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第五章 五国統一

第46話 交渉は対等の立場で

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 胸のペンダントを引き、魔装具を具現化させるフィー。
 まるで、死神の鎌のような形の魔装具が現れる。
 その魔装具を見て、目を輝かせているネム。

「ふわあ~! カ、カッコイイ!」

 それは、ユーキやパティも同じだった。

「カッコイイ! ガ◯ダムデスサイズみたい!」
「まるでデスサイズね! まあ、あたしはデスサイズ◯カスタムの方が好きだけどね……て言うかフィーの奴、あんな魔装具持ってたなんて、今まで一言も言わなかったくせにぃぃ!」


「お褒めいただき光栄です。それでは、私も魔装させていただきます」

 頭上で鎌を回してから柄の先を地面に着くと、そこに魔法陣が現れる。
 その魔法陣の範囲内が黒い闇に覆われて、フィーの姿を隠す。
 その闇が消えた後、漆黒の、正に死神を思わせる魔装衣を装着したフィーが現れる。


「ネム選手に続いてフィー選手も魔装しました~!! その姿は正に死神だ~!!」


「全身黒の魔装衣……まるでパティさんみたいですね」
「パティ君の場合はもっと禍々しいオーラを発するがな」
「アイ君、パティに聞かれたらまたぶっ飛ばされるよ?」
「フッ! パティ君が近くに居ないから言えるのだよ」
「子供か」

 フィーの魔装した姿を見たネムが、フィーの能力を考察する。

(フィーは確かネクロマンサー。どんな闘い方するんだろ? ゾンビとか出して来たらヤダな~。まあ、仕掛けてみれば分かるか!)
「じゃあ、いっくよ~!!」
「どうぞ、遠慮なく!」

 猛烈なスピードでフィーに向かって走って行くネム。
 そのままの勢いで殴りかかるが、何か見えない盾のような物に阻まれて、ネムのパンチが届かない。

(何かある!?)

 その場で体を回転させてローキック、更にミドル、ハイと三段蹴りを放つが、ことごとく見えない何かに阻まれてしまう。

(やっぱり何かある!)

 ネムの態勢が整う前に、フィーが鎌で斬りつけて来るが、何とか後方に飛んでかわすネム。

(何だろ? 見えない盾? 霊的な物もヤダな~。でも、獣魔装が出来ない以上、力押しで行くしかないもんな~)


「試合開始直後、ネム選手が凄まじい速さで連続攻撃を仕掛けましたが、フィー選手には届いていないように見えました! 何かの魔法で回避したのでしょうか~!?」


「どう思いますか? アイバーン様」
「ふむ……考えられるのは、何らかの防御魔法を幻術で隠しているか……もしくは、フィー君が我々が捉えきれない程の速度で動いて防御しているか……いずれにせよ、力押ししか出来ないネム君には厳しい闘いになるだろうな」

(感触はあるから、何かはあるんだろうけど……まあ、あれこれ考えてもやる事は同じ! 見えない盾があるならぶっ飛ばす! 見えない魔法で防いでるなら、全力でぶっ飛ばす!!)

 再びフィー目掛けて走って行くネム。

「また正面から!? 馬鹿正直ですね! やはりまだ子供ですか……」
「あなただって子供でしょ!? 今はネムの方がお姉さんだけどねっ!!」

 真正面から突っ込んで行くかと思われたネムが、フィーの数メートル前でいきなり横に跳び、そこから鋭角に殴りかかる。

「なっ!?」

 意表を突かれたフィーだったが、すぐに態勢を整えて鎌を横になぎ払う。

「ハッ!」

 その鎌をジャンプしてかわし、フィーの頭上を飛び越えるネム。

「甘いです!」

 そのネムの動きを追いかけるように、縦に鎌を振り下ろすフィー。

「何のっ!」

 着地と同時にわずかに体をズラし、ギリギリの所で鎌をかわすネム。

「チャンス!」

 フィーの鎌が地面に刺さって抜くのに手間取っていのを見て、フィーとの間合いを詰めるネム。

「まだです!」

 何故か鎌から手を離し、体を回転させ始めるフィー。
 
「何だあ!?」

 地面に刺さった鎌をペンダント状態に戻してからすぐさま具現化させて、遠心力を利用してなぎ払うフィー。

「危なっ!!」

 咄嗟に態勢を低くして鎌をかわすと、しゃがんだ状態から一気に伸び上がりボディブローを放つネム。

「これならっ! どうだ~!!」
「ぐうっ!!」

 下から突き上げられた事により体が浮き上がり、数メートル先にふっ飛ばされるフィー。

「炸裂~!! ネム選手のボディブローにより、フィー選手がふっ飛ばされました~!!」

 ネムにふっ飛ばされたフィーの前方の空間がわずかに揺らぎ、一瞬何かが見えてすぐ消えた。

「む!? 今、フィー君の前に何か見えたような!?」

 その一瞬をアイバーンは見逃していなかった。

「え? 何かって何ですか? アイバーン様」
「メルクには見えなかったのか?」
「いえ、何も。皆さんは見えましたか?」
「いや、何も見えなかったが?」
「お、俺様はネム君の動きに感動していて見ていなかった!」

 あてにならないレノとブレンに比べて、何かを感じていたユーキ。

「何か、別の魔装具みたいな物が見えた気がしたんだけど……盾、かな?」
「そうだな、私もそう思う」
「え? それってどういう……まさかフィーさんは本当に見えない盾で防御してたって事ですか? でもフィーさんの魔装具は鎌タイプの筈では?」
「ふむ……もしかしてフィー君は、ユーキ君のように複数の魔装具を使いこなせるのかもしれない」
「まさか……ユーキさんの他にもそんな人が居るなんて……」

 そんなアイバーン達のやり取りを、どこかもどかしそうに見つめているセラ。

(うんもぉ、フィーちゃんの能力はぁ……あぁ~、凄く言いたいですけどぉ、これを言っちゃうと何故知ってるんだってみんなに追求されちゃうでしょうしぃ、そうなると猫さんやユウちゃんの正体もバレかねないしぃ……う~ん、ムズムズしますぅ)

 セラがムズムズしていると、いきなりセラの頭の中に声が響く。

『セラ! 分かってると思うけど、あたし達の正体をバラしたらスイーツ食べ放題の話は無しニャ!!』
(猫さん!? えぇ~、もしかしてずっと私を監視してたんですかぁ!?)
『そうニャ! いつも見てる訳じゃないけど、あの時にお前とリンクさせていたニャ! バ◯ージ・リンクスニャ!』
(最後のは意味分かりませんけどもぉ、信用無いですねぇ。大丈夫ですよぉ! 猫さん達がユウちゃんを泣かせるような事さえしなければぁ、誰にも喋らないって言ったでしょぉ)
『そうか……その言葉を信じていいんだニャ?』

(信じてもらって大丈夫ですよぉ! ユウちゃんの今日の下着の色とぉ、ユウちゃんが今、誰が1番好きなのかを教えてくれたら喋りませんよぉ)

『いや、何か条件増えてるニャ!?』




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