ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

文字の大きさ
86 / 298
第四章 某国の姫君

第4話 アイリスと聞いてイリヤを連想した方、重症です

しおりを挟む
 ブリッジを解き、手を突かずにスッと起き上がるユーキ。

「まったく……何なんだいったい!?」

 フラつきながら、国王も起き上がって来る。

「うむ……さすがだ……この技のキレと威力、お前は間違いなくマナだ! さあ、もっとよく顔を見せておくれ!」
「マナ……よくぞ帰って来てくれました」

 正面から国王が、背後から王妃がユーキを抱きしめる。

「もう勝手に居なくなったりするんじゃないぞ」
「く、苦しいよー」
「少しぐらいガマンなさい! 私達がどれ程辛い思いをしたか」
「いや、そうは言われても何も覚えてないからさ……」
「時間をかけて、少しずつ思い出して行けばいい」
「そうね……これからはずっと一緒ですものね。さあ、長旅で疲れたでしょ? 今はお休みなさい……」
「え!?」

 すっかり油断したユーキの背後から、スリーパーホールドをかける王妃。

「ぐうっ! し、しまっ……た……」
「フフ、油断大敵よ!? マナちゃん!」

 けい動脈を締められ、完全に落ちてしまうユーキ。

「ンフフー、国王は打撃技、マナちゃんは投げ技、王妃様は関節技をそれぞれ得意としてたんですぅ」
「な、何なのよ!? この親子ー!!」




 

「……へえ、アイリスさんってフィルス大陸から来たんだ!?」

(またあの夢? アイリス……初めて聞く名前だなー)

「ええそうです、あなたは?」
「僕? 僕はマナ! これでも一応、この国の王女なんだよ!?」
「そうなんですか!? じゃあマナ様ってお呼びしないと、ですね」
「様なんて付けなくていいよー!! 僕、そう言う堅苦しいのは嫌いだからさ!」

(ホントだ……喋り方が僕と同じだ……)

「そうなの? じゃあマナちゃんって呼んでもいいですか?」
「うん! それでいいよ! あ、あとその敬語もやめてよね!」
「あ、ああごめんなさい! これは私のクセなんです……誰に対してもこうなので、勘弁してくださいね」
「ふーん、そうなんだ!? じゃあそれは勘弁してあげるね!」

「フフ、ありがとうございます。ところでマナちゃんって、女の子なのにどうして自分の事僕って言うんですか?」
「え!? そ、そういえば何でだろ?」
「プッ! 自分の事なのに分からないんですか?」
「うーん、子供の頃は違ったと思うんだけど……いつからだっけ? 忘れちゃった!!」

「フフ、面白い娘ですね」
「ブゥー! 笑わせるつもりの無いとこで笑われるのは心外だなー!」
「フフ、ごめんなさい」
「ああー! また笑ったー!」
「フフ」
「ウフフフ!」

(アイリスって何者なんだろ?)




「う……ううん?」

 目を覚ますユーキ。

「あ! 気が付きましたかぁ?」
「セラ? えっと、僕……あ! 僕、スリーパーで落とされたのか!?」
「そうですぅ、王妃様必殺のスリーパーホールドで見事に落ちましたぁ」

「ぐっ、くそっ! あの国王といい王妃といい、いったい何なんだ!? ここの連中は!」
「お二人は強力な魔道士であると同時にぃ、格闘技も得意としてるんですぅ。そしてかつてのマナちゃんはぁ、そのお二人よりも強かったんですよぉ」
「どんな親子だよ! って僕もか!? いや、まだ分かんないけど」

「でもぉ、ユウちゃんは実際に国王を倒したじゃないですかぁ、さすがですぅ」
「いや、あれはただテレビで見てたのを、見よう見まねでやっただけで……」
「見てただけでああも使いこなせますかぁ? やっぱり体が覚えているんですよぉ」
「う、それは……」

「まあそれはいいとしてぇ、みんな食事してますからぁ、私達も行きましょぉ! 早く行かないとみんな食べられちゃいますぅ」
「いやぁ、セラがここに居るなら大丈夫だよ」
「ブゥー! それどういう意味ですかぁ!?」




 豪華な食事でもてなされているパティ達。

「君達がマナを保護してくれたと聞いた……何と礼を言ったらいいか……本当にありがとう!」

 そう言って深々と頭を下げる国王。

「保護したって言っても、この中で1番始めに会ったあたしでもほんのひと月程前だから、それ以前のユーキは知らないのよ」
「ユーキ? ああ、確か今のマナは自分の事を異世界から来た35歳のおっさんだと思い込んでるんだったね!?」
「ええ、それで故郷であるこの国に来れば、少しは記憶が戻るかもって……もっとも別人だったらまったく意味は無いんだけどね」

「別人なんて事はありえない!! あの姿、あの声、あの喋り方、あの技、あの控え目な胸! どれ一つ取ってもマナに間違いない!!」
「控え目で悪かったな!!」

 少しムッとしながら、ユーキとセラが入って来る。

「い、いや、違うんだマナ! 2年前と比べて余りにも見た目が成長してなかったのでつい……」
「エロオヤジ……」
「ガアアアアアン!!」
「あらぁ! そうやってたま~に辛辣な事を言う所も、昔のまんまね」



「見た目が成長していない?」

 国王の言葉に引っかかるアイバーン。

「どうしたんですか? アイバーン様?」
「今国王はユーキ君の見た目が2年前から成長していないと仰られた」
「ええ、でも2年ぐらいじゃそんなに変わらないんじゃないですか?」
「確かに成人女性ならさほど変わらないかもしれないが、ユーキ君ぐらいの年齢の少女なら、2年も経てば体つきが変わってきそうなものだが……」

「なーに? アイ君まで僕の胸の事言ってるの? エッチ……」
「ぶぅっ! ち、違う! 誤解だユーキ君!」
「アイバーン、エロい……」
「エロバーンなのです!」
「いや、変なあだ名を付けないでくれたまえ! ロロ君! そもそも私は胸の小さい方が好み……じゃなくてだね!!」

「ハッ!? ネム、狙われてる?」
「ロリバーンなのです!」
「アイ君! いいかげんにしないと……」

 握り拳に力が入るユーキ。

「ち、違うぞ!! ユーキ君!!」


「待つんだマナ!! オシオキなら私が代わりに受けよう!!」
「いや! マナのオシオキなら俺が受ける!!」
「何だとー! レノよ! お前とマナの結婚は保留になっている! だから今、マナのオシオキを受けられるのは私だけだ!!」
「な!? ズルイですよ! 国王!」
「ズルくないもん! 私はマナの父親で国王だから、当然の権利だもん!!」
「だもんってあんた……」




「こ、こいつら……」

 怒りに体を震わせているユーキ。

「僕の周りの男共は、変態しか居ないのかあああ!!」






「ぼ、僕は違いますからね……」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...