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終章 いつも楽しく面白く

第77話 これが冤罪というやつ?

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 遂に対峙するアイリスとカオス。

「どうやら専用魔装具が戻ったようだな?」
「ええ、おかげさまで」
「力の方はどうだ?」
「試してみますか?」
「当然! 魔装‼︎」

 カオスの闇のオーラが体全体にまとわり付き、漆黒の鎧を作り出す。
 そして右手には、それもまたオーラから形成された剣が握られる。

「魔装⁉︎ カオスが始めて魔装した⁉︎ それに、今まではずっと素手で戦ってたけど、あの剣がカオスの武器なの⁉︎」

 パティの疑問に猫師匠が答える。

「カオスの魔装に決まった型は無いニャ。カオスは自身のオーラを使って、自由自在に武器や防具を作れるニャ。言うなれば、あの闇のオーラこそがカオスの魔装具と言えるニャ」

「オーラで武器を作る……あたしにも出来るかしら?」
「お前みたいに壊す事しか能の無い奴には無理ニャ」
「何ですってえ~!」

 猫師匠の耳を引っ張るパティ。

「いニャあああ‼︎ やっぱりお前は破壊神ニャアア‼︎」

「「はあああああああ‼︎」」

 魔力を高めて行くアイリスとカオス。
 その凄まじい魔力に大地や大気が震え出す。
 危険を察知した猫師匠が、みんなに避難するよう呼びかける。

「いかんニャ! みんな、すぐにここから離れるニャ‼︎ ここに居たら巻き添えを食うニャ‼︎」
「ヤバそうだから逃げるのよ!」
「金曜会議なの~」
「緊急退避なのよ!」

「ユーキ……」
「何やってるニャ、パティ‼︎ 早く逃げるニャ‼︎」
「でもユーキひとりじゃ!」
「あたし達が居たら、そのユーキがあたし達を気遣って全力が出せないニャ‼︎」
「うう~」

 猫師匠に諭されて、渋々その場を離れるパティ。
 そして遂に、アイリス対カオスの最終バトルが開始される。

「行くぜ‼︎ アイリス‼︎」
「来なさい‼︎ カオス‼︎」

「カオスから仕掛けた⁉︎」
「随分待ったからニャ。おそらく、逸る気持ちを抑えきれないニャ」

 アイリスに駆け寄ったカオスが剣を振り下ろす。
 その剣をロッドで受け止めたアイリスが、剣を横にいなしながらロッドを立て、そのロッドを軸に回転してカオスの頭部に蹴りを放つ。

 その蹴りを体勢を低くしてかわしつつ右に回転して剣をなぎ払うカオス。
 バッと後ろに飛んでかわすアイリス。

「ハッ!」

 ロッドの端を持ち、カオスの喉元を突きに行くアイリス。

「甘いっ!」

 瞬時に剣をナックルタイプに変化させてロッドを掴むカオス。
 
「でやあっ!」

 そのまま一本背負いのような形でアイリスごと投げるカオス。

「失礼ですね! そんなに気合い入れる程重く無いです!」

 投げられながらロッドをクルリと一回転させるとロッドが弓に変化する。
 落下しつつ体勢を整えながら矢を放つアイリス。
 ナックルを盾に変化させて矢を防ぐと、すぐさま槍に変化させてまだ着地前のアイリスに突進するカオス。

「気分の問題だよ!」

 槍の先端にロッドの先端を合わせるアイリス。
 まだ地面に足が着いていない状態で受けた為、カオスの突進する勢いに押されて数メートル飛ばされるアイリス。

 クルリと後方に一回転してようやく着地するアイリス。
 槍からナックルタイプに変化させてから、大きくジャンプしてアイリスに接近するカオス。
 アイリスも同じように、魔装具をロッドタイプからナックルタイプに変化させて、地上で待ち構える。

「潰れろ! アイリスゥゥゥ‼︎」
「ぶっ飛びなさい! カオスゥゥゥ‼︎」

 お互いの拳と拳がぶつかり合い、互いに弾かれて2人の間に距離が出来る。

「フッ、どうやら体はなまってないようだな⁉︎」
「この体はマナちゃんのピチピチの肉体なんですから当然です。むしろ私本来の体よりも動きやすいぐらいです」

 アイリスとカオスの息もつかせぬ激しい攻防に、言葉を忘れていたパティ達。

「凄い。何て早い攻防でしょうか」
「確かに凄いわ。だけどあの2人、さっきから打撃戦ばかりじゃない。空さえ飛ばないで……」

「様子見、というのもあるけど、おそらく自分達の中で自然と縛りをかけて戦っていたニャ」
「縛り、ですか?」
「パティの言うように、今は打撃技のみの地上戦にこだわってるニャ。カオスのバカが戦闘狂なのは言うまでもニャいが、マナの影響かアイリス姉様もそれに付き合ってる感じニャ。でも徐々に魔法攻撃も混ぜて来る筈ニャ」

 猫師匠の言うとおり、攻撃に魔法を乗せ始めるアイリスとカオス。

「ネザーワールド‼︎」

 カオスの周りの地面から、多数のゾンビが出現する。

「ダークネスフィールド‼︎」

 カオスとアイリスの2人を、巨大な闇のドームが包み込む。

「あれは⁉︎ フィーさんがユーキさんに仕掛けた闇の空間⁉︎ しかもカオスは先に多数のゾンビを召喚してましたよ! ユーキさん、大丈夫でしょうか?」
「心配無いニャ。ユーキは怖いのが苦手でも、今のユーキはアイリス姉様が前面に出てるニャ。お化け関係に怯む事は無いニャ」

 猫師匠の言葉どおりロッドの先を地面にトンと突くと、そこから円形状に闇のドームが消滅して行く。

「凄い! ユーキさんが苦労してようやく打ち破った闇の空間を、いとも簡単に払った⁉︎」
「さすがはアイリス姉様ニャ!」

「マナちゃんならともかく、私に怖い系は通用しませ……あら?」

 闇のドームが消えたそこに、カオスの姿は無かった。

「カオスが消えた⁉︎」
「いや、場所は特定できないけど、近くに魔力を感じるわ!」

 カオスの姿は無いが、次々にアイリスに襲いかかるゾンビ達。
 それを難なくロッドで払い除けて行くアイリス。

「こんなゾンビ兵をいくらけしかけて来ても、私は倒せませんよ?」

 そんなゾンビ兵の中、巨大なハンマーを振り下ろす人影があった。

「これはっ⁉︎」

 危険を察知したアイリスが、咄嗟にロッドを盾に変化させてハンマーを受け止める。

(くっ! お、重い⁉︎ ただのゾンビ兵にこれ程のパワーがある筈は……)

 そのハンマーを奮った人影は何と、ベールの召喚獣の1体であるラケルだった。

「え⁉︎ あれってラケルさん⁉︎」
「何でラケルがユーキに攻撃してるのよ⁉︎」
「ラケルちゃんはベールさんの召喚獣でしたよねぇ?」

 みんなが疑いの目でベールを見る。

「ええっ⁉︎ わ、私何もしてないですよ⁉︎」

 驚きの表情でブンブンと首を横に振るベール。

「だけどあれって、間違いなくラケルさんですよね?」
「まさか、散々油断させておいてこの時を狙ってたんじゃないでしょうね⁉︎」
「いやいや! ユーキちゃんを襲うつもりなら、パラスに居る時にやってますから!」

「ユーキ姉様に攻撃するなんて、母様!」
「味噌臭くなったの~」
「見損なったのよ!」
「いやだから、私はさっきからずっとここに居るでしょおお⁉︎」




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