ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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終章 いつも楽しく面白く

第4話 姿なき狙撃手

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 遂に1階に到達したユーキ。
 しかし、出口の扉の前にはセラが待ち構えていた。

「んふふ~、魔装具も使わずに、よくここまで辿り着けましたねぇ」
「セラ……セラお姉ちゃんも、僕の邪魔をするの?」
「さあ、どうでしょうねぇ。ユウちゃん次第ってとこでしょうかぁ?」

 見つめ合ったまま、しばしの間が空く2人。

「たい焼き10個!!」
「ん~、それではねぇ」

「プラス、ロールケーキ5本!!」
「もうひと声ぇ」

「む~! 更に、ホールケーキ3個おっ!!」
「いいでしょぉ。商談成立ですねぇ」
「やった!!」
「じゃあ私は橋を下ろして来ますねぇ」
「うん、ありがと! セラお姉ちゃん!」

 城外との唯一の通路である跳ね橋を下ろしに行くセラ。
 セラ脱落により、残るBL隊はいよいよあと1人となる。

 跳ね橋の前に立ち、橋が下りるのを待ちながら今までの道のりを思い返すユーキ。

「長かった……尊い犠牲もあったけど、僕は遂にここまで来たんだ! ネム! ロロ! 僕はやったよ!?」

 空にネムとロロの顔が浮かび上がっていた。
 そして跳ね橋が完全に下りる。

「やった! 遂に脱出……!?」

 セラにより下ろされた橋の向こう岸には、ラスボスのようにパティが立っていた。

「パティ……」
「戻りなさい!! ユーキ!!」
「何でっ!? 何でパティまで僕の邪魔をするのっ!?」
「ユーキに立派な王様になってもらう為に、仕方ないのよ」

「だから何で僕なのさ!? この国を良くしたいっていう想いがあるなら、パティが王様になればいいでしょ!?」
「あたしはそんな器じゃないわ。だけどユーキ! あなたなら! 必ずこの国を救ってくれるって確信してるわ!」

「そんなの……買いかぶり過ぎだよ……」
「あなたが何と言おうと! 例え力尽くでも! あたしはあなたを王にする! その為にも、今ここであなたを行かせる訳にはいかないのよ!」
「何でよ!? 僕達、本当の姉妹なんでしょ!? 何で実の姉妹同士で争わなきゃいけないの? ねえっ!! パティお姉ちゃん!!」

 最高にあざとい表情と仕草でパティを口撃するユーキ。

「うぐっ!!」

 パティに大ダメージ。

「お姉ちゃん……良い響きだわ。だけどね、ユーキ……あたしはあなたの子供が欲しいのよ! だからどうしても通りたければ、髪の毛よこしなさい!!」
「何だよっ!? 国の為とか何とか言って、結局それが目的かっ!?」

「そうよ! 既成事実さえ作れば、法律もクソも関係無いのよ!!」
「いやそれ、無茶苦茶な理論だから!!」
「くれないなら、力尽くで奪い取る!」

 魔装具を具現化させるパティ。

「くっ! いいよ。そっちがその気なら、僕にも考えがある!」

 そう言って、自分の髪の毛を一本引き抜くユーキ。

「痛っ」
「な、何を!?」

 跳ね橋の端に立ち、抜いた髪の毛を指に挟み腕を伸ばすユーキ。

「僕を行かせてくれないのなら、この髪の毛を掘りに捨てるよ!?」
「なっ!? ユーキ、あなた! 自分が何をやっているか分かっているの!?」
「勿論分かってるよ。僕がそれだけ本気って事、お姉ちゃんにも分かってほしいから」

「な、何よ! 髪の毛1本ぐらい、その辺探せば見つかるわよ!」
「それで、見つかった?」
「うぐっ!」

「見つかってないよね? そりゃそうだよ。だって僕の中には女神イースが居るんだ。神の魂と融合した僕の肉体は朽ちる事が無い。つまりは、髪の毛1本さえも自然に抜け落ちる事が無いんだから」
「そ、それであんなに必死に探しても見つからなかったのね……」

「さあ! どうするの!? お姉ちゃん!!」
「ま、待って! ユーキ!! 確かにあなたの髪の毛は欲しいけど、あなたを立派な王様にしたいっていうのも本当なのよ! だからここを通す訳にはっ!」
「そう、残念だよ……」

 指に挟んだ髪の毛を離すと、ひらひらと掘りに落ちて行く。

「ダメええええええっ!!」

 落ちて行く髪の毛を掴もうと、掘りに飛び込むパティ。
 
「あっ! 因みに今捨てたのは、服から出た糸屑だから!」
「何ですってええ!? ユーキいいいいいっ!!」

 悲しそうな表情で水に落下するパティ。

「ゴメンね、お姉ちゃん」

 パティ脱落。
 遂にBL隊全員を突破したユーキ。

「セラ、まだかな?」

 跳ね橋の上で、セラが来るのを待っているユーキ。
 すると、完全に下りていた跳ね橋が、再び上がり始める。

「えっ!? 何で!? もしかして、衛兵達に気付かれた!?」

 ユーキが戸惑っていると、跳ね橋の操作室にある窓からセラが顔を出し叫ぶ。

「ユウちゃん!! 早く渡ってくださいぃ~!!」
「セラ!? くっ! やっぱり気付かれたんだ!?」

 状況を理解したユーキが、慌てて橋を渡ろうとする。
 しかし時すでに遅く、跳ね橋はとても駆け上がる事が出来ない程の角度まで上がっていた。

「うぐっ! うにゃああああああああ~!!」

 3分の2程は進んでいたが、遂に足を滑らせて一気に下まで滑り落ちるユーキ。

「むぎゅう! 何か前にもこんな事あったような……がくっ!」

 ユーキがうつ伏せで倒れていると、城の衛兵達が集まって来る。

「ユーキ様! どこへ行くおつもりですか!?」
「指示があるまで、姫様を城の外に出すなとアイバーン団長よりきつく言われております! さあ、お部屋にお戻りください!」

 ゆっくりと体を起こすユーキ。

「い、や、だあああ! 僕は……僕は……こんな僕のわがままに付き合ってくれた、ネムや、ロロや、セラの為にも! 絶対に脱出するんだあああ!!」

 叫びながら胸のペンダントに手を添えるユーキ。

「今、僕に残された最後の手! 使うのは今しかなあああああいっ!!」

 魔装具を具現化させて、飛行魔法で掘りを飛び越えようとするユーキ。

「ああっ!! いけません! 姫様!!」
「城の外は危険です!! お戻りを!!」

「ヤダよ!! べ~だっ!!」

 衛兵達の制止を振り切り飛び立ったユーキが、掘りの中間あたりに差し掛かった時、突如風の刃にロッドを弾かれてしまう。

「へっ!?」

 その刃を放ったのは、猫師匠であった。

「あたしは別にBL隊のメンバーじゃないけどニャ。こんな面白そうな事、このあたしが参加しない訳無いニャ!」
「猫、師匠!? くっ、くそっ! 上手く、飛べない!」

 魔装具を手放してしまった為に、飛行魔法が安定せずふらふらと飛んでいるユーキ。

「まだ落ちないのかニャ? 中々しぶといニャ。じゃあ、トドメを刺してやるニャ!」

 そう言って放った複数の風の刃のひとつが、ユーキにクリーンヒットする。

「うにゃっ!! にゃああああ~!!」

 体勢を立て直す事が出来ず、堀へと落下して行くユーキ。

「やったニャ! 撃墜成功ニャ!」
「テトおおおお!! 覚えてなさああい!!」
「ニャハッ! あたしは都合の悪い事は忘れるたちニャ」


 こうして、ユーキの脱走劇は幕を閉じた。
 先に落ちたパティにより助け出されたユーキは、執務室に強制送還となった。

 約束していたネムとロロへのおみやげは、セラが代理で買いに行ったらしい。
 勿論、ユーキと契約した自分の報酬を買いに行くついでにである。



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