ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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終章 いつも楽しく面白く

第30話 悪・即・ハンマー

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 トゥマールのアイバーン、メルク、ブレン。
 グレールの猫師匠とフィー。
 セラの魔法によりなついたノインとリマをひきつれて、ヴェルンのセラとレノ。
 それぞれがユーキ達と合流すべく、リーゼルに集結しつつあった。

 そしてそのリーゼルには新たなナンバーズ、パルとチルの双子姉妹が大衆食堂で食事をしながら今後の事を話し合っていた。

「ふう、それにしても酷い目に合ったのよ」
「あったの~」

「あの後すぐ海に落ちて海流に流されて……」
「洗濯物の気分を味わったの~」

「水生魔獣に襲われて、何とか逃げ切ったものの2人とも力尽きて海の藻屑になりかけて……」
「もずくだったら食べられるの~」

「たまたま通りかかった漁船の網にかかって……」
「瞬間冷凍されかけたの~」

「助けてくれたお礼に漁船の護衛の仕事をする事になって……」
「おかげでご飯にありつけたの~」

「そのお金もチルがバカみたいに注文して、いきなり無くなろうとしてるのよ!」
「お姉さん、イクラ丼追加なの~!」
「言ってるそばから追加注文するんじゃないのよ!!」

「腹が減ってはイクラは食えぬって言うの~」
「意味分かんないのよ! 腹が減ってるんだから食べられるのよ!」
 
 注文した大量の料理を全て平らげたパルとチル。
 と言うより主にチルが。
 余りの食べっぷりに感心する店主。

「いやあ~、すげ~な嬢ちゃん達! まさか全部食べちまうなんてな~! そんな小さい体で大したもんだ!」
「チルの胃袋はコスモなの~」
「小宇宙と書いてコスモと読むんじゃないのよ!」

「そいつぁすげぇな!? ならどうだ!? ウチ自慢の大食いチャレンジに挑戦してみね~か!?」

「大食いチャレンジなの~?」
「ああ。巨大どんぶりに入った特製ラーメン10人前を1時間以内に食べ切れたら賞金5万ジェル進呈するぜ!?」

「お金もらえるの~?」
「1時間以内に食べきれたらな。だが当然失敗したらラーメン代として1万ジェル頂くがね!」
「チル、やってみたいの~」
「ち、ちょおっと待つのよおおお!!」

 とんでも無い事を言い出したチルを抱き抱え、店の隅で店主に聞こえないように小声で話すパル。

「な、何を言い出すのよチル。今散々料理を食べたとこなのよ。とても食べられる訳ないのよ」
「ん~、でも成功したらお金もらえるの~。そしたら今夜は野宿せずに済むの~」

「そ、それはそうだけど、失敗したらどうするのよ? 今食べた分のお金払ったらもう殆ど残らないのよ? とても1万ジェルなんて払えないのよ」
「大丈夫なの~。チルにお任せなの~」

 自信有り気なチルの表情を見て、覚悟を決めるパル。

「絶対食べきれるのね?」
「食べきるの~」

「信じるのよ?」
「信じるの~」

「わかったわ。じゃあ挑戦するのよ!」
「頑張るの~!」

 そして1時間後、巨大どんぶりのラーメンは8割以上残ったまま時間切れを迎えた。

「いや失敗するんかいっ!!」
「辛いのは苦手なの~」

「時間切れだ! 特に激辛って訳でもねぇが、お子様には辛すぎたか? 残念だったな~。だがルールはルールだ。最初に食べた料理の代金と合わせて3万4千5百ジェル、キッチリ払ってもらおうか!?」

「ど~するのよチルうう!! 自信満々に言うから運命を託したのよ! もう惜しいとかそういうレベルじゃないのよ! 開始早々失敗が確定してたのよ!」
「辛さには勝てないの~」

「普通のラーメンなら成功してたかもしれねぇがな! もう少し大人になって、辛さに慣れた頃また挑戦しに来なよ! さあ、代金は3万4千5百ジェルだ!」

「……無いのよ……」
「ああん!? 何だって!?」
「お金が無いのよ……」

 パルの言葉に、今まで陽気だった店主の顔が曇る。

「ええとお、聞き間違いか~!? 今、金が無ぇって聞こえた気がしたが!?」
「そう言ったのよ」
「何だとおお!! つまり、無銭飲食って事でいいんだなああ!!」

「あ、えと……ち、違うのよ! 注文した分の料金は払えるのよ! ただ、大食いチャレンジした分のお金が……足りない、のよ……」
「ほお!? 金が足りないのが分かっていながら無謀にも挑戦したって事か? それは無銭飲食と同じだよなぁ!?」
「そ、それは……そう、とも言うのよ……」

 パルが店主に詰め寄られて半泣きになっている頃、ちょうど店の前を通りかかるユーキ、パティ、ネム、ロロ、ラケルの5人。

「ユーキ姉様! 美味しいパフェのお店まであとどれぐらい?」
「もうすぐだよ」
「楽しみなのです」

「甘いものばっかり食べてると太るわよ? ロロ」
「ロロは召喚獣だから体型が変わる事は無いのです」

「あたしが太ったバージョンのロロを描いたげるから、ネムに出してもらってそっちに移りなさいよ!」
「憑依霊みたいに言わないでほしいのです! そんな簡単に引っ越しは出来ないのです!」

「ハハ! ホントユーキちゃん達はみんな仲良しだな~」

 ユーキ達のやり取りを楽しそうに眺めながら歩いていたラケルが、パル達の居る店をふと覗いた瞬間、ハッとなり目を見開く。

「ねえ! ラケルは甘いもの好き? ……ラケル?」

 反応の無いラケルにふとユーキが後ろを振り返ると、その時既にラケルの鉄槌により店のガラスが粉々に砕かれていた。

「何やってんのおお!!」
「え!? ラケル!?」
「ご乱心なのです!」

 そのままズカズカと店の中に入って行くラケル。
 いきなりの事に驚く店主とパル。

「なななっ!? 何なんだあんたはっ!?」
「その娘を泣かせたのはあんたかっ!?」

 怒りの表情で店主に詰め寄るラケル。

「ええっ!? いや、泣かせたって……この子達が無銭飲食しようとするから……」
「そうか……覚悟しろおおおっ!!」
「ええええええっ!!」
「やめええええええっ!!」

 店主にハンマーを振り下ろそうとするラケルを慌てて止めるユーキ。

「何やってんだよラケル!?」
「止めないでよユーキちゃん!! ボクはこういう悪人は絶対に許せないんだ!!」

「その人が何したんだよ!?」
「その娘達を泣かせた!! どんな理由があろうと、こんな小さい娘を泣かせる奴は悪だああっ!!」
「いや、店をこんなに滅茶苦茶にするのも悪だからああ!!」





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