ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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第五章 五国統一

第11話 頑張ったからといって、必ずしも報われる訳では無いのだ

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 箱を持った女性が、レフェリーに近付いて行く。

「さあ、Aグループの試合形式を決める抽選が、レフェリーによって行われようとしております!」

 レフェリーが箱の中から折り畳まれた紙を取り出し、それを拡げて掲げると、場内の巨大モニターにそれが映し出される。

「バトルロイヤル!?」

「決まりましたー!! 予選Aグループの試合形式はー!! 生き残りバトルロイヤルだー!!」

(バトルロイヤルかー。まあ、分かりやすくていいか)

「戦う舞台はこれだー!!」

 実況が叫ぶと、選手達が立っている地面がせり上がって来て、100メートル四方の四角い舞台が現れる。

「この舞台の上で戦い、負けた者は退場して行く。そして最後の1人になった者が、決勝トーナメント出場となります!」

「150人ぐらい居る中で勝ち残らないといけないんですね!? 結構過酷ですよ……」
「今のユーキなら楽勝よ!」
「さあ、それはどうだろうね……」
「ちょっとアイ君!? それ、どういう意味よ!?」
「1対1の戦いになればいいのだがね」

「敗者になる条件は3つ! KOされるか、自ら降参するか、舞台以外の地面に体の一部が付いた場合も場外負けとなります! その他にも重大なルール違反を犯した者は、運営の権限として強制退場させる事もあります!」

「舞台から落ちてもぉ、負けになるんですねぇ」
「でも、体の一部が付いたらっていう事は、空中はオーケーって事ですよね?」
「ふむ……そういう事になるな」

「それはかなりのアドバンテージよ! 飛行魔法使えない人って、意外に多いからね! ウチのメンバーだってまともに飛行出来るのは、あたしとユーキと……まあ、ネムは獣魔装すれば飛べるみたいだけど」 
「うん……でも今回の大会では獣魔装出来ないから、ネムも飛べない……」

 そしていよいよ、決勝トーナメント出場をかけた予選開始のゴングが鳴り響く。
 その瞬間、出場選手全員がユーキを見て目を光らせる。

「さあ、ついに始まりました! Aグループ予選、生き残りバトルロイヤル! おおっとお!? しかし、誰も戦おうとはせずに、全員がただ一点を見つめているぞ!? その視線の先にはー! ゼッケン89、ユーキ選手だー!!」

「な、何でみんな僕の方見てんだよ!? ま、まさかこんなか弱い少女1人相手に、全員でかかって来る気じゃないよな!?」

 そのまさかであった。
 アイバーンが危惧した通り、一斉にユーキに襲いかかる選手達。

「ユーキちゃん、覚悟ー!!」
「ああ! 待てテメェ! 抜け駆けすんな!!」
「何言ってやがる! ユーキちゃんを倒せばユーキちゃんと結婚出来るんだ! 行かずにいられるかー!!」

 皆ユーキを倒そうと、津波のように押し寄せて来る。

「いいっ!? ふざけんな! こんな大勢、一度に相手出来るかっ!! サンダーロッド!!」

 しかし、その言葉とは裏腹に、向かって来る相手をまるで天使が舞うように、雷をまとったロッドで次々に打ち倒して行くユーキ。

「凄い! あの数を次々にさばいて行く……いえ、何よりユーキさん、とても綺麗です……」

 メルクが見とれるように、他の観客もユーキの動きに見とれていた。

「ユーキ姉様、綺麗……」
「まるで舞っているようなのです」
「な、何で!? あいや、ユーキが綺麗なのは前からだけど、今まであんな動きはした事無かったのに……」

「んふふ~、あれはマナちゃんの動きですぅ」
「マナ!?」
「そうですぅ、マナちゃんは魔法の才能こそ飛び抜けていましたがぁ、体が小さくて非力だった為にぃ、体の大きい相手や力の強い相手に対抗する為に編み出した動きなんですぅ」
「うむ! マナのあの動き、久々に見たが、やはり美しいな……」

「ユーキ選手凄い!! 次々に押し寄せて来る相手を倒すのも凄いが、動きがとても美しいー! このような動きは、ベルクルの時には見せなかったが、隠し持っていたのかー!?」
「隠してたんじゃなくてぇ、思い出したんですよぉ」
「そうか! マナさんの記憶を思い出したと同時に、かつて会得していた技術や体術も思い出したって事なんですね!?」

 
 ユーキの動きを警戒して、仕掛けるのを止める選手達。

(ふう、とりあえず凌ぎ切ったぞ! でも、うん! 久々にやったけど、結構体が覚えてるもんなんだなー!?)
 
「あっとお! みんなユーキ選手の動きに圧倒されたのか、動かなくなったぞー!?」


 みんなが警戒する中、1人の男が前に出る。

「みんな、行かないのならどくっス! オイラが行くっス!」

(ん!? この声と喋り方、聞き覚えが……)

 選手を掻き分けて現れたその男は、かつてユーキに告白し、またある時はユーキに一撃で倒されたあの男だった。

「お久しぶりっス! ユーキさん!」
「き、君は確か……あ~……テント!!」
「ブントっス! キャンプには行かないっス!」

「あ、ああ~! ごめん! そ、そう! ブントだ! てか、君も出場してたんだね?」
「そうっス! ベルクルより遥々、ユーキさんを倒す為に来たっス!」
「へえ~、言ってくれるじゃない!? 以前僕に一撃で倒された事、忘れちゃったの!?」
「勿論忘れて無いっス! だからあの日以来オイラ、いつの日かユーキさんとちゃんと戦えるように必死に修行して、ついに魔装が出来るようになったっス!!」

「ええ!? 君、魔装出来るようになったの? 以前戦った時は、魔装具を契約したばっかだったのに、この短期間で凄いじゃないか!! あ! どんな魔装なの? 良かったら見せてよ!」
「え、えへへ! ユーキさんにそんな事言ってもらったら照れるっス! わ、分かったっス、今見せるっス!」

 すっかり舞い上がっているブントを、冷静に見ているメルクとセラ。

「え!? 確か魔装は予選では……」
「んふふ~、ユウちゃんも策士ですねぇ」

 ユーキに促されて魔装するブント。

「魔装っス!!」

 ブントが叫ぶと、動きを重視して極限まで軽量化された、忍者風の魔装衣が装着される。
 その魔装を見て、感激して拍手するユーキ。

「おおー! ホントに魔装出来るようになったんだね!? 凄い凄い!!」

 しかし、感激しているユーキを遮るように、レフェリーが割って入って来る。

「ストーップ!! ブント選手! 予選ルール違反により、失格退場!!」
「へ!? 失格?」

「ああーとぉ!! 何とブント選手、魔装してしまったー!! 今大会、予選試合での魔装は禁止されています! ブント選手、知らなかったのかー!?」

「ああーっ!!」
「ああーっ!!」

 思い出したように、驚きの声を上げるブント。
 そしてユーキ。

「ゴ、ゴメン、ブント! そういえば魔装しちゃいけない事、すっかり忘れてたー!!」


「どうやらユーキの策でも何でも無くて、2人揃ってただの天然だったみたいね……」

 
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