37 / 38
第二章
第37話「黒衣の終焉」
しおりを挟む
カサンドラの長剣が唸りを上げ、再びリシアに迫った。
刹那の軌跡は黒い稲光のようで、近くにいる兵士たちでさえ思わず目を覆うほどの鋭さだった。
リシアはその一撃を正眼に構えた右手の剣で受け止める。
衝突の瞬間、全身が弾かれた。骨の髄まで響く衝撃が伝わり、膝ががくりと折れそうになる。
だが彼女は踏みとどまり、左手に握った折れ刃の欠片を胸元から突き出した。
青と金の瞳が強烈に輝く。
その光が破片に宿った瞬間、鋭い刃を失っていたはずの鉄片が、一条の光をまとって蘇る。
ほんの刹那、亡きベルナルトが剣を握ったかのような気配が、彼女の全身を駆け抜けた。
『恐れるな。お前の手にあるのは、ただの欠片ではない。誇りを刃に変えるのだ』
カサンドラの剣が再び振り下ろされる。
リシアは身体を低く沈め、砕けた刃を閃かせながら踏み込んだ。
視界が一瞬、黄金に染まる。
「はああああああッ!!」
左手の破片が閃光となり、カサンドラの腕を裂いた。
予想外の痛みに、黒衣の将が呻き、長剣の軌道がわずかに逸れる。
その瞬間を逃さず、リシアは右の直剣を振り抜いた。
刃がカサンドラの鎧を割り、鮮血が飛び散る。
大地を震わせるような衝撃音。
カサンドラは一歩、二歩と後退した。
赤黒い血が胸を伝い、彼女はゆっくりと顔を上げる。
仮面の奥の双眸がリシアを射抜き、嗤う。
「……王国の小娘。さきほどまでとはまるで別人。誰だ、お前は」
リシアの胸に宿るもう一つの声が、静かに応じる。
『言わずともよい。名は要らぬ。だがこの瞬間、お前と刃を交わせた。それだけで十分だ』
リシアは震える肩を張り、顔を上げた。
「私は――リシア。リシア・アルディナ」
折れ刃を握る左手から血が滴る。だが彼女はその痛みを剣に変え、前へと踏み出す。
兵たちが息を呑む中、少女と黒衣の将が最後の間合いへと飛び込んだ。
朝日が昇りきり、戦場を黄金に染め上げる。
二つの魂がひとつの体を通じ、最後の一撃を放とうとしていた。
刹那の軌跡は黒い稲光のようで、近くにいる兵士たちでさえ思わず目を覆うほどの鋭さだった。
リシアはその一撃を正眼に構えた右手の剣で受け止める。
衝突の瞬間、全身が弾かれた。骨の髄まで響く衝撃が伝わり、膝ががくりと折れそうになる。
だが彼女は踏みとどまり、左手に握った折れ刃の欠片を胸元から突き出した。
青と金の瞳が強烈に輝く。
その光が破片に宿った瞬間、鋭い刃を失っていたはずの鉄片が、一条の光をまとって蘇る。
ほんの刹那、亡きベルナルトが剣を握ったかのような気配が、彼女の全身を駆け抜けた。
『恐れるな。お前の手にあるのは、ただの欠片ではない。誇りを刃に変えるのだ』
カサンドラの剣が再び振り下ろされる。
リシアは身体を低く沈め、砕けた刃を閃かせながら踏み込んだ。
視界が一瞬、黄金に染まる。
「はああああああッ!!」
左手の破片が閃光となり、カサンドラの腕を裂いた。
予想外の痛みに、黒衣の将が呻き、長剣の軌道がわずかに逸れる。
その瞬間を逃さず、リシアは右の直剣を振り抜いた。
刃がカサンドラの鎧を割り、鮮血が飛び散る。
大地を震わせるような衝撃音。
カサンドラは一歩、二歩と後退した。
赤黒い血が胸を伝い、彼女はゆっくりと顔を上げる。
仮面の奥の双眸がリシアを射抜き、嗤う。
「……王国の小娘。さきほどまでとはまるで別人。誰だ、お前は」
リシアの胸に宿るもう一つの声が、静かに応じる。
『言わずともよい。名は要らぬ。だがこの瞬間、お前と刃を交わせた。それだけで十分だ』
リシアは震える肩を張り、顔を上げた。
「私は――リシア。リシア・アルディナ」
折れ刃を握る左手から血が滴る。だが彼女はその痛みを剣に変え、前へと踏み出す。
兵たちが息を呑む中、少女と黒衣の将が最後の間合いへと飛び込んだ。
朝日が昇りきり、戦場を黄金に染め上げる。
二つの魂がひとつの体を通じ、最後の一撃を放とうとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる