ゆらり、揺れる

秋臣

文字の大きさ
19 / 38

無頓着

しおりを挟む
週明け、今日からジムに通う。ちょっとドキドキしている。
出勤すると、
「係長、頑張りましょうね!」
と丹羽に小声で鼓舞される。
頑張るよ。

退社後、丹羽とジムに出向く。
「秋本さん、お待ちしてました」
沢渡さんが他の人のサポートをしながら声をかけてくれる。
「こんばんは、お世話になります」

「ずっと気になってたんですけど」
丹羽が訝しんでる。
「なんだ?」
「その紙袋なんですか? 今日が初日だから沢渡さんへの進物ですか?」
「え?」
進物?
「紙袋……ああ、トレーニングウエアが入ってるんだ」
「え?」
「持ってくる時に入れるものがなくて、家にこの袋しかなかった」
「ぶっ……w」
「変か?」
昨年のバレンタインデーの時に同じ部署の女性陣からチョコレートをもらった時の紙袋だ。
真っ赤なハートがたくさん散りばめられている。

「おかしくはないですけど……買った時のスポーツ用品店の紙袋があるじゃないですか」
「資源ゴミを捨てる時に大きさがちょうど良くて使っちゃったんだ」
「だからそれですか?」
「うん」
「そういうところ本当に無頓着ですよね」
「これしかなかったから」
「いえ、俺が悪かったです。バッグも買うべきでした。俺、リュックで通勤してるから気づけませんでした。すみません」

沢渡さんもくくくと笑っている。
「バッグはあった方がいいですね」
「丹羽、また頼んでもいいか?」
「係ちょ……秋本さん、買いに行きましょう。その紙袋はさすがに笑います」
「そうか、ダメか」
「アウトです」
とうとう丹羽と沢渡さんが二人で声を上げて笑い出した。

「それじゃ早速始めましょうか」
まだちょっと笑いながら沢渡さんが指導に入る。
「はい、お願いします」
「秋本さん、頑張ってくださいね!」
丹羽も応援してくれる。
「うん、頑張るよ」

「メニューを考えてみました。
運動はしていないとのことでしたので、継続を第一の目標にしました」
「はい」
「ストレッチから始めて、3つのマシンを休まずこなす。これを一巡として、5セットできるようにしましょう。
最初は難しいと思いますがスピードは必要ないので、マシンを使って体を正しく動かす、やり切るということだけに集中します」
「はい」
「早くやろうとか考えなくていいです。秋本さんのペースでやります」
「わかりました」


ストレッチを始める。
自分の体がこんなにも動かなくなってることに驚く。
前はもっと柔らかかった気がする。
「体が硬くなった気がします」
「動かさないと強張ってしまうんです。
風呂上がりなどにストレッチだけでもすると体がほぐれてきて怪我もしにくくなりますよ」
「やってみようかな」
「いいと思います」

ストレッチが終わるとマシンに座り、腕の力でバーを動かすというトレーニングをする。
使い方を指南され、動かしてみる。
腕を肩の高さまで上げた時に少し違和感があった。

「ん?」
沢渡さんが目敏く気づく。
「肩に違和感ありますか?」
「ちょっと痛い気がしました」
肩の辺りを触る。
「秋本さん、脱臼したことありますか?」
そう言われて思い出した。
「あります。高校時代、体育の授業で柔道の受け身をした時に脱臼したことがあります」
「やっぱり……亜脱臼ですか?」
聞き覚えのある言葉だ、当時診てもらった医者に亜脱臼と言われた気がする。
「多分それです」
「亜脱臼は一度だけですか?」
「そうですね、たまにちょっと肩が痛いかなと思った時があっても動かすと治ってました」
「ふむ」
沢渡さんが少し考え込む。

「秋本さん」
「はい」
「痛みは強いですか?」
「いえ、違和感程度です」
「脱臼も亜脱臼も癖になりやすいです。
動かすと治っていたのは、亜脱臼なので少し骨がズレたのを無意識に自分で元の位置に直していたからです」
そうなのか。

「このマシンは腕と肩を鍛えるものです。
少しウエイトを軽くしましょう。
亜脱臼にならないよう肩に筋肉をつけるのはとてもいい予防法になります」
「一石二鳥ですね」
「そうです。痛みがなくても違和感は良くはないので、動かして変だなと思ったら言ってください」
「はい」

ウエイトを軽くしてくれたら違和感はなくなった。肩への負担がなくなった感じだ。でも負荷がないとトレーニングにならないような気もする。
「これで大丈夫ですか? 効果ありますか?」
「大丈夫ですよ、ゆっくりと徐々に負荷をかけていきます。痛みがないことが最優先です」
「わかりました」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

水泳部物語

佐城竜信
BL
タイトルに偽りありであまり水泳部要素の出てこないBLです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...