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16 図書棟資料室にて
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本が傷まないように設計された薄暗い図書棟の資料室の片隅でリリーは十年前の税収記録を探していた。
なぜ十年前かと言うとリリーとアルフォンスの婚約に口を挟んできているオーベアライヒ侯爵が以前税収記録管理官であった時期の記録を見たかったからだ。
オーベアライヒ家はこの国の初代王の側近だった先祖の武勲により侯爵の地位を受けたがその後はどちらかと言うと文官の名門として名を知られてきた家だ。四代前には宰相を出している。
書架にかかったはしごをずらしホコリの溜まった記録文章を取り出しては中を見る。
暗い部屋では革表紙に書かれた年代も中に閉じられた書類の細かい字も見づらく思った以上に時間がすぎる。
やっとのことで目当ての書類をリリーが見つけた時薄暗い部屋に差す光は夕日の赤みを帯びだしていた。
書架の前に立ったまま素早く書類に目を通したリリーは深い息をついた。
「やっぱりそうだ」
自分の立てた仮説が正しいと証明する事ができそうだと彼女が口元をほころばせたその時
「なにがやっぱりなんだ?」
後ろから男の声がかけられた。
ビクリとリリーの背中が跳ねる。
「なぁ何を見つけたんだ?」
男は背中側からリリーの左右に手をついてリリーの動きを封じた。書架と男に挟まれたリリーはその声に後ろにいる男の正体に気づいた。
リリーが生涯ともにするはずだった相手の声だ、さすがにわかる。
だがアルフォンスはここに何をしに来たのか。
「ダミアン・ハースト。何を探していたのか教えてくれよ。手伝ってやるからさ」
(なんで名前を?)
「王太子殿下の命を受けて調べものをしています。お答えできません。どこのどなたか存じませんがこの手をどけてください」
声を低くしてこたえたがアルフォンスがリリーに気づくのではないかと嫌な汗が背中を流れた。
「は。生意気なやつだな。15になったばかりで王太子殿下に目をかけられているからって、いい気になってるんじゃないか?俺は親切で言ってるんだぜ」
「貴殿には関係のないことです」
「じゃあ関係のある話だ。お前俺の婚約者に恋慕しているらしいな。悪いがあいつは俺のもんだから。あきらめろ」
「リリーはあなたとは結婚しないと言っていましたよ」
「するさ。お前みたいな子供にはわからないだろうがリリーを幸せにしてやれるのは心の広い俺しかいないんだ」
『リリーが妊娠しているって噂はすぐに広まる。傷物になった女を引き受ける男なんていないさ』
「彼女は貴族令嬢として恥じることはしていない!!」
「惚れた女を信じるのは結構だがこんな小さな体じゃあ俺の事を止められないだろう」
『王宮にいるうちに既成事実をつくるだけのこと』
「な!」
思わず振り向いたリリーの頬に熱が押し当てられ痛みが走った。
グワンと視界が揺れ自分が床に倒れたことにリリーは気づいた。
(……殴られた)
口の中が切れたのか鉄の味がする。
手にしていた書類は殴られた時にすこしはなれた床に飛んでいるのが視界に入る。
「じゃあこれはもらっていくぞ」
メガネがずれて顔をあげられないリリーの前でアルフォンスが立つ。
「い゛!!」
頭に足をのせられた。ぎりぎりと圧をかけられ痛みに息が詰まる。
「子爵家の息子ごときがおれのリリーに手をだそうとしたんだ。殺されないだけありがたく思えよ」
ご丁寧につばまで吐きかけてアルフォンスは去っていった。
「う、う゛う゛う゛っ」
痛みと屈辱で涙が止まらない。初めて振るわれた暴力にショックを受けたがそれよりもアルフォンスの卑劣な計画を知ってしまいリリーの中に明確な闘志が生まれた。
(絶対に仕返してやる!!)
夕日の色に染まったしずかな資料室の中リリーのおしころした嗚咽が響いた。
なぜ十年前かと言うとリリーとアルフォンスの婚約に口を挟んできているオーベアライヒ侯爵が以前税収記録管理官であった時期の記録を見たかったからだ。
オーベアライヒ家はこの国の初代王の側近だった先祖の武勲により侯爵の地位を受けたがその後はどちらかと言うと文官の名門として名を知られてきた家だ。四代前には宰相を出している。
書架にかかったはしごをずらしホコリの溜まった記録文章を取り出しては中を見る。
暗い部屋では革表紙に書かれた年代も中に閉じられた書類の細かい字も見づらく思った以上に時間がすぎる。
やっとのことで目当ての書類をリリーが見つけた時薄暗い部屋に差す光は夕日の赤みを帯びだしていた。
書架の前に立ったまま素早く書類に目を通したリリーは深い息をついた。
「やっぱりそうだ」
自分の立てた仮説が正しいと証明する事ができそうだと彼女が口元をほころばせたその時
「なにがやっぱりなんだ?」
後ろから男の声がかけられた。
ビクリとリリーの背中が跳ねる。
「なぁ何を見つけたんだ?」
男は背中側からリリーの左右に手をついてリリーの動きを封じた。書架と男に挟まれたリリーはその声に後ろにいる男の正体に気づいた。
リリーが生涯ともにするはずだった相手の声だ、さすがにわかる。
だがアルフォンスはここに何をしに来たのか。
「ダミアン・ハースト。何を探していたのか教えてくれよ。手伝ってやるからさ」
(なんで名前を?)
「王太子殿下の命を受けて調べものをしています。お答えできません。どこのどなたか存じませんがこの手をどけてください」
声を低くしてこたえたがアルフォンスがリリーに気づくのではないかと嫌な汗が背中を流れた。
「は。生意気なやつだな。15になったばかりで王太子殿下に目をかけられているからって、いい気になってるんじゃないか?俺は親切で言ってるんだぜ」
「貴殿には関係のないことです」
「じゃあ関係のある話だ。お前俺の婚約者に恋慕しているらしいな。悪いがあいつは俺のもんだから。あきらめろ」
「リリーはあなたとは結婚しないと言っていましたよ」
「するさ。お前みたいな子供にはわからないだろうがリリーを幸せにしてやれるのは心の広い俺しかいないんだ」
『リリーが妊娠しているって噂はすぐに広まる。傷物になった女を引き受ける男なんていないさ』
「彼女は貴族令嬢として恥じることはしていない!!」
「惚れた女を信じるのは結構だがこんな小さな体じゃあ俺の事を止められないだろう」
『王宮にいるうちに既成事実をつくるだけのこと』
「な!」
思わず振り向いたリリーの頬に熱が押し当てられ痛みが走った。
グワンと視界が揺れ自分が床に倒れたことにリリーは気づいた。
(……殴られた)
口の中が切れたのか鉄の味がする。
手にしていた書類は殴られた時にすこしはなれた床に飛んでいるのが視界に入る。
「じゃあこれはもらっていくぞ」
メガネがずれて顔をあげられないリリーの前でアルフォンスが立つ。
「い゛!!」
頭に足をのせられた。ぎりぎりと圧をかけられ痛みに息が詰まる。
「子爵家の息子ごときがおれのリリーに手をだそうとしたんだ。殺されないだけありがたく思えよ」
ご丁寧につばまで吐きかけてアルフォンスは去っていった。
「う、う゛う゛う゛っ」
痛みと屈辱で涙が止まらない。初めて振るわれた暴力にショックを受けたがそれよりもアルフォンスの卑劣な計画を知ってしまいリリーの中に明確な闘志が生まれた。
(絶対に仕返してやる!!)
夕日の色に染まったしずかな資料室の中リリーのおしころした嗚咽が響いた。
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