彼の隣に私は似合わない

うさみ

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6月

荒れ模様の文化祭-04

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「おかえり」



 

いくらか目が覚めた様子の恭介くんはペンを握り机に向かっていた




 

「…ただいま。遅くなってごめん、今何してるの?」



 

何気ない"おかえり"と"ただいま"のやりとりさえなんだか胸を暖かくする__



じゃなくて、



今話題の不倫ドラマの最低男のことを思い出して熱を閉じ込める




少し距離を開けて隣の椅子に腰をかける



 

「今日のスケジュールの確認。クラスのと実行委員のと色々照らし合わせてる」




彼の手元を覗き込むと、いろいろ書き足されたシフト表があった




「今日、鈴乃とは開場から1時間の案内とラスト1時間の受付だけ被ってるよな」





そう言って私との距離を詰める


すかさず少し距離を開ける





「…」



 

ジトっとこちらを見つめているのは見なくてもわかった




「9時半から1時間と15時半から1時間だよね、把握してるから大丈夫」





しかしその目には知らないふりをしてにっこりと笑ってやる


未だ訝しげな表情で見る彼に更に続ける





「それより、李雪とは休憩かぶってる場所あって良かったね。一緒に回る約束はした?」





本当なら私達4人には、当日それぞれ3時間の実行委員としての仕事が割り振られていた



しかしそこを、クラスの劇で忙しい李雪と裕太の1時間ずつを私と恭介くんで請け負ったために、本来よりも自由時間が減ってしまっていた



だから時間がかぶっているのは本当にラッキーだった



因みに私は所属する部活、書道部で先輩の書道パフォーマンスのアシスタントをするため本日の自由時間は合計2時間ほどだ




 
「約束…はしてないけど多分流れでそうなる」





見つめる先をみると、休憩直前の1時間が李雪と一緒らしい





「そっか…李雪怖いの興味あるけど苦手だし、お化け屋敷でも誘ってみたら?腕とか貸してあげたらいいんじゃない?」





李雪の話題でしか話をそらせないなんて情けない話だ


自分ばかりが辛くなる





「…鈴乃は」






暫く間をおいて私の名前をぼそりと呟いた



 


「鈴乃はいいのか?」



 




 


…いいのか?



それは何を指してるの?



鈍感なのは裕太と李雪だけ、恭介くんに気づかれた?



恥ずかしさと恐ろしさが混ざって何も考えられない、どう答えるのが正解なのかわからない





 

「…なんで?」





今自分がどんな顔でいるのかはわからないが、酷い顔には違いない


でも聞くことしかできなかった
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