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最終話 親友と幸せになる (リヒト視点)
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キノコを取りに行った先で猟師が仕掛けた罠にかかった俺は何故かグチョグチョに泣き崩れているゲオハルトを連れて屋敷に戻ってきた。
土にまみれた俺達を見てメイド長が目を剥いていたが長いお小言を貰う前にそそくさと浴室へむかう。ここのメイド長は躾の厳しい乳母のようでゲオハルトはもちろん俺にも遠慮なく振る舞ってくる。
風呂のあとひとしきりお小言をいただいた俺たちに温かい果実酒と軽食を持ってきてくれた侍従長は同情の視線をむけてくれた。王族に遠慮なく小言を言う女傑に今まで彼もやり込められてきたのだろう。
温かい果実酒の甘い香りが鼻孔をくすぐる。寝酒にはちょうどいい。
ベッドの上で楽しむことにしてグラスを小卓に載せる。
ヘッドボードに上半身を預けぼんやりとしているとゲオハルトが真面目な顔をして寄ってきた。
「姫様が私にサヨナラを言いに来てくださいました」
「は?」
「リヒト様を穴から助け出した後、私に一番の騎士だと。幸せになれと」
「そうか」
覚えていないがなんとなく覚えている気がしなくもない。
「姫として忠誠のキスを求められました」
「そうか」
「あの方と私は親友だったのに。騎士として命じられました」
「そうか」
「幸せにならないといけません」
「そうか」
「でもあの方がいない世界で幸せになれません」
極論だな。そういえばこういう奴だったか?長い間好きすぎてなぜ好きなのかわからなくなってきた気がする。もうこいつがゲオハルトであるから好きなのだ。ただの前世からの執着心なのかもしれない。
だが。
「どうすればいいのかわかりません」
執着心で片付けるにはお前の心を乱すのは私だけにしたいという思いが強すぎる。
私からも距離をつめた。吐息が甘い。果実酒のせいだ。
「じゃあ私がお前を幸せにするから何もするな」
軽くまぶたにキスを落とせば泣きすぎて腫れ上がったまぶたを何度も瞬かせる。大きな傷の入った強面の男がすると実に奇妙な仕草だがそれでも可愛く見えるのが惚れた弱みというやつなのだろう。
私はゲオハルトの顔を両手で挟んだ。髭が掌の下で潰れる。
「私もお前をどうするべきか最近考えあぐねていたんだ」
嘘がつけないように目を合わせる。
「伯母上を透かして見られるのも腹がたってな」
「そんなことは」
「あっただろう。この髪と瞳のせいだな」
「申し訳ありません」
「忘れさせてやると言ったのに主として不甲斐ないな」
「それなのですが。私はやはりフランツィスカ様の騎士でありたいです。リヒト様にお仕えはします。でも騎士としての剣を捧げるのはフランツィスカ様お一人。わがままを申しますがお許しください」
震える拳がゲオハルトの決意を表していた。無理に騎士の誓いをしいれば反発することは明白だ。
(堅物め)
「じゃあ友だちになろう」
もとから逃がすつもりはないのだ。最初の計画通り身体から落とせばいい。俺は狡猾に練った計画を踏襲すればいいだけだ。騎士がほしいわけじゃない。ほしいのはゲオハルトだ。
「友達」
「ただの友達じゃないぞ親友だ」
まだ納得のいってない表情のゲオハルトの唇をゆっくりと食む。甘い果実酒でふだんよりベタつく唇をひとしきり堪能する。
「これは友達がすることですか?」
(悪いが前世も現世も友達が他にいなかったのでお前限定ではあるな)
「親しい友同士ならすることだ」
顎を取り舌をからめるように口をふさぐ。
クフンと鼻から息が漏れる様子でゲオハルトの気分が乗ってきたことがわかる。
「心と体はつながっているからな。まず今日は体を幸せにしてやるよ。親友」
トンと肩を押せばベッドの上に転がる親友。
「幸せにしてやるよ。伯母上の願いは私がかなえよう」
とろけた瞳で俺を見上げるゲオハルトはうなずいた。
(私が前世を覚えていると言っても言わなくても変わりはないな)
「ずっと一緒だ」
閨の教師の教えの通り俺はゲオハルトを幸せにする。今日も明日もその先もずっと。
幻影?それも続けば現実だ。
土にまみれた俺達を見てメイド長が目を剥いていたが長いお小言を貰う前にそそくさと浴室へむかう。ここのメイド長は躾の厳しい乳母のようでゲオハルトはもちろん俺にも遠慮なく振る舞ってくる。
風呂のあとひとしきりお小言をいただいた俺たちに温かい果実酒と軽食を持ってきてくれた侍従長は同情の視線をむけてくれた。王族に遠慮なく小言を言う女傑に今まで彼もやり込められてきたのだろう。
温かい果実酒の甘い香りが鼻孔をくすぐる。寝酒にはちょうどいい。
ベッドの上で楽しむことにしてグラスを小卓に載せる。
ヘッドボードに上半身を預けぼんやりとしているとゲオハルトが真面目な顔をして寄ってきた。
「姫様が私にサヨナラを言いに来てくださいました」
「は?」
「リヒト様を穴から助け出した後、私に一番の騎士だと。幸せになれと」
「そうか」
覚えていないがなんとなく覚えている気がしなくもない。
「姫として忠誠のキスを求められました」
「そうか」
「あの方と私は親友だったのに。騎士として命じられました」
「そうか」
「幸せにならないといけません」
「そうか」
「でもあの方がいない世界で幸せになれません」
極論だな。そういえばこういう奴だったか?長い間好きすぎてなぜ好きなのかわからなくなってきた気がする。もうこいつがゲオハルトであるから好きなのだ。ただの前世からの執着心なのかもしれない。
だが。
「どうすればいいのかわかりません」
執着心で片付けるにはお前の心を乱すのは私だけにしたいという思いが強すぎる。
私からも距離をつめた。吐息が甘い。果実酒のせいだ。
「じゃあ私がお前を幸せにするから何もするな」
軽くまぶたにキスを落とせば泣きすぎて腫れ上がったまぶたを何度も瞬かせる。大きな傷の入った強面の男がすると実に奇妙な仕草だがそれでも可愛く見えるのが惚れた弱みというやつなのだろう。
私はゲオハルトの顔を両手で挟んだ。髭が掌の下で潰れる。
「私もお前をどうするべきか最近考えあぐねていたんだ」
嘘がつけないように目を合わせる。
「伯母上を透かして見られるのも腹がたってな」
「そんなことは」
「あっただろう。この髪と瞳のせいだな」
「申し訳ありません」
「忘れさせてやると言ったのに主として不甲斐ないな」
「それなのですが。私はやはりフランツィスカ様の騎士でありたいです。リヒト様にお仕えはします。でも騎士としての剣を捧げるのはフランツィスカ様お一人。わがままを申しますがお許しください」
震える拳がゲオハルトの決意を表していた。無理に騎士の誓いをしいれば反発することは明白だ。
(堅物め)
「じゃあ友だちになろう」
もとから逃がすつもりはないのだ。最初の計画通り身体から落とせばいい。俺は狡猾に練った計画を踏襲すればいいだけだ。騎士がほしいわけじゃない。ほしいのはゲオハルトだ。
「友達」
「ただの友達じゃないぞ親友だ」
まだ納得のいってない表情のゲオハルトの唇をゆっくりと食む。甘い果実酒でふだんよりベタつく唇をひとしきり堪能する。
「これは友達がすることですか?」
(悪いが前世も現世も友達が他にいなかったのでお前限定ではあるな)
「親しい友同士ならすることだ」
顎を取り舌をからめるように口をふさぐ。
クフンと鼻から息が漏れる様子でゲオハルトの気分が乗ってきたことがわかる。
「心と体はつながっているからな。まず今日は体を幸せにしてやるよ。親友」
トンと肩を押せばベッドの上に転がる親友。
「幸せにしてやるよ。伯母上の願いは私がかなえよう」
とろけた瞳で俺を見上げるゲオハルトはうなずいた。
(私が前世を覚えていると言っても言わなくても変わりはないな)
「ずっと一緒だ」
閨の教師の教えの通り俺はゲオハルトを幸せにする。今日も明日もその先もずっと。
幻影?それも続けば現実だ。
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