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プロローグ

Winter0

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 街灯の明かりが点滅している。今日はまた随分と冷え込んでいる。あたりはもう真っ暗でこの街灯だけじゃ、不安になる。ヴヴ、と携帯のバイブ音がなる。彼からLINEが来た。
「今日、寒いけど大丈夫?」
 はぁ、いつもいつもこんな優しい言葉ばかりかけて…本当はそんなこと、思ってもないくせに。
 最初は勝手な被害妄想かと思っていた。でも彼が私に向ける言葉は「大丈夫?」とか「可愛いね」とか気持ちのこもってない甘い言葉ばかりで、流石の私ももう嫌になってきた。
「ただいまー!」
 おかえりの返事はなく、あるのは静寂のみ。また母さん他の男の人の家に泊まりに行ってるのかな。
 父さんは…10年前に事故で無くなった。それから数ヶ月は私も母さんも泣きじゃくって食事も喉を通らなかった。それから、母さんはちょくちょく他の男の人の家に泊まりに行くようになった。 一度、ある男の人を家に連れてきたことがあり、
「私、この人と結婚するから。」
と言われた時は正直びびった。でも、その男が私を捨てようって提案したから母さんは怒ってその男とは縁を切った。私への愛情がまだ少しでもあったことが嬉しくて少し泣いてしまった。けど、それでも、母さんは別の男の人の家に行くことをやめなかった。
 久々に思い出してしまった。ああもう今日は嫌なことばっかで疲れた。眠い。
 ヴヴっと、携帯が鳴る。
「!?」
突然だったのでびっくりしてベッドから落としてしまった。どうせあいつだろ。見なくていいや。ヴヴとまた携帯が鳴る。うるさいな、携帯を拾い、開く。
「突然で悪いんだけどさ、」
「今から家に行ってもいい?」
 は?何を言ってるんだこいつは。こんな夜に家に来るとか、とうとう頭おかしくなったか?また、LINEが来た。
「寂しい。」
 ああそうだった、こいつの両親今旅行してるんだった。
「さすがに家は駄目だろ。夜だし。LINEで話すくらいでいいか?」
 家に来て欲しいって気持ちもなかった訳ではないが、でもさすがに夜に男女二人っきりは駄目だろぉぉぉ! はい、すいません。取り乱しました。とゆか、向こうが弱ってるのって珍しいな。…少しくらいなら話してやろうか。
普通にLINEすれば良かったのだろうが、少し、その…彼の声を聞きたくなり通話ボタンを押した。
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