた。
ふたりも忙しいので文句は言えない、だが、もともと私と恭介君が背負っている仕事量のほうが多かったので、更に増えるとなると半端じゃない量となる。
しかも部活での出し物まであるときた。
死にものぐるいですべてをこなし、あとは今日と明日を乗り切るだけ、それだけを頼りに今日までやってきた。
ちなみに本日の睡眠時間は3時間だ。
健康を第一に6時間睡眠を守ってきた私にはかなりきつい。
「おはよう、鈴乃…隈すごいな」
「…おはよ。恭介くんもね、すごいよ」
駅の改札を出たところで待っていた恭介くんと合流する。
「薄めならバレないだろうし学校ついたら軽くメイクしようか、コンシーラー貸すよ。それ消さないと李雪が心配するよ」
「…俺に上手くできると思うか?」
「…私がやってあげよう」
お互い疲れていて、それ以上言葉が出てこなかった。
学校までの十数分、話すでもなく顔を見るでもなくただ隣を歩く時間がなんとなく心地よかった。
他に3クラスがすることになっており、それぞれの持ち時間は30分から1時間を割り当てられた。
私達は、文芸部に所属する白崎さん考案の現代版眠れる森の美女に決めた。
劇は代々続く由緒正しい家の娘が、高校一年生のとき突然眠ったまま目が覚めなくなるところから始まる。
その原因は蔵から発見された巻物に記されていて、呪いの一種だということがわかる。
日本国内からは有名な神主さんやお坊さん、海外からはエクソシストなども呼んで目覚めさせようとするが、娘が起きることはない。
ずっと娘のことが好きだった幼馴染は医者を目指し、彼女を目覚めさせるために苦手だった勉強をひたすらに頑張り、見事医者になることができ、原因が呪いでも何でもなく、病の一種であることを発見し、彼女を目覚めさせてめでたしめでたし…といった感じだ。
元が童話であるから、かなりファンタジーな感じになってしまうがなかなか面白い。
そこまでは良かった。
話の内容は素敵だし、うちのクラスには裁縫が得意な子も絵がうまい子もいて、劇の完成度はとても高い。
でも配役が最悪だった。
娘役に李雪、幼馴染役に裕太が選ばれた。
理由は簡単、クラス内で最も華がある男女がふたりだから。
最初は実行委員だからという理由でふたりとも断った。
しかしクラスの過半数は退かない。
実行委員を押し付けておいて、今度は劇の主役まで押し付けるのだから勝手な話である。
最終的に、ふたりと背格好が似た別のふたりと交代で前半後半を演じることに決まった。
半分に減ったとはいえ、李雪と裕太の実行委員の仕事はほとんどこっちへ回ってきた。
ふたりも忙しいので文句は言えない、だが、もともと私と恭介君が背負っている仕事量のほうが多かったので、更に増えるとなると半端じゃない量となる。
しかも部活での出し物まであるときた。
死にものぐるいですべてをこなし、あとは今日と明日を乗り切るだけ、それだけを頼りに今日までやってきた。
ちなみに本日の睡眠時間は3時間だ。
健康を第一に6時間睡眠を守ってきた私にはかなりきつい。
「おはよう、鈴乃…隈すごいな」
「…おはよ。恭介くんもね、すごいよ」
駅の改札を出たところで待っていた恭介くんと合流する。
「薄めならバレないだろうし学校ついたら軽くメイクしようか、コンシーラー貸すよ。それ消さないと李雪が心配するよ」
「…俺に上手くできると思うか?」
「…私がやってあげよう」
お互い疲れていて、それ以上言葉が出てこなかった。
学校までの十数分、話すでもなく顔を見るでもなくただ隣を歩く時間がなんとなく心地よかった。
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