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魔法大国ジェルロームの消滅

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「何者だ!」

「私はグラウギル、ですが陛下は知る必要がありませんよ。暫く寝てて下さい」

「ううっ」

「お父様、この方に乗り移ればよいのですね?」
「うむ、そうだ」


ーーーー

「陛下、真に勇者召喚を行うのですか?それもこんなに大規模に」

「勿論じゃ」

「し、しかしこの事が発覚すれば、他の国が黙っていません。特にジョウモ王国のリック国王は恐ろしいです」

「構わん、やるのじゃ」
「……畏まりました」


ーー

「陛下、では始めます」
「うむ」


召喚の間に描かれた魔法陣は大きく、円い枠は何重にもなっている。50人もの魔道師が呪文を唱える始める。魔法陣が動き出す、大小の枠は各々速さが異なり逆回りする物もある。

やがて光輝き出した。そして何かが其処に現れ、大爆発を起こした。

「うわーっ!」
「バ、バカな」
「お父様」
「し、しくじった……か」



ーーーーーーーーーーーーーーーー


リリアナ様の大神殿の建築も無事に終わった。出来上りには満足している。

異世界サミットが終わってから、この世界は平和だ。さて、今日は何して遊ぼうかな?

「リック様、一大事で御座います」

内政大臣のアレツだ、朝から騒々しいな。

「どうしたのさアレツ?」

「た、たった今、ラダステリィ王国のクリスティン様から連絡がありました」

「そんなに息をきらして、お茶でも飲んだらどう?」

「何を呑気な事を、魔法大国ジェルロームが跡形もなく消えてしまったとの事です」

「はっ?何だって」

「ですから国が消えて砂漠になってしまったそうです」

「何があった……解った、見に行ってくる」


ーー

「リック、ジェルロームが消えたって本当なのかしら?」

「クリスティンが言うなら間違いないのだろうね」

「何があったのでしょう?」
「想像がつかないな」

「そろそろ着くわよ」

ヤクトビートルズから見る景色は遥か彼方の水平線まで砂漠だった。

ヤクトビートルは砂漠の上を飛んで行く。

「何か見えますね」
「何かしら?」

「「ピラミッド!」」
「何でしょうか、ピラミッドとは?」

いや、よく観ると違う。四角錐ではなく、六角錐だ。周りには6個のオベリスクが建っている。

「私の元の世界のお墓よ」
「お墓ですか?」

「降りてみるか」
「そうですね」


「入口は無いみたいだな。今の所、危険も無いみたいだし」

「リック、どうする?」

「クリスティンの所に寄って行こう」
「分かりました」


ーーーー


「リック様、よく来て下さいました」
「元気そうですね、クリスティン様」

「はい、リック様も」

「ジェルロームの在った場所を見て来ました」
「いかがでしたでしょう、ジェルロームは?」

「砂漠の中に妙な建築物がありました」
「建築物ですか?」

「ジェルロームが消滅した原因も判らないので、各国の代表者で調査団を組んではどうでしょうか?」

「調査団ですか……流石はリック様、早速手配を致します」


ーー

「ジョウモ王国からは誰を出すおつもりですか?」

「酔いどれの魔女、プリメイラ先生しかいないだろう」

「確かにね」


ーー

「そんな、嘘でしょ、ジェルロームが消えたなんて……」

「気持ちは解るが本当だ」
「理由は何なの?」

「それは判らない。だから各国で集まって調査団を結成する事になる」

「私が行って良いのね?」
「もちろんさ」

「ありがとう」



「リック様、調査の結果待ちだと思いますが、原因は何だと思いますか?」

「そうだね……気がかりは1つ」
「まさか逃げた魔道師」
「ああ、その通り」



ーーーー

クリスティンから連絡が来たのは1週間後だった。

『2週間後に現地に代表者が集まる事になりました。先発隊が仮の施設を造っていますので、そこで顔合わせを致します』

『分かりました。クリスティン様、お手数を掛けました』

『いいえ、ではその時にお会い致しましょう』
『はい』



その夜、俺はまた転生する前のあの白い世界にいた。


「リリアナ様?」
「久しぶりですねリック」

「はい、でも何で俺はここに?また死んじゃいました?」

「いいえ、ちゃんと生きていますよ。リックが立派な神殿を建ててくれたお陰で、この様に話ができます。いつでもとは行きませんが」

「……何かあったのですか?」

「ええ、ジェルロームの建物に関わってはいけません」

「調査もダメと?」
「そうですね、止めておいた方が良いでしょう」

「解りました。しかし、皆を納得させる理由が必要です」

「あれは"厄災の塊"だとしか言えません」
「厄災の塊ですか……解りました」

「リック、貴方がこの世界に来てくれて良かった。お願いしますね」



目が覚めた。……夢では無いよな。あの建物が厄災の塊。蓋を開けてはいけない、パンドラの壺と言う事か、皆に伝えないと。


ーーーーーーーー


「それでは調査もしてはいけないと言うのですか?」

「そうです。リリアナ様は、はっきりそう仰いました」

「しかし、……」

「皆様方はリック国王の言う事が信じられないと言われるのでしょうか?」

「そんな事は言ってはいないが」
「リック様、間違いないのですね」

「はい、バンタム国王」

「解りました。テレストラ王国はリック様に従います」

「ラダステリィ王国も従います」

「うむ、ならば我らも異存はない」
「帝国も従います」
「……解りました。良いでしょう」

こうして満場一致でジェルロームの建物については、封印と言う形で決まった。

しかし、どの世界にも不心得者は居るものだ。
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