ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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第四章 某国の姫君

第19話 マルマルマ~ル~マルマ~ル~

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 レノを抱えたキスパーが、リーゼルの城に帰って来る。

「ただいまでフ、レノを捕まえて来たでフ」
「キスパー!? あの時消滅しちゃった訳じゃないんだね?」
「僕も召喚獣だから、たとえ消えても何度でも召喚できるんでフ」
「そうなんだ!? ところで、口調がキスパーになってるけど、キスパーもロロみたいに自我があるの?」
「キスパーには自我は無いわ……中でネムがキャラを演じてるだけ……」

 いきなりネムの口調で喋り出すキスパー。

「おおぅ! そうなんだ? でも確かにその姿でその口調だと、ちょっと違和感あり過ぎるね……」
「じゃあ、元に戻るね……」

 キスパーの姿が光になって消えたその後に、宙に浮いたネムが現れ、タタンッ! と地に降り立つ。

「ネム、お疲れ様!」
「ありがとうございます、ユーキ姉様……あ、マナ姉様って言った方がいい?」
「別にユーキでいいよ、マナって呼ばれると、どうもまだこそばゆいから」
「うん……分かった、ユーキ姉様……」

「そうなんですかぁ? じゃあ私も、マナちゃんの記憶が戻るまではぁ、今まで通り穂乃果ちゃんって呼びますねぇ」
「いや、呼ばれた事ねーわっ! 誰だよ、穂乃果って? ラブラ○ブかっ!?」

「ほら! 漫才やってる場合じゃないでしょ!? もうじきマルス国王がヴェルン軍へ降伏勧告を出すんじゃないの!?」
「そうでしたぁ、ここからが本番なんでしたぁ」

 パティの言葉通り、マルス国王がヴェルン兵に向けて、全島放送で降伏勧告を出す。

「あー、あー! ヴェルン兵に告ぐ! ヴェルン兵に告ぐ!」
「始まった!」
「私はリーゼル国国王の、マルマルマ~ル~マルマ~ルである!」

 ポカッ!! ガガーッ! ピーッ!!
 何やらノイズが入り、一旦放送が切れる。

「何やってんだ? あのオヤジ……」

「痛い! ま、待てレナ! ほんの冗談じゃないか!? わ、分かった! 真面目にやるからっ!!」

 王妃にお仕置きされたマルス国王が、再び放送を始める。

「オホンッ! 失礼した……ヴェルン兵に告げる! 私はリーゼル国国王の、マルス・フリードである! 先程我が国の精鋭が貴国のレノ王子並びにセラ王女を打ち破り、その身柄を保護している」

 その放送を聞いているバートラー。

「レノ様とセラ様が捕まりましたか……ではいよいよですな……」

「2人を助けたくば、ただちに戦闘をやめ投降せよ!! 繰り返す! ただちに戦闘をやめ投降せよ!! そうすればレノ王子セラ王女、並びに来君らの身の安全は保証する!」

 徐々に動きが止まって行く両軍。

「我々リーゼルとヴェルンは、昔から友好関係を保って来た……私はこんな事で友を失いたくない! 我々はこれ以上の戦闘は望まない! どうか、賢明な判断を期待する……以上だ!」

「レノ様とセラ様が人質に取られたとあらば、我々はもう戦えない!! みな、リーゼルに投降しよう!!」

 ヴェルン兵に訴えると言うよりは、どこかに潜んでいるであろうパラスの監視員に聞こえるように叫ぶバートラー。

「お二人の命がかかってるんだ、俺は投降するぞー!!」
「俺も投降する!」
「俺もだ!」
「やっぱりリーゼルと戦うのはイヤだ!!」
「マナちゃんを傷付ける事なんて出来ねぇ!!」
「そうだ!! みんな投降しよう!!」
「マルス様は俺達の命を奪ったりはしない!」
「戦争なんかやめだー!!」

 至る所で、武器を捨ててリーゼルに投降を始めるヴェルン兵。
 その様子を隠れて見ているパラスの監視員。

(な、何なんだこれは!? 早くバーダ様に報告しなければ!)




 投降したヴェルン兵が、続々とリーゼル城に入って来る。

「みんなご苦労様です!! 辛い戦いだったでしょうが、よく耐えてくれました……ありがとう!!」

 ヴェルン兵達の労をねぎらうセラ。

「そんな! 頭を上げてください、セラ様!!」
「そうです! 我々はみなパラスのやり方には我慢ならなかったんですから!」
「みんな今回のセラ様の計画に大賛成なんです! 共にパラスの奴等にひと泡吹かせてやりましょう!!」
「そうだそうだー!!」


「こっちは賑やかだね!?」

 ヴェルン兵達の様子を見に降りて来たユーキ。

「……マナ様……」
「マナ様だっ!」
「ウオオオオッ!! 本当にマナ様が帰って来られたんだー!!」
「マナ様ー!!」
「お久しぶりですマナ様ー!!」
「相変わらずお美しいー!!」

「ア、アハハハ! ヴェルンの人達とも面識あったんだ? 僕……」
「マナちゃんがヴェルンに来た事があるのはほんの数回でしたがぁ、その度に大騒ぎでしたよぉ。それにしても……同じ2年ぶりに会うのに、みんな私の時よりも喜んでませんかぁ!?」

「き、気のせいですよぉ! セラ様ぁ!」
「俺達みんな、セラ様の事も大好きですからぁ!!」
「まったく……調子いいですねぇ」


 そこへパティがやって来る。

「ユーキ、あたし達はそろそろ配置につくわ」
「うん、分かった! じゃあ僕も戻るよ」

 みんなの元へ戻ろうとしたユーキがヴェルン兵達の方に振り返り。
 
「怪我した人が居たら後で僕も治療してあげるから、ちょっと待っててねー!!」
「ええ!? マナ様直々に治療してくださるんですか!?」
「マジかー!! くそー! 俺も怪我すりゃよかったー!!」
「オ、オイ! ちょっと俺を殴ってくれないか?」
「お、俺も俺も!!」

 ユーキに治療してもらおうと、怪我をしていない者までわざと傷を作ろうとするヴェルン兵。
 
「言っとくけど、そんなバカな事する人は治してあげないからねっ!?」
「うぐっ!」


 しっかりと釘を刺していくユーキだった。


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