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【最終話】浮気防止?指輪
最初にリストが連れていってくれたのは、ドレスショップ。
スラリとした大人っぽいシルエットの上質なドレスを扱っているお店だった。
派手な宝石を飾りに使っているわけじゃないのに、生地と刺繍が素晴らしくてとても華やか。
これどうかな、ってリストが選んでくれたのを女性の店員に着させてもらい、試着室のカーテンを開けた。
そのままリストの方へ近付き小声で話す、店員に聞こえないように。
「こんなに素敵なドレス、絶対に高いから私、買えないわよ」
「もちろん俺が払うよ。センティア、よく似合ってる、可愛い」
「か、かわ……!?」
どうしちゃったの、リスト!?
夜会の時とか話しかけてくる女性に対して素っ気ないのに。
そのリストが、ドレス姿を見て可愛いってお世辞を言ったりするなんて!
でもそうか。
私が夜会に出席していたのは16歳でデビュタントを迎えてからお母様が亡くなるまで。
学園を卒業してからは夜会に出席していない。
この一年ほどで、リストも女性にお世辞を言えるような大人になったということね。
その後、ドレスに合うように髪がセットされ綺麗に化粧もしてもらう事に。
こんな風に着飾ったの、すごく久しぶりだわ。
いつの間にか正装に着替えたリストに馬車へ乗る時エスコートされる。
普段と違うリストの姿はいつも以上に秀麗で、なんだかドキドキしてしまった。
ゆっくりと走りだす馬車。
このまま食事をするレストランにでも向かうのかしら、と思いながら窓から見える景色を眺める。
だけど、違った。
馬車が着いた場所は、王城。
先ほど城門でチェックを受けたあと、馬車を降りてリストにエスコートされるまま進んでいくと王宮へと入ってしまって。
「リスト、もしかして叙爵式って今日だったりするの?」
「違うけど、どうして?」
「こんなに着飾って、しかもお城へ来る用事なんて、他に無いでしょう?」
叙爵式でもないのに、なぜ城へ?
頭の中で疑問符が浮かぶ私は出迎えてくれた人物に、さらなる衝撃を受けた。
「やぁ、よく来たね。待っていたよ」
――お、王太子殿下!?
夜会などで遠くからしか拝見したことが無いけれど、目の前にいらっしゃるのは確かに王太子殿下ご本人。
私の隣に立つリストが、殿下に向かって軽く頭を下げた。
「この度はご提案くださりありがとうございました」
「リストの力になれて嬉しいよ。では、行こうか」
王太子殿下が案内してくれたのは、王宮内にある一室。
庭に面した壁はほぼ一面ガラス窓になっていて、部屋にいながら美しい庭園を眺める事ができるお部屋だった。
景色を楽しむ事ができる窓際に、二人掛けのテーブルが配置されている。
「今日はリストの大切な方の誕生日だと聞いてね、ここで食事をしてはどうかと提案したんだ。あと15分ほどしたら給仕が来るから食事はふたりでするといい、どうぞごゆっくり」
「ありがとうございます、では後ほど」
リストが殿下に向かって頭を下げたので、慌てて私もカーテシーをした。
ふたりきりになり、リストが椅子をひいてくれたので席につく。
正面の席にリストが座るのとほぼ同時に質問をぶつけた。
「どういう事なのリスト、王宮で食事だなんて!?」
「ここの部屋、王太子殿下が妃殿下と記念日の食事をする時に使う部屋なんだって。センティアの誕生日の予定を考えていたら、ここで食事すればいいと言って貸してくれた。料理も美味しいらしいよ」
へぇー、貸してくれたのね。ほぉー、さすが王宮、料理も美味しいなんて。
って、そうじゃないのよリスト、私が言いたいのは……!
「なぜこんなに凄い場所をリストが使えるの!?」
王太子殿下ご夫妻にとって、大切なお部屋でしょう?
「その質問に答える前に、センティアに確認したい。これから先も、俺と一緒に浮気防止の魔道具を開発する仕事に生きる覚悟はある? その覚悟が無いなら、ここから先の話はできない」
ぅ、先に決断しないと教えてもらえないなんて、第二工房の仕事を引き受けた時みたいだわ。
他の人にそんな事を聞かれたら、答えに迷ってしまうけど。
「リストと一緒にこの仕事を続けたいと思ってるわ。でも……」
「でも?」
「私、前に懐中時計の魔道具を作るの失敗して……それ以降はひとりで魔道具を作ってないから、リストの足手まといにならないか心配」
なぜかリストが目を見開いた。
「失敗って、何の事だ? 懐中時計の魔道具は問題なく機能してたぞ。俺の髪を外して、魔法石に対象者の髪を巻きつけたものが依頼人の手に渡っているはずだ」
「そうなの?」
「じいじいちゃんが言ってたから間違いない。それに下剤効果の魔道具や女性下着の魔道具のデザインの事とか、センティアの意見に俺すごく助けられてる。足手まといなわけないだろ」
リストの役に立てているなら……嬉しい。
「私……この仕事を続けたい、これからもずっと」
「決意してくれてありがとう、センティア。では話すよ。実は、第二工房は……」
話を聞いて驚いた。
ワンツスリ子爵家の第二工房は、代々王家の諜報機関のような役割も担っているのだという。
第二工房の仕事は依頼を受ける際、その家の内情を詳しく知ることができるから。
浮気防止の魔道具を依頼されるような時は、その対象者、場合によっては依頼人も貴族として相応しくない者であるケースが多いらしい。
そんな貴族の情報を王家に報告し、必要に応じて魔道具の請求額を調整しその家の財産を没収する。
その結果、時にはお取り潰しになる家もあるらしくて。
決して表に出る事は無いけれど、ワンツスリ子爵家の第二工房は貴族の勢力図を変えてしまう事もあり、この国でとても大きな存在。
「浮気防止の魔道具作りが、そんな事につながっていたなんて……」
「ま、浮気なんてしなきゃいいんだけどな」
「浮気しない一途な愛も簡単に作ることができればいいのにね……」
ふぅ、と小さくため息をつく。
「センティア、俺は浮気防止の魔道具は作れるけど、目に見える形で愛を作ることはできない」
「……そうね? さすがに愛は作れないと思うわ」
突然リストの声音が緊張したものに変わった気がして、少し戸惑っていたらスッと目の前に小さな箱が差し出された。
リストが箱をパカッと開けると、中には可愛らしい指輪が。
なんだろうこの指輪。
浮気防止の魔道具の試作品……とか?
「愛を作ることはできないけれど……だからこそセンティアへの愛を生涯ずっと育んでいきたい。センティア、結婚しよう」
「ぇ、けっ……?」
真剣な表情をしたリストにジッと見つめられている。
突然のプロポーズに驚いたけれど。
驚きよりも嬉しい気持ちの方が、大きい。
この指輪に浮気防止の効力があっても無くても大丈夫。
リストとなら幸せな家庭を築けると確信できるから。
結婚して、ふたりで大切に愛を育んでいきたい。
はい、と私が返事をすると、リストは泣きそうな顔で微笑んだ。
【完】
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
【あとがき】
最後まで読んでくださりありがとうございます♪
書き直してたら更新遅くなっちゃいました、ごめんなさいっ
こちらが完結したので、今後はしばらく大人の方向け小説の投稿になりそうです。
大人の方限定になりますが、よかったら以下の小説も読んでみてください♪♪
《本編連載中の小説》
(エタニティ作品)
『【R18】お兄ちゃんと契約結婚!?~不感症でオタクなちょいぽちゃの私がスパダリ御曹司に溺愛されて恋愛フラグ争奪戦~』
(ノーチェ作品)
『【R18】白い結婚が申し訳なくて~私との子を授かれば側室を持てる殿下のために妊娠したフリをしたら、溺愛されていたことを知りました~』
※のろのろ運転ですが完結まで更新がんばります、しおりやお気に入り登録などで応援していただけると嬉しいです☆彡
※この他に本編完結済みの小説もあります。
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