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とうとうバレた

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 最初は、小さな魔法学校を造る事にした。教師はプリメイラ1人なので、生徒を多くする事は出来ないからだ。

教師を増やして、徐々に大きくしていけば良い。俺の出た大学の校舎を真似てみたが、なかなかの出来だ。

騎士と兵士の中から、面白そうなスキルを持っている者を選んで、生徒22人でスタートする。


有事の時の脱出経路は、ゴーレムの頑張りで完成した。

これで、大きな心配事は、食糧になる。俺が目を付けたのは山側の荒れ地だ。

ゴーレムに整地させ、栄養のあるフンを出す種類のミミズに似た魔物を、増殖して放つ。これで時が経てば、ふかふかの土壌になるだろう。


取り合えず、国として必要な準備は整ったので、久しぶりにダンジョンに行く事にした。




         ☆☆☆☆☆



「ダレイラ将軍、奴らと一気に決着をつけたいが、良い方法は無いか?」

「マッサ王国と比べますと、魔法部隊は我が国が上回っているのですが、兵士の数がやや少なく、いつも押し戻されしまうのです」

「では、武器を強化しては?」

「ロッジ公爵、材料をどうするのだ。今、そんな余裕は無いぞ」

「さすれば、南西に有る岩山を今一度、調べて見ては如何でしょう?」

「何、あそこは、プロスベラス王国の領地ではないのか?」

「昔、あの辺りの岩山に隣接する我が国とプロスベラス王国は、開発を試みたそうですが、硬い岩山に阻まれ断念したそうで御座います」

「それは知らなかった。駄目もとでやって見るか」

「その時は、狩猟民族など、多数の民族が居たそうで御座います」

「フン、そんな奴らなど、我らが行って脅せば、直ぐにひれ伏すだろう。逆らえば奴隷にして、こき使えばいい」

「よし、直ぐに手配せよ」

「「ははっ!」」



ーーーーーーーーーーーー      


ダンジョンの攻略はセフィーヌとミリカのユニークスキルの練習を兼ねて進めて行く。

セフィーヌは、魔物の血に含まれる水分を、凍らせたり沸騰させたりして、倒している。

ミリカの方は、相手のスキルを使えなくする事と、一時的に同じスキルが使える物だ。

俺の側にいれば、同じスキルが使えるのは凄い、と思ったが、インセクト以外は、俺のスキルが判らないので無理だった。まあ、虫が使えれば十分だが。

しかし、セフィーヌとサキのは使えるので、やはり凄いのだ。


ダンジョン攻略を始めて3日目の朝に、国中に配置して置いた、諜報虫のテレブスから映像が送られて来た。

俺の作った魔道具で、映像はみんなが見る事が出来る。

「この紋章は、トロイデン王国の物です」
「何しに来たのかしら?」

「嫌な感じだわね」


ーー

「だいぶ整備されてる感じがしますね」

「うむ、確かに。ヨウロウ公爵の話は、だいぶ昔の話しだからな」

「防壁の様な物が見えて来ました」

「石か、かなり強固な物だな。これに沿って進めば入口が有るだろう」



「あそこに何か有りそうです」

「やっとか、どんな山猿が住んで居るのか、見物だ」

「何者だ!」

「我々は、トロイデン王国の者だ。お前達の長に会わせよ」

「何だと!」
「エラン!……しっ!」

「へ、陛……」


「私がご案内致します。どうぞこちらへ」
「うむ、よかろう」



「なんと、まるで国の様ではないか」
「バカを申せ、我が国の街にも劣るわ」

ーー

トロイデン王国の奴ら……一応は国の使者として扱って貴賓室に通し、サキ、ミリカ、セフィーヌに同席してもらう。

「私が、ここの代表になります」

「お前が?……なんだ、ここの民族は、子供と娘しか居らんのか」

「どの様なお話しでしょうか?」

「トロイデン王国で、この地を調査する事になった。お前達は、我が国に隷属し調査に協力せよ。逆らえば、攻め滅ぼし奴隷としてくれよう」

サキの眉毛がピクピクしてる。これは、相当怒っているな。

「そうですか。相談を致しますので少しの間、お待ち下さい」

「好きにするがいい」

ーー

「あの横柄な態度、許せん。リック、ここで殺ちゃおう」

「サキに賛成ね」

「ええ、あの人を見下した無礼な物言いは、許せませんね」

「僕としては、向こうが手を出したので、"仕方なく対応した"っていう形にしたいんだ」

「何でよ?」

「これから先を考えると、余計な敵を作りたくないから」

「むぅ、それは言えるか」

「ここは、丁重にお断りする、と言う事でいいかい?」

「「「解りました」」」

ーー

「お待たせ致しました」
「いい返事を聞かせてくれ」

「貴方の様な者が居る国の下に、つく気は有りません。お引き取り下さい」

「ぷっ、リック。どこが丁重に、なのよ」

「何だと!小僧」
「おっと、動くなバインド

「くぅ、なっ……」
「し、将軍……」

「死にたく無ければ、黙って帰って頂こう」

「こ、小僧、後悔するぞ」

「ダンテス、お二方は緊張で動けないそうだ。別室に居る、この人達の兵士達に運んでもらいなさい」

「はっ、畏まりました」


ーー

「あ~、スッキリしたわね」
「さすがリックね」
「リック様、素敵です」

「これで、奴らが攻めて来るのは確実になった」

「そうね、顔真っ赤にしてたものね。ねえ、おみあげもあげたんでしょ?」

「もちろん」

さあ、どう出て来るか?



ーー


(陛下、1万の兵士がいれば、生意気な山猿どもの国など直ぐに落として見せます)

(うむ、物資も奴隷も手に入ると言う訳だな。ダレイラ将軍、期待しておるぞ)

(もう準備は出来ていますので、明日にでも出発致します)

ーー

「ホント、失礼な奴らね」
「どうするのリック?」

「森に入る前の草原で、終わらせるよ」
「陛下、我々はどうすればよいのです?」

「念の為に、当日は森の中で待機していて」
「畏まりました」


この世界に通信機器は無い、情報屋の様に特殊なスキルが有れば別だが。

よく言われる事だが、戦争で重要なのは情報だ。相手に作戦が筒抜けになっている場合程、間抜けな物はない。

そう言う意味で俺は恵まれている。衛星を、持っているのも同然なのだから。

「草原に来るのは、3日後くらいかしら?」
「そうですね、きっと」

「この国が始まって最初の戦いだ、油断はしない様に」

「「「了解」」」

ただ勝てば、いいわけではない。その先が問題だ。どうするか、悩ましい。

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