お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治

文字の大きさ
1 / 76

1 プロローグ、追放は終わりで始まり。

しおりを挟む
「どういうことだ?」

 苛立ちを隠しながら勤めて平静に問いかける。
「どうもこうもないだろう!お前は大して役に立っていない!今日だってお前がやったのはなんだ?俺たちが倒した地竜を運ぶ以外に役に立ったのか?たってねえだろ!お前の豆鉄砲みたいな攻撃じゃ意味ないもんなぁ!」

 確かに俺は攻撃力のある方ではない、まして冒険者全体でもトップクラスに攻撃力のあるこいつらには及ぶわけが無い。

「今日も硬いって皆言う地竜をワンパンだったしね!私達に盾役なんていらないわよ!」

「逆に報酬山分けの配分減っちゃうもんねー、それだったら居ない方がましっていうか。」

「捨石にいいかと思って置いていたが、我らは強い!捨石何ぞ置いている必要もない!」

 他の3人が示し合わせるように口を開く。

「そういうわけだ、これから貴族のパトロンもつくから運ぶ手もいらないからな、もうお前は足を引っ張るお荷物でしかないってわけで、わかったな?ほら!今日の分の金払ったら出て行けよ!」

 ムシャクシャしてやった、後悔はしていない。

 気がついたときには報酬の入った皮袋を全力投擲していた。

 全員分小分けされた金貨の入った安物の皮の小袋をだ。

 その重さは大体野球ボール程と思ってくれればいい。

 安物の皮に包まれたとはいえ金属の塊が怪物を堰き止める人外の膂力に連投される。

 酔っ払って人を嗤う隙だらけの奴らに避ける術があるかといえば誰もが分かるだろう。

 直撃を受けた4人は脳震盪を起こしてその場に倒れる。

 意識は辛うじてあるものの脳震盪を起こして動けない。

「せいぜい寝首をかかれないように頑張るんだな」

 そう冷たく言い捨てて出口に向かう。

「ロイドぉぉぉぉ!てめえ!おぼ、ぐぼあ」

 ゲラートが何か喚くが途中で途絶える。

「うわ、きたねえ、こいつ吐きやがった!」

「だらしねえなぁ、SSSランクの名が泣くぞ!」

 周りの酔っ払い達が笑いながら囃し立て、それに怒り狂ったゲラートが更に気炎を上げるが自由が利かなずにその場で崩れ落ちる。

 笑い声を背にギルドを出る。

 冒険者ギルド、そこは多種多様な依頼を冒険者といわれる何でも屋に斡旋する仲介所であり、そこには子犬の捜索といったお使いレベルのものから魔物の駆除や街の防衛といった命懸けの仕事まで多種多様な仕事がある。

 冒険者になるのに資格は要らない、必要なのはなるという意思表明と僅かな手数料のみ、故に浮浪者から貴族まで誰でもなれる。

 その能力も人柄も玉石混合、故に冒険者ギルドには実績と信用を担保する為にランクというものがある。

 力が強い、頭がいい、等々の諸々を含めてランクは査定される。

 下はHからA,AA,AAA,S,SS,SSSと上がっていき、H~Gが駆け出し、F~Eが一端、D~Cがベテラン、B
~Aが一流、S以上は英雄と呼ばれ、SSSに至っては生きる伝説とまで呼ばれ、現在は各国の中で5組居るらしいといわれている程度である。

 その一つ下、SSランクでさえ国に片手で足りる数しかいない。

 そんな俺たちは華やかな面から羨望の眼差しと嫉妬の眼差しを受けていた。

 俺の場合は嫉妬の他の眼差しが混ざっていたのだが、それは受付嬢の話でもある。

 俺が運搬や解体、情報収集の雑用をやりながら汚れ役と過酷であるタンクが天職と言える聖盾闘士という目立たない職業である事からスポットライトは他の4人の攻撃が得意な者たちに当たる。

 剣豪、大魔術師、魔拳士、魔弓術士、この職業は攻撃力に偏る上に攻撃も派手になる。

 最初はこうではなかったのだが、5年の月日とトントン拍子に上がっていくランクと周りの声に派手好きな彼らは変っていった。

 そして俺たちの間には溝が生まれて、このざまである。

「全く、情けねえな」

 何に対していうでもなく、そう呟く。

 ギルドの酒場の一件はよくあることでもあるし、刃傷沙汰にならない限りはギルドは介入しない。

 周りに被害が及べばその限りではないが、あいつらに関していえば嬉々として殴りかかってくるしな。

 過去に酒癖の悪い奴と大乱闘に巻き込まれてこってり搾られた経験上それはわかっている。

 それにあれを訴えるのはあいつらのプライドが許さないからな、下手な事はできないだろうさ。

 そんな事よりも、平静を保てなかった事が情けない、1人自嘲しながら俺は街を後にした。




『とりあえず田舎に帰ってしばらくゆっくりしようかな。』

 国境を越え、王都を挟んで逆にある故郷の村を思い出す。

 親も冒険者だった俺は妹と孤児院に預けられる事が多かった。

 俺を生んだ後の両親は共に村の周りの魔獣を狩ったり迷宮の間引きを領主から引き受けて報酬を得る半領主軍といってもいい立場であった。

 公務の為に子供を預かるのも孤児院の一つの業務であり、帰還後は魔物の肉を孤児院に渡していた事もあり俺が来る事に関しては誰も悪い顔をしなかった。

 しかしあるとき、両親は帰らぬ人となった。

 Aランクであった両親であり、実力的なマージンも十分に取る慎重な性格から領主の信任も厚かった二人だが、その日は運が悪かった。

 魔物大行進、通称モンスターパレード。

 何らかの原因があると言われるが不明の突然の魔物の大移動。

 その数は時に万を越えると言われている。

 それに遭遇した両親は即座に撤退を決めたが逃げ切れずに二人でその大群の相手をする事になる。

 魔力が尽きて狙われた母を庇いながら戦う父が重傷を負い逃げ切れないと覚悟を決めた時に母は命と引き換えに道を崩落させ時間を稼ぎ、父は力尽きた母を連れて村に帰って力尽きた。

 その後は領主軍が出張ってきて村は救われて俺の両親は英雄になった。

 幼かった俺たちはそのまま孤児院で育てられた。

 力が無かった自分が悔しかった俺は人を護る力を欲し、争いは嫌いだけど人を救いたい妹も人を助ける力を欲した。

 成人の洗礼という職業を与えられる儀式の時に俺は盾の扱いに長けた戦士に、妹は人を助けられる治療師になった(と聞いたのは手紙でだが)。

 冒険者としての収入の一部を恩返しの為に孤児院に送っていたので稼ぎを良くする為にパーティーを組んでいたがそれも抜けた。

 一度原点に帰ろう、そう思って俺は日の暮れた道を歩き出すのだった。 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。 勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

処理中です...