月下遊戯(げっかゆうぎ)

Y-z

文字の大きさ
22 / 22

第20話「夜の終幕」〔後編〕

しおりを挟む
閃光と爆炎が交錯する戦場。
瓦礫を踏み越え、クラウンとジョーカーの影が正面からぶつかり合った。

「やはり……君はただの駒ではない」
クラウンはマントを翻し、迫る銃弾をすり抜ける。
「兵器でもなく、人間でもなく――舞台に立つ“役者”だ」

「黙れ!」
ジョーカーは叫び、再び引き金を絞った。
その連射は鋭く、兵士を薙ぎ払うだけの威力を持っていた。

だがクラウンには届かない。
仮面の奥の瞳は、むしろ楽しげに細められていた。



〈ヴェイル〉の声が耳を刺す。
「警戒レベル上昇。Q-01の反応に異常値――覚醒の兆候です」

「……覚醒?」
ジョーカー自身も、その言葉の意味を理解できなかった。
だが確かに、胸の奥から溢れる力が“Quiet Teddy”を通じて外へあふれている。

銃声は轟き、爆風すら巻き起こす。
足元の床が割れ、鉄骨が悲鳴をあげた。



クラウンは笑いながらマントを広げた。
「いい、いいぞ! 舞台に必要なのは予定調和じゃない。台本を破り、観客を驚かせる役者こそ――真の主役だ!」

「私は……!」
ジョーカーは言葉を詰まらせた。
怒り、恐怖、そして奇妙な高揚が胸をかき乱す。
照準は揺れ、銃口はクラウンを捕えたまま、引き金に力がこもる。

――撃てる。
そう思った瞬間。

ビル全体が崩落し、轟音が二人を飲み込んだ。



瓦礫の中。
ジョーカーはかろうじて立ち上がったが、全身に痛みが走る。
視界の端に、赤いマントの影。

クラウンは仮面の奥で薄く笑い、声を落とした。

「いや、芝居に敗者は必要だろう? 今回は君に喝采を譲った。それだけさ」

ヴェイルが冷ややかに囁く。
「……今回も、ですがね」

クラウンは構わず、瓦礫の上からジョーカーを見下ろした。
「次の幕は――君を盗むためにある」



返す言葉はなかった。
ただ、銃を握る手が震えていた。

夜の闇が深まる中、第一章の幕はゆっくりと降りていった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...