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第2章1節 魔法学園対抗戦/武術戦
第210話 因縁・後編
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<試合経過二時間 残り一時間>
「……っ! 銅鑼の音……!!」
「あと一時間! ラストスパートだな!」
生徒会の面々が演劇部の二人の勇姿に感心する間もなく、試合は進む。
「お待たせいたしましたわー!」
「アザーリア! お帰り! 観てたよ!」
「うふふ、感謝申し上げますわ♪」
スカートの裾をつまんで会釈するアザーリア。
そこにぴょんぴょん跳ねてやってくるとんがり帽子――リリアンのナイトメア、アッシュだ。
「ふん、君らがどんな活躍をしようとも、僕とリリアンには敵いっこないんだからね? わかってるかい?」
「何だアッシュ、随分とやる気じゃないか?」
「あ、それなんですけど「私も出るから!!!」
扉をばんと開いて、鼻から荒々しく息を出すリリアン。手には使い込まれた様子の杖が握られている。
「アザーリアがあんだけやるなら私もやるわ!!! 二十分になったら補給部隊を率いて行くから!!!」
「魔女っ子リリアン、ここにて爆誕さ!」
アッシュが彼女の頭にひょいと乗っかると、リリアンはそのまま小屋に戻って行った。またしても壊れそうな勢いで扉が閉まる。
「……俺はいいと思うぜ? あいつ散々アストレアのこと意識していたから、一戦やらせてやっても」
「わたくしも賛成ですわ! 残り一時間、散り行く間際まで気高くありましょう!」
「……まあ、却下した所で行くだろうよあいつは。ならやらせてやろうぜ?」
<試合経過二時間十分 残り五十分>
「おおー! やってるやってる! はははっいいぞぉー!!」
「……ぐわああああー……!」
木の板に乗り、風を起こしながら爆走してくるのは医術師エルク。
端にはシルクが何とかしがみつき、地面に豪快に轍を付けていっている。
「あああああっ! そっちはだめだ! ラディウスがいる!」
「マジで!? こっちか! サンキューデブ!」
「うおおおおあああああ!」
左に旋回し、完全に試合領域に入場している。
当然絶賛違法行為中のその姿を捉えられないわけがなく。
「ッ!!!」
「どうしたラディウス!?」
「あのクズ! よりにもよってこっち来やがった!!」
現在彼らは北西のエレナージュ領に向かって進軍中。前衛部隊の支援に回る所なのだが、奴はそんな事情など知ったことではない。
「へーいラディウス! 頑張ってんじゃん!! 調子はどう!?」
「無視しろ! 耳を傾けるな!」
「ええ~そぉんなぁ!! 折角俺サマが応援に来てやったんだぞ!? 一言くれよぉ!!」
「う……こ、こいつ、臭いが……」
「酒入れてきてんじゃねーよハゲ!!!」
先頭を行くラディウスは、エルクに絡まれないように、急遽進路を右に切り替える。何とか彼を振り切ろうとした矢先――
「止まれ、そこの侵入者!」
「んげぇ!?」
馬に乗りながら、エルクを狙いつつラディウス達を避けるように矢を放つ騎士が一人。
木の板は急激に勢いを失い、エルクごとその身を投げ出す。
「カイルさんか……なら、ここは任せても大丈夫かな!?」
「その通りだとイズヤは思うぜ! お前らはさっさと先に行った方がいいとイズヤは指示を出すぜ!」
「ありがとうございます! 羊追いよりも面倒臭いクズ追いですがご武運を!」
進行方向を戻し前進するラディウスを追おうとするエルク。
そこに立ち塞がるカイル。馬を向けて溜息をつく。
「全く……できれば穏便に済ませたいのですが」
「ちょちょっ待って!? 殺る気じゃねーか!? 弓こっちに向けんじぇねぇぇぇぇぇぇ!!!」
<試合経過二時間二十分 残り四十分>
「ふんっ!」
「ぐおっ……!」
前衛部隊の一つに所属していたフォルスは、籠手を装着して果敢に立ち向かっていた所だった。
「……三十五人目」
「え!? お前そんなに戦果上げたん!?」
「……」
「そんなにやったらリリアンも大喜びだな!」
「……」
微かに頬を赤らめた所にラディウス率いる遊撃部隊が参上。
「ハローミナサマ。チョーシはドゥーダイ?」
「ラディウス。どうしてここに?」
「遊撃部隊は適当に戦場を回ってサポートすんのが仕事だよん。魔法妨害系の生徒を取り揃えているからね――」
正面を見据えたまま、後ろに向かって剣を振る。
「おわあああああっ!?」
先程までいなかったはずの、数人のエレナージュの生徒達が、よろめきながら姿を現す。
「こいつら凄いよねえ。許可されてる魔法のギリギリを攻め込んで色々してくるんだもん」
「まあ学園の方針が魔術師養成だからな。武術の不得意を魔術でカバー……」
咄嗟にラディウスと周囲にいた数人の生徒はフォルスの異変に気付く。
「う……あ……」
「っ……お前、何でこんな時に……!」
「あ……もっと、戦果……」
不自然な量の汗を掻き、瞳孔がどんどん小さくなっていく。
エレナージュの生徒達が逃げ帰っていく方向に伸ばした腕が、震えて安定しない。
「……半年ぐらい前から治療中なんだっけ? 僕に任せてよ。クズの兄貴のおかげで対処には慣れてる」
「……頼む!」
「皆は周囲を制圧しておいて。フラッグライトと……ああ、残り時間そんなにないのか。ならトーチライトばら撒いて真っ赤に染め上げてしまおう」
「了解!」
他の生徒はラディウスの指示により周囲に広がっていく。そしてラディウス本人は近くの水辺にフォルスを落ち着かせて座らせる。
「残り時間はあと僅か……トーチライトで少しでも領土を稼ぐことが求められる」
「ぁぁぁ……!」
「よし、落ち着いて。処置を始めるよ。多分薬は置いてきただろうから、簡易的な魔術で抑えるよ。僕の目を見て……」
その時、ラディウスの伝声器が振動する。
「ん……何だこんな時に!?」
「……あ……?」
「……え? 本気!? まあ……いいけどね!? 頑張れよ!?」
乱暴に伝声器の電源を落とした後、フォルスに向き直って微笑む。
「もうちっと辛抱しろよ……あと少しでリリアンが表舞台に出る!」
「……!」
「おっ、元気出たな!? じゃあ頑張ってよ!?」
<試合経過二時間三十分 残り三十分>
「さあ残り時間も三十分を切ろうとしているぞ! ここからはフラッグライトの制圧度合もだが、トーチライトによる細かい部分の制圧も意識していく頃合いだ! それでは各領土の内訳はどうなってるかなマッキー!?」
「はいよぅ。全体を百とすると、イズエルト二十七、エレナージュ三十八、グレイスウィル三十五だねえ。イズエルトがやや劣勢、しかしまだ動きが読めな……っ!?」
「おおーっとグレイスウィルの方で動きがあったぞ!? 本部から勢い良く部隊が出て行ったぞ!?」
「補給部隊だねぇ……その割には、かなり荷物を減らして速度重視にしているようだけどぉ……!?」
「――ァァァァァァァアストレアーーーーッ!!!!」
爆風と共に飛び込んできた生徒を前に、エレナージュの生徒達は足を止めてしまう。
「ゲホッ……! な、なんだ……!?」
「……ふん!」
アストレアは剣を振るって砂煙を晴らす。
「ふっふっふ……来ちゃったぁ!」
その先にいたのは好敵手。
とんがり帽子を被り、欅の杖を右手に握り、黄色のサイドテールも靡かせ、
鞄を投げ捨て杖を向けてくる。
「……ヴァン。構えろ。ここで決めてやるぞ……!」
「――」
彼女が腰に下げていた青い鞘が、赤と青の混じった光を放つ。
「ふっふーん……ここにフラッグライトがあるねえ。勝った方が貰うのはどう?」
「構わん。では――」
「行くよっ!!」
終結の舞台はティンタジェル遺跡の正面、大正門の前であった。
<試合経過二時間四十分 残り二十分>
赤土が広がる荒野に設置されていたフラッグライトを、マッカーソンの部隊は苦難なく制圧する。
「ふん……これで何個目だ?」
「九個目です。さっきから奪っては奪われ……って感じです」
「……そうか」
「……戦況が入ってきました。エレナージュが四十、グレイスウィルが、三十八……我々のは」
「……そうかぁー……」
マッカーソンはフラッグライトにもたれかかり、水色の光を身体いっぱいに浴びる。
「……試合の前に言ってたじゃないですか。今回の対抗戦で成果を挙げて、御父上に認めてもらうと」
「いや……もう正直どうでもいいんだ。これを貰った時点で、満足してる」
そう言って首元の傷を撫でる。
「何だか凄い奴でしたよね。初見のマッカーソン様とあそこまでずかずか行けるって、度胸座ってますよね!」
「……全く、そうだな」
遠くから何かの爆発音が聞こえた。
「……遺跡の方? 何か破壊してるの?」
「いえ……戦況報告。どうやら遺跡の前でエレナージュとグレイスウィルの生徒が戦闘しているようで。他の生徒も……そちらの観戦に向かっているようですよ?」
「……」
ちらりと仲間の生徒を一瞥すると、そわそわしている者が何人か見受けられる。
「……じゃあ、僕についてこいよ」
「おおー! やってるやってる!」
荒野に森に湖を乗り越え、ダレンの部隊はティンタジェル遺跡までやってきた。
「どぅわぁっ! と、飛ばされるぅ!?」
「ほーれ」
「おおっ! ロシェサンキュー!」
投げ飛ばしてきた縄を掴み、ダレンはその場に踏ん張る。
「何か想像以上にすげー戦いになっちまったぞ。武術戦なのに何で魔術師が出しゃばってくるんだか」
「でもリリアンは補給部隊で出てるから、魔法の制限はないんだろ? ルールに則してはいるな!」
「そうなんだけど、最後に持ってかれた感じー!?」
ロシェが憤慨している所に、空から豪雨が降る。
「……何?」
「おおおっ……ロシェ上を見ろ!」
ダレンが指差す方向には、
箒に乗って空を飛び、雨を率いている少女が――
『レイニーレイニー、ウォッシュ、アウェイ!』
『意地悪あの子にちょっぴりお仕置き!』
地上から五メートル程の高さで、ティンタジェル遺跡の周囲を周りながら、
雨の他に雹や霰も振らせていく。
『レイニーレイニー、フォール、アップ!』
『終わった後にはすっきりお日様!』
だがその途中でも一切の容赦をすることなく、
視認可能な程に魔力が宿った刃が飛んでくる。
「ははっ、空から遠距離攻撃か。私の力に恐れをなしているのか?」
「もう、衝撃波で攻撃してる癖にそれ言う!? アッシュ!」
「了解! 僕らの魔法にひれ伏せ!」
リリアンの頭上のアッシュが輝き、放出される魔法が強まる。
雨霰に紛れて、個包装に包まれた飴が降ってきた。
「……あ、レモン飴。さては補給用に用意していたな」
「頂こうぜ折角だからー! うめー!」
「……何かもう、ここまで来るとエキシビションマッチみたいな空気になってんな!」
ロシェは飴を口に放り込んだ後、思い出したように伝声器に手をかける。
「え~戦況報告……エレナージュとグレイスウィルが三十九で同値だとよ」
「マジか!? 俺ら行った方がいいか!?」
「いやあ……その心配には及ばないぜ?」
ロシェはちらちら周囲に目を遣る。
「もう皆こっちに来ちまってる。そりゃああんな爆音でタイマンやられちゃあな」
「……」
「……おいダレン?」
「うずうず……」
「まさか、まさかとは思うが、あの渦中に――「うおおおおおおおおお!!!」
当然すぐに引き留めに入る。
「いいかお前、真剣勝負だぞ!? 邪魔すんじゃねーよ!?」
「う……! そう言えば、そうだった……!」
「参戦する気満々だったのかよ!!」
<試合経過二時間五十分 残り十分>
『カミサマにスター☆シュートッ! 暗鈍な黒闇引き裂いて――』
いつしか彼女は地上に降り立ち、
指揮棒のように杖を振り回していた。
『見上げたならスター☆ライトッ! 払暁に東雲引き連れて――』
火球と光球に囲まれ、彼女の意思に従う。
『それが落ちれば、新しい朝が開くの――!』
だが目の前の幼馴染は、
そんな上機嫌の猛攻を意にも介さず、剣をこちらに向けてくる。
「――はあっ!」
魔弾の全てを剣で切り伏せる。
踊るように、翻弄するように、
一つ一つ、確実に潰してやっては、
彼女と間合いを詰める。
「もらったぁ!」
「ととっ……!」
身体を反らして回避。バランスが崩れると魔力も乱れる。
魔弾はリリアンの意図しない方向に飛んでいったが――
「――ふん」
アストレアはわざわざ飛び上がり、飛んでいく魔球を消し去る。
火球は赤の火花を、光球はクリーム色の火花を散らす。
それは悠久の時を湛える遺跡の上空で、
寂れた街に一時の彩りを与えるように散っていく。
「……遺跡に手を出すなと言われているだろう。手間をかけさせるな」
「はいはい、それはどーも。んじゃあ――」
リリアンが掲げた杖の先に魔力が集まる。
『私の声が彼方まで響いたら――』
アストレアはヴァンに手をかけ、ありったけの魔力を剣と肉体に込める。
その後に、彼女の数倍の大きさにも成り果てた魔弾を見据えて――
『さあ始めましょうで、全てがお終い――!!』
――たああああああああああっ!!!
「ぐっ……ぐううううう!! こ、これは……! なんて勢いなんだ!! 今我々は空飛ぶ実況席に乗って実況しているわけだが、ある程度距離を取っているにも関わらず衝撃が凄まじかったぞ!」
「さて……この砂煙が晴れたら結果がわかるわけだけどぉ……」
待ち望む彼らに応えるように、風が吹き抜ける。
「おおっと……!」
「これはぁ……!」
煙が晴れた先で、立っていたのは――
「……」
「……」
「……五十勝目、頂きっ!」
フラッグライトが赤く灯された瞬間、
勝鬨の角笛が鳴り響く。
「――タァァァイムアアアアアップッッッッッ!!!! ここで試合終了だぁぁぁぁぁッッッ!!!」
「――イズエルト二十一、エレナージュ三十九、グレイスウィルは――四十の領土を占領! よって、武術戦第三回戦の勝者は――」
「真紅の薔薇は曉勇の象徴!!! グレイスウィル魔法学園の勝利だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「……っ! 銅鑼の音……!!」
「あと一時間! ラストスパートだな!」
生徒会の面々が演劇部の二人の勇姿に感心する間もなく、試合は進む。
「お待たせいたしましたわー!」
「アザーリア! お帰り! 観てたよ!」
「うふふ、感謝申し上げますわ♪」
スカートの裾をつまんで会釈するアザーリア。
そこにぴょんぴょん跳ねてやってくるとんがり帽子――リリアンのナイトメア、アッシュだ。
「ふん、君らがどんな活躍をしようとも、僕とリリアンには敵いっこないんだからね? わかってるかい?」
「何だアッシュ、随分とやる気じゃないか?」
「あ、それなんですけど「私も出るから!!!」
扉をばんと開いて、鼻から荒々しく息を出すリリアン。手には使い込まれた様子の杖が握られている。
「アザーリアがあんだけやるなら私もやるわ!!! 二十分になったら補給部隊を率いて行くから!!!」
「魔女っ子リリアン、ここにて爆誕さ!」
アッシュが彼女の頭にひょいと乗っかると、リリアンはそのまま小屋に戻って行った。またしても壊れそうな勢いで扉が閉まる。
「……俺はいいと思うぜ? あいつ散々アストレアのこと意識していたから、一戦やらせてやっても」
「わたくしも賛成ですわ! 残り一時間、散り行く間際まで気高くありましょう!」
「……まあ、却下した所で行くだろうよあいつは。ならやらせてやろうぜ?」
<試合経過二時間十分 残り五十分>
「おおー! やってるやってる! はははっいいぞぉー!!」
「……ぐわああああー……!」
木の板に乗り、風を起こしながら爆走してくるのは医術師エルク。
端にはシルクが何とかしがみつき、地面に豪快に轍を付けていっている。
「あああああっ! そっちはだめだ! ラディウスがいる!」
「マジで!? こっちか! サンキューデブ!」
「うおおおおあああああ!」
左に旋回し、完全に試合領域に入場している。
当然絶賛違法行為中のその姿を捉えられないわけがなく。
「ッ!!!」
「どうしたラディウス!?」
「あのクズ! よりにもよってこっち来やがった!!」
現在彼らは北西のエレナージュ領に向かって進軍中。前衛部隊の支援に回る所なのだが、奴はそんな事情など知ったことではない。
「へーいラディウス! 頑張ってんじゃん!! 調子はどう!?」
「無視しろ! 耳を傾けるな!」
「ええ~そぉんなぁ!! 折角俺サマが応援に来てやったんだぞ!? 一言くれよぉ!!」
「う……こ、こいつ、臭いが……」
「酒入れてきてんじゃねーよハゲ!!!」
先頭を行くラディウスは、エルクに絡まれないように、急遽進路を右に切り替える。何とか彼を振り切ろうとした矢先――
「止まれ、そこの侵入者!」
「んげぇ!?」
馬に乗りながら、エルクを狙いつつラディウス達を避けるように矢を放つ騎士が一人。
木の板は急激に勢いを失い、エルクごとその身を投げ出す。
「カイルさんか……なら、ここは任せても大丈夫かな!?」
「その通りだとイズヤは思うぜ! お前らはさっさと先に行った方がいいとイズヤは指示を出すぜ!」
「ありがとうございます! 羊追いよりも面倒臭いクズ追いですがご武運を!」
進行方向を戻し前進するラディウスを追おうとするエルク。
そこに立ち塞がるカイル。馬を向けて溜息をつく。
「全く……できれば穏便に済ませたいのですが」
「ちょちょっ待って!? 殺る気じゃねーか!? 弓こっちに向けんじぇねぇぇぇぇぇぇ!!!」
<試合経過二時間二十分 残り四十分>
「ふんっ!」
「ぐおっ……!」
前衛部隊の一つに所属していたフォルスは、籠手を装着して果敢に立ち向かっていた所だった。
「……三十五人目」
「え!? お前そんなに戦果上げたん!?」
「……」
「そんなにやったらリリアンも大喜びだな!」
「……」
微かに頬を赤らめた所にラディウス率いる遊撃部隊が参上。
「ハローミナサマ。チョーシはドゥーダイ?」
「ラディウス。どうしてここに?」
「遊撃部隊は適当に戦場を回ってサポートすんのが仕事だよん。魔法妨害系の生徒を取り揃えているからね――」
正面を見据えたまま、後ろに向かって剣を振る。
「おわあああああっ!?」
先程までいなかったはずの、数人のエレナージュの生徒達が、よろめきながら姿を現す。
「こいつら凄いよねえ。許可されてる魔法のギリギリを攻め込んで色々してくるんだもん」
「まあ学園の方針が魔術師養成だからな。武術の不得意を魔術でカバー……」
咄嗟にラディウスと周囲にいた数人の生徒はフォルスの異変に気付く。
「う……あ……」
「っ……お前、何でこんな時に……!」
「あ……もっと、戦果……」
不自然な量の汗を掻き、瞳孔がどんどん小さくなっていく。
エレナージュの生徒達が逃げ帰っていく方向に伸ばした腕が、震えて安定しない。
「……半年ぐらい前から治療中なんだっけ? 僕に任せてよ。クズの兄貴のおかげで対処には慣れてる」
「……頼む!」
「皆は周囲を制圧しておいて。フラッグライトと……ああ、残り時間そんなにないのか。ならトーチライトばら撒いて真っ赤に染め上げてしまおう」
「了解!」
他の生徒はラディウスの指示により周囲に広がっていく。そしてラディウス本人は近くの水辺にフォルスを落ち着かせて座らせる。
「残り時間はあと僅か……トーチライトで少しでも領土を稼ぐことが求められる」
「ぁぁぁ……!」
「よし、落ち着いて。処置を始めるよ。多分薬は置いてきただろうから、簡易的な魔術で抑えるよ。僕の目を見て……」
その時、ラディウスの伝声器が振動する。
「ん……何だこんな時に!?」
「……あ……?」
「……え? 本気!? まあ……いいけどね!? 頑張れよ!?」
乱暴に伝声器の電源を落とした後、フォルスに向き直って微笑む。
「もうちっと辛抱しろよ……あと少しでリリアンが表舞台に出る!」
「……!」
「おっ、元気出たな!? じゃあ頑張ってよ!?」
<試合経過二時間三十分 残り三十分>
「さあ残り時間も三十分を切ろうとしているぞ! ここからはフラッグライトの制圧度合もだが、トーチライトによる細かい部分の制圧も意識していく頃合いだ! それでは各領土の内訳はどうなってるかなマッキー!?」
「はいよぅ。全体を百とすると、イズエルト二十七、エレナージュ三十八、グレイスウィル三十五だねえ。イズエルトがやや劣勢、しかしまだ動きが読めな……っ!?」
「おおーっとグレイスウィルの方で動きがあったぞ!? 本部から勢い良く部隊が出て行ったぞ!?」
「補給部隊だねぇ……その割には、かなり荷物を減らして速度重視にしているようだけどぉ……!?」
「――ァァァァァァァアストレアーーーーッ!!!!」
爆風と共に飛び込んできた生徒を前に、エレナージュの生徒達は足を止めてしまう。
「ゲホッ……! な、なんだ……!?」
「……ふん!」
アストレアは剣を振るって砂煙を晴らす。
「ふっふっふ……来ちゃったぁ!」
その先にいたのは好敵手。
とんがり帽子を被り、欅の杖を右手に握り、黄色のサイドテールも靡かせ、
鞄を投げ捨て杖を向けてくる。
「……ヴァン。構えろ。ここで決めてやるぞ……!」
「――」
彼女が腰に下げていた青い鞘が、赤と青の混じった光を放つ。
「ふっふーん……ここにフラッグライトがあるねえ。勝った方が貰うのはどう?」
「構わん。では――」
「行くよっ!!」
終結の舞台はティンタジェル遺跡の正面、大正門の前であった。
<試合経過二時間四十分 残り二十分>
赤土が広がる荒野に設置されていたフラッグライトを、マッカーソンの部隊は苦難なく制圧する。
「ふん……これで何個目だ?」
「九個目です。さっきから奪っては奪われ……って感じです」
「……そうか」
「……戦況が入ってきました。エレナージュが四十、グレイスウィルが、三十八……我々のは」
「……そうかぁー……」
マッカーソンはフラッグライトにもたれかかり、水色の光を身体いっぱいに浴びる。
「……試合の前に言ってたじゃないですか。今回の対抗戦で成果を挙げて、御父上に認めてもらうと」
「いや……もう正直どうでもいいんだ。これを貰った時点で、満足してる」
そう言って首元の傷を撫でる。
「何だか凄い奴でしたよね。初見のマッカーソン様とあそこまでずかずか行けるって、度胸座ってますよね!」
「……全く、そうだな」
遠くから何かの爆発音が聞こえた。
「……遺跡の方? 何か破壊してるの?」
「いえ……戦況報告。どうやら遺跡の前でエレナージュとグレイスウィルの生徒が戦闘しているようで。他の生徒も……そちらの観戦に向かっているようですよ?」
「……」
ちらりと仲間の生徒を一瞥すると、そわそわしている者が何人か見受けられる。
「……じゃあ、僕についてこいよ」
「おおー! やってるやってる!」
荒野に森に湖を乗り越え、ダレンの部隊はティンタジェル遺跡までやってきた。
「どぅわぁっ! と、飛ばされるぅ!?」
「ほーれ」
「おおっ! ロシェサンキュー!」
投げ飛ばしてきた縄を掴み、ダレンはその場に踏ん張る。
「何か想像以上にすげー戦いになっちまったぞ。武術戦なのに何で魔術師が出しゃばってくるんだか」
「でもリリアンは補給部隊で出てるから、魔法の制限はないんだろ? ルールに則してはいるな!」
「そうなんだけど、最後に持ってかれた感じー!?」
ロシェが憤慨している所に、空から豪雨が降る。
「……何?」
「おおおっ……ロシェ上を見ろ!」
ダレンが指差す方向には、
箒に乗って空を飛び、雨を率いている少女が――
『レイニーレイニー、ウォッシュ、アウェイ!』
『意地悪あの子にちょっぴりお仕置き!』
地上から五メートル程の高さで、ティンタジェル遺跡の周囲を周りながら、
雨の他に雹や霰も振らせていく。
『レイニーレイニー、フォール、アップ!』
『終わった後にはすっきりお日様!』
だがその途中でも一切の容赦をすることなく、
視認可能な程に魔力が宿った刃が飛んでくる。
「ははっ、空から遠距離攻撃か。私の力に恐れをなしているのか?」
「もう、衝撃波で攻撃してる癖にそれ言う!? アッシュ!」
「了解! 僕らの魔法にひれ伏せ!」
リリアンの頭上のアッシュが輝き、放出される魔法が強まる。
雨霰に紛れて、個包装に包まれた飴が降ってきた。
「……あ、レモン飴。さては補給用に用意していたな」
「頂こうぜ折角だからー! うめー!」
「……何かもう、ここまで来るとエキシビションマッチみたいな空気になってんな!」
ロシェは飴を口に放り込んだ後、思い出したように伝声器に手をかける。
「え~戦況報告……エレナージュとグレイスウィルが三十九で同値だとよ」
「マジか!? 俺ら行った方がいいか!?」
「いやあ……その心配には及ばないぜ?」
ロシェはちらちら周囲に目を遣る。
「もう皆こっちに来ちまってる。そりゃああんな爆音でタイマンやられちゃあな」
「……」
「……おいダレン?」
「うずうず……」
「まさか、まさかとは思うが、あの渦中に――「うおおおおおおおおお!!!」
当然すぐに引き留めに入る。
「いいかお前、真剣勝負だぞ!? 邪魔すんじゃねーよ!?」
「う……! そう言えば、そうだった……!」
「参戦する気満々だったのかよ!!」
<試合経過二時間五十分 残り十分>
『カミサマにスター☆シュートッ! 暗鈍な黒闇引き裂いて――』
いつしか彼女は地上に降り立ち、
指揮棒のように杖を振り回していた。
『見上げたならスター☆ライトッ! 払暁に東雲引き連れて――』
火球と光球に囲まれ、彼女の意思に従う。
『それが落ちれば、新しい朝が開くの――!』
だが目の前の幼馴染は、
そんな上機嫌の猛攻を意にも介さず、剣をこちらに向けてくる。
「――はあっ!」
魔弾の全てを剣で切り伏せる。
踊るように、翻弄するように、
一つ一つ、確実に潰してやっては、
彼女と間合いを詰める。
「もらったぁ!」
「ととっ……!」
身体を反らして回避。バランスが崩れると魔力も乱れる。
魔弾はリリアンの意図しない方向に飛んでいったが――
「――ふん」
アストレアはわざわざ飛び上がり、飛んでいく魔球を消し去る。
火球は赤の火花を、光球はクリーム色の火花を散らす。
それは悠久の時を湛える遺跡の上空で、
寂れた街に一時の彩りを与えるように散っていく。
「……遺跡に手を出すなと言われているだろう。手間をかけさせるな」
「はいはい、それはどーも。んじゃあ――」
リリアンが掲げた杖の先に魔力が集まる。
『私の声が彼方まで響いたら――』
アストレアはヴァンに手をかけ、ありったけの魔力を剣と肉体に込める。
その後に、彼女の数倍の大きさにも成り果てた魔弾を見据えて――
『さあ始めましょうで、全てがお終い――!!』
――たああああああああああっ!!!
「ぐっ……ぐううううう!! こ、これは……! なんて勢いなんだ!! 今我々は空飛ぶ実況席に乗って実況しているわけだが、ある程度距離を取っているにも関わらず衝撃が凄まじかったぞ!」
「さて……この砂煙が晴れたら結果がわかるわけだけどぉ……」
待ち望む彼らに応えるように、風が吹き抜ける。
「おおっと……!」
「これはぁ……!」
煙が晴れた先で、立っていたのは――
「……」
「……」
「……五十勝目、頂きっ!」
フラッグライトが赤く灯された瞬間、
勝鬨の角笛が鳴り響く。
「――タァァァイムアアアアアップッッッッッ!!!! ここで試合終了だぁぁぁぁぁッッッ!!!」
「――イズエルト二十一、エレナージュ三十九、グレイスウィルは――四十の領土を占領! よって、武術戦第三回戦の勝者は――」
「真紅の薔薇は曉勇の象徴!!! グレイスウィル魔法学園の勝利だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
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こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
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顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
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真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
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戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
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今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
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