月下遊戯(げっかゆうぎ)

Y-z

文字の大きさ
12 / 22

第11話「三影交錯」

しおりを挟む
夜の街の地下、封鎖された商業施設の跡。
ヴァルハラ社が隠した次のターゲット――試作兵器「コアユニット」が眠っている。
コンクリートの壁に亀裂が走り、地下鉄の残骸が迷路のように広がっていた。

「熱源反応、三つ」
ヴェイルの声が低く響く。

「三つ、か。なるほど……観客はもう一人、望んでいるらしい」
〈クラウン〉はマントを翻し、薄笑いを浮かべて影に溶けた。



「目標は最奥の格納庫。接近者は即座に排除」
ヴァルハラ社の無機質な声がヘッドセットに届く。

「了解」
ジョーカーは短く答える。
けれど心臓は早鐘を打っていた。

昨夜、現れた“彼女”の姿が頭から離れない。
そして今――。

「……来た」
闇の奥から、赤いマントが舞い降りる。クラウンだ。

ジョーカーは“Quiet”を構えた。
「今度こそ……」



銃声が轟く。火花が舞う。
クラウンは軽やかに壁を蹴り、逆さにぶら下がったまま笑った。

「ふふ、待っていたぞ。さあ、二度目の共演だ」

「黙れ」
ジョーカーは冷徹に引き金を引く。
弾丸が闇を裂く――

――その軌道を遮ったのは、銀色にきらめく刃。



「……!」
ジョーカーの瞳が大きく見開かれる。

彼女の前に立ちはだかる長身の影。
黒の戦闘服に、王冠をかたどった仮面。
〈クイーン〉。ヴァルハラ社の“もう一人”。

「任務を遂行する。ジョーカー、私が前に出る」
冷たい声。血の通わぬ響き。

「待って……どうして、あなたが」
思わず漏れた言葉に、クイーンは一瞥をくれただけだった。



三つの影が交錯する。
ジョーカーの銃弾、クイーンの刃、クラウンのワイヤーとマント。
廃墟の闇が瞬く間に乱舞の舞台へと変わる。

「おやおや、まさか二人揃ってとは……! まるで豪華なトリオ劇だな」
クラウンは楽しげに叫び、天井を駆ける。

ジョーカーの心は揺れていた。
(わたしは……あの子の代わり? それとも、いつかああなるの……?)
銃口を向ける手がわずかに震える。

クイーンの刃が、無慈悲に暗闇を切り裂いた。
「感情は不要。私が完成形」



遠く、警察のサイレンが近づく。
篠崎警部は通信機を握りしめ、叫んだ。
「全隊、地下通路を封鎖しろ! 必ず奴を追い詰める!」

しかし、瓦礫の奥から再び赤いマントが翻る。
クラウンは二人の攻撃を紙一重でかわし、笑みを絶やさぬまま煙幕を散らした。

「いいぞ……三人目が加わった舞台。これは、ますます観客が湧く!」

闇と光の狭間で、怪盗と二人の影が交錯する。
誰が主役で、誰が脇役なのか。
答えはまだ、夜の奥に隠されていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...