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しおりを挟む成瀬君はデートのためにレストランを予約してくれていた。
テレビでしか見たことのない、高級ホテルの一階にある有名なレストラン。
成瀬君に手をひかれ、未知の世界へと足を踏み入れる。
ふわぁぁあ! ロビーの天井が高い!
なんだかどこもかしこもキラキラしてる!
少し目が赤いからメガネ持ってきてるならコンタクト外せば、とレストランに入る前に成瀬君から言われ、コンタクトを外していつものメガネに。
目が乾いてつらくなってきたところだったので、成瀬君の言葉はありがたかった。
成瀬君は本当に気配り上手。一緒にいるとイケメンゆえのドキドキも凄いけど、無理しなくていいっていう安心感もあるから不思議。
レストランでは窓際の席に案内された。
一階なのに窓から見える夜景が素晴らしい。
建物が海沿いですぐ前が小さな湾になっているから、海を挟んで対岸にあるビル群の光がキラキラと煌めいていて思わず見惚れてしまった。
レストランは調度品なども高級感が漂っていて、食事をしている人達も皆この場所に相応しい雰囲気を纏っている。
接客も丁寧で、まるでお姫様にでもなったかのような扱い。
こんな場所でマナーとか大丈夫かな、と緊張してしまったけれどレストランではフランス料理にしては珍しくお箸も用意されていた。
飲み物を頼む時などは成瀬君がスマートに対応してくれるから、私が困る場面はひとつもない。
食事を楽しめるように一品一品ゆっくりと時間をかけて提供される料理は、見た目も味も今までの人生で初めて出会うどれも素晴らしいものだった。
しかもデザートは、たくさんの種類から好きなものを三つ選べるらしい。なんて贅沢な!
迷った結果、マカロンとガトーショコラとクリームブリュレにした。
成瀬君も同じものを頼んでいる。
デザートを食べる前はもうお腹いっぱいって思っていたけど、可愛らしいデザートプレートが目の前に出てきたらペロリと食べてしまった。
すごく美味しいッ!!
デザートの後は、食後のコーヒーを飲む。
成瀬君と、デザートの美味しかったところを互いに言ったりしながら。
はぁぁ、至福の時間だなぁ……。
「桜井、そろそろ行こうか」
あれ? もうこれでデートは終わりなのに、次のデートの約束とか、特にしないのかな??
…………
…………
……まぁ、仕方がない、か。
最初で最後のデートになったけど、すごく幸せだった。
今日を思い出せば、しばらくの間は何でも頑張れそうな気がする。
よし、明後日からの仕事、頑張ろう!
お会計は、いつの間にか済んでいたらしい。
私も払うという言葉は成瀬君にあっさり断られてしまった。
それなら全然値段が違くて申し訳ないけど、今度、職場で一緒にランチする時には私が払おう。
レストランを出たら、シックな色合いのお洒落なお手洗い表示が見えた。
高級ホテルはトイレの表示も高級感を醸し出していて素晴らしい。
家まで電車でけっこうかかるし、駅のトイレよりもここの方が絶対きれいだよね。
お手洗い、行っておこうかな。
「成瀬君、私お手洗いに寄ってから帰るから、先に帰ってて」
目が合った成瀬君は、少し眉を寄せて怪訝そうな表情。
食べてすぐにトイレかよって思われたかな。ちょっと恥ずかしい。
「今日は楽しかった、ありがとう。それじゃ、またね、成瀬君」
成瀬君に向かって小さく手を振った。
え……、と呟く成瀬君の声がしたような気がする。
あ、そうか……。
またこうしてふたりで会う機会はやっぱり無いよね。
はぁ、と成瀬君にため息をつかれた。
ちょっと不機嫌そう?
ごめん、『またね』なんて私、図々しかった?
これから先も彼女のつもりかよって感じ?
また仕事でねって言えば、大丈夫かな。
「桜井、ちょっとこっち来て」
少し低い成瀬君の声。
成瀬君は私の手をグッと握ると、エレベーターの方へ歩き出した。
一緒にエレベーターに乗る。
中に人はいない、ふたりきり。
成瀬君は、一番上のボタンに触れた。
そういえば、ここのホテルには夜景がきれいに見えるバーがあるってテレビで見たことがある。
そこに行くのかな?
もしかして、そこできちんと別れ話とか??
あれ??
広いエレベーターなのに、私の身体はエレベーターの壁と成瀬君に挟まれて身動きがとれない。
成瀬君は私を囲うように両手を壁について、壁ドン状態。
イケメンの壁ドンがこんなに迫力があるなんて知らなかった。
「明日は休みだからって桜井が言ったから、夕食からのデートでも了承したけど」
う、うん、そうだよね。帰りが遅くなっても次の日仕事じゃないから成瀬君も大丈夫だろうって思った。
「俺、本当は今日、もっと朝早くから会いたかった」
なんだか成瀬君が、怒ってる。こんな成瀬君見たの、初めて。
本当は、早くから会ってもっと早く帰りたかった?
私が夕方から会いたいなんてわがまま言って帰るのが遅くなったから怒ってるの?
「朝から長い時間一緒にいたかったけど、明日が休みだから渋々夜からのデートで了承したのに。またね、ってなんだよ。帰る気満々じゃないかよ。どうしてこんなに、俺ばっかりが好きなんだよ」
成瀬君がジャケットの胸ポケットからスッと何かのカードを出した。
一瞬、成瀬君の家のカードキーかと思ったけれど、違う。
「この前は流れで俺の部屋に泊めちゃったから、今日はちゃんとやり直しをさせてほしくてここの部屋を取ってある。帰らせるわけないだろ」
私を見つめる成瀬君の瞳に獲物を狙う獣のような炎が見えた気がして、思わず息を飲んだ。
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