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真っ黒な肌と茶色いスープ

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いつメン四人でのラーメン屋。久々。半年ぶりぐらいに再開したみんなは黒くなっていて、僕の白い肌が目立って少し嫌になった。ブレーキのたびに嫌な音がなる自転車で40分ぐらいかけて「かいじ」に向かう。蝉の鳴く声とエンジン音が、懐かしい声を邪魔して、もどかしいような恨めしいような不思議な気分になる。平日の昼はドアの外で待たなきゃいけないぐらい混んでいて、汗がずっと流れていた。干からびるぐらいに。暑い。ドアが二つ付いていて、一つ目を開けると食券が買える待合室みたいになっている。サウナかよとみんなで言い合う。いつもの「豚そば」を購入。1000円札を入れると、お釣りの200円が出て、その200円をいつメンが使う。おいそれ俺の。もう一つのドアが開いて「4名様ご来店です」と店員が明るく接客する。店員の厨房にかける声と満席の店内の話し声と冷房の効いた冷たい風と鼻の奥に残る豚骨の匂いがわっと響いた。カウンター前に4つ食券を置く。ニンニクの量、麺の量、背脂の量を全部大盛りにした。窓辺の席は調味料やメニュー表が反射して、白い肌をより白く見せた。やだなと思いながら鼻をかむ。鼻炎組が三人いるから、箱ティッシュをテーブルの真ん中に置く。二人も続いて鼻をかんだ。ワンピースの話をしていたら、ラーメンがきた。口が広がっている器の白い部分が隠れるぐらいの並々のスープは茶色く透明な膜が浮かんでいた。麺に覆い被さるキャベツ、もやし、そしてネギ。添えられた煮卵二つの隣に親指大のすりおろしニンニク、海苔が二枚、苦手なメンマ。そして豚。大人の女性の手のひら大の肉が二枚。まん丸の真ん中は濃い茶色で外側にいくに連れて色が白くなる。湯気で顔が熱くなる。ニンニクと豚の匂いがする。一度リセットしようと鼻をかむ。
店内はうるさいはずなのに、割り箸を割る音と、いただきますの声が4つちゃんと聞こえた。まずはもやし。口に入れるとシャキシャキと音がなるくらいにみずみずしく、噛めばかむほど濃厚な豚骨スープの味がした。もやしとキャベツを咀嚼。口の中はずっとリオのカーニバルみたいに騒がしかった。やっとのことで麺にたどり着く。未だ残るもやしと一緒に麺を掻き込む。無作法に音を立てて、口に入りきらない部分を噛み落とす。さっきとは違いもちもちとした食感、比べ物にならないくらいの豚骨の香りが脳天を直撃する。鼻からはニンニクの匂いが抜ける。
ハフハフと口のニンニクを外に逃がしながら、二口、三口と麺を食べる。麺を半分ほど平らげた後、一口では食べきれないチャーシューを持つ。ダンベルみたいに重いからこれライザップで使えるんじゃないかって思う。歯を入れる。最初は柔らかく、歯に当たった瞬間に脂身が引き裂ける。そして、肉だ。筋肉を噛みしめるように弾力のある肉を噛む。噛めば噛むほど出る肉汁が口から溢れる。急いでティッシュで口を拭う。ついでに鼻もかむ。ティッシュの山が出来る。四回に分けて食べ終えたチャーシューはもう一枚ある。あぁ、至福。一種類を分けて、毎回違う味を堪能する。最後にごちそうさまでしたと店員と料理に向かって言う。
四人で鼻をかんだ後のティッシュボックスは空になっていた。
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