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美しくふふふと微笑んだアンナの瞳の奥に剣呑な気配を感じリリーはこの人は絶対に敵に回してはいけないタイプの女性だと確信した。
貴人に使える侍女らしく美しく控えめな美を持つ彼女は見た目よりすごい権力を持っているに違いない。上品にまとめられた茶色い髪と黒目がちな瞳、バランスが取れているが人目を引く美人ではない。けれどそう考えてみれば、彼女の控えめな美しさは周りに溶け込むように作られているように見える。
もしもリリーがシシィに害を加えるような行動をとれば、その全力で彼女を王宮にふさわしいやり方で狩りに来るのではないだろうか。
その場合リリーのような新参者が太刀打ちできるわけもなく、彼女の運命は嫌がらせから神経衰弱に陥るとか古典的な毒殺までいくつものバリエーションの中でバッドエンドでしめられることは想像に難くない。
そう考えたリリーはアンナに令嬢らしく微笑みで返したが心の中はかなり穏やかではなかった。
視線をそらしてはいけない。自衛の本能がリリーにささやく。
しばらくうふふふふふふとほほえみ合う二人を見ていたシシィは何かを感じたのかパシリと扇を鳴らした。
「もう、おねえさま。早くお着替え下さいな。おば様をお待たせするわけにはいきませんの」
シシィの言葉にせかされて二人が動き出す。
リリーの着替えをすませ王妃の待つ部屋へと三人は向かった。
昨晩と違う部屋へ通されて王妃に向かって入り口で一礼をすると予想外の人物がリリーの目に入った。
「あら、遅かったわね」
くるりと扇を手首で返した王妃クリスティーナは三人を見ると手招きをした。王妃の向かいに座るのは蜂蜜色の髪をした美丈夫、この国の王太子アレクサンダー。リリーが先ほどわかれたばかりの人物だった。
「アレク、紹介するわ。シシィの隣のそちらの令嬢はリリフォリア・アデノフォラ嬢。私の良いお友達なの」
紹介を受けてアレクサンダーが立ち上がりリリーのもとへと来た。
「アレクサンダーだ。君がアデノフォラ嬢。シシィとも仲良くしてくれているらしいね。会えてうれしいよ」
リリーは軽く膝を曲げ挨拶をする。向けられた空色の瞳にもしや気づかれるのではとリリーの背中に嫌な汗が一筋おちた。目が合ったがアレクサンダーの様子に変化はない。
(大丈夫かしら?ダミアンだって気づかれてない?)
「シシィもこの間ぶりだね。今日もきれいだね」
『ダミアンと噂になっているアデノフォラ嬢と一緒にいるということは二人は恋のライバルというわけではないのだろうか。やはりダミアンの言っていたことは本当だったのか。よかった本当によかった』
リリーの思惑に気付かなかったアレクサンダーはシシィの指先をとると軽いキスを落としてにこりとほほえむ。瞳の色が柔らかくなったことにシシィは気づいただろうかとリリーは彼女の様子を伺った。
「お久しぶりですわ。アレク様のお陰でまだ婚約者も決まりませんが、リリー様のお陰で退屈しておりませんわ」
つんとした態度でシシィはアレクに嫌味をいうが、彼女の本心を知ってしまえばこの態度も恥ずかしくて目を合わせられないのだろうとリリーは思った。
シシィの頬が上気しているのがその証拠だと彼女は見て取った。
「そんなこと言って。シシィの婚約者にふさわしい男かどうか見極めるのに時間をもらっただけじゃないか」
「先日は他の書類にまぎれたんだとおっしゃってましたけど」
「全く困ったもんだよねぇ。色々と忙しくてね」
『何度出されてもシシィの婚約に関しては私を通すことになっているから。次の婚約がすすんでも絶対とめる!!許さない!!シシィが選んだとしても絶対だ!!』
他人事のようにシシィの追求をサラリとかわしアレクサンダーはニコリとわらった。
本音を隠す笑顔だがアレクサンダーの美しい顔立ちでやることで向けられた相手の思考を止める効果は抜群であった。
「お、いそがしいのは、大変ですわね」
シシィの頬が更に赤く染まり視線が泳いだ。
(大好きですのね。シシィ様ったら。それにしても王太子様はまだ婚約の邪魔をするの?お二人の関係をはっきりさせて自分がシシィ様を幸せにしようという方向にはいかないのはなんでなのかしら?)
可愛らしいシシィの反応を見ているとリリーの心までむずむずとしてくる。
そこへなかなか席に来ない三人にしびれを切らして王妃が声をかけた。
「さ、あなた方お座りになって」
「母上、私の用事はすみましたので今日はこちらで失礼します」
「あらそう?じゃあまた近いうちに遊びに来て頂戴ね。あなた最近仕事ばかりで父さまも心配なさっていてよ」
「はい。かならず」
アレクサンダーはそういうと三人に会釈をして去っていった。
シシィとリリーの二人が席に着くと王妃は興味深そうにリリーを見つめた。
「アレクってば本当に気づかないのね。あなた達、本当にいっしょに働いているのでしょう?」
さて、王妃にまで男装姿で王太子執務室で働いているといつ言っただろうとリリーは思ったがシシィも驚いている様子はないので彼女から報告したのだろうかとあたりをつけた。
まぁ最高権力者の妻が知りたいと思えばどんな情報でも入ってくるのだ。不思議はない。
「一緒に働いている方たちもおねえさまに気付かないのだもの。男性が普段何を見ているのか考えさせられるわね」
ふぅと大きく息をついた拍子にシシィの胸がたゆんと揺れた。
そりゃそれだけ胸を強調していたら誰でもそこに視線を送るだろう。今日も見事にアンナによって作られた自らの胸のふくらみに目を落とし、修道院では必要ない技術だが習得すべきかしばし考えるリリーであった。
貴人に使える侍女らしく美しく控えめな美を持つ彼女は見た目よりすごい権力を持っているに違いない。上品にまとめられた茶色い髪と黒目がちな瞳、バランスが取れているが人目を引く美人ではない。けれどそう考えてみれば、彼女の控えめな美しさは周りに溶け込むように作られているように見える。
もしもリリーがシシィに害を加えるような行動をとれば、その全力で彼女を王宮にふさわしいやり方で狩りに来るのではないだろうか。
その場合リリーのような新参者が太刀打ちできるわけもなく、彼女の運命は嫌がらせから神経衰弱に陥るとか古典的な毒殺までいくつものバリエーションの中でバッドエンドでしめられることは想像に難くない。
そう考えたリリーはアンナに令嬢らしく微笑みで返したが心の中はかなり穏やかではなかった。
視線をそらしてはいけない。自衛の本能がリリーにささやく。
しばらくうふふふふふふとほほえみ合う二人を見ていたシシィは何かを感じたのかパシリと扇を鳴らした。
「もう、おねえさま。早くお着替え下さいな。おば様をお待たせするわけにはいきませんの」
シシィの言葉にせかされて二人が動き出す。
リリーの着替えをすませ王妃の待つ部屋へと三人は向かった。
昨晩と違う部屋へ通されて王妃に向かって入り口で一礼をすると予想外の人物がリリーの目に入った。
「あら、遅かったわね」
くるりと扇を手首で返した王妃クリスティーナは三人を見ると手招きをした。王妃の向かいに座るのは蜂蜜色の髪をした美丈夫、この国の王太子アレクサンダー。リリーが先ほどわかれたばかりの人物だった。
「アレク、紹介するわ。シシィの隣のそちらの令嬢はリリフォリア・アデノフォラ嬢。私の良いお友達なの」
紹介を受けてアレクサンダーが立ち上がりリリーのもとへと来た。
「アレクサンダーだ。君がアデノフォラ嬢。シシィとも仲良くしてくれているらしいね。会えてうれしいよ」
リリーは軽く膝を曲げ挨拶をする。向けられた空色の瞳にもしや気づかれるのではとリリーの背中に嫌な汗が一筋おちた。目が合ったがアレクサンダーの様子に変化はない。
(大丈夫かしら?ダミアンだって気づかれてない?)
「シシィもこの間ぶりだね。今日もきれいだね」
『ダミアンと噂になっているアデノフォラ嬢と一緒にいるということは二人は恋のライバルというわけではないのだろうか。やはりダミアンの言っていたことは本当だったのか。よかった本当によかった』
リリーの思惑に気付かなかったアレクサンダーはシシィの指先をとると軽いキスを落としてにこりとほほえむ。瞳の色が柔らかくなったことにシシィは気づいただろうかとリリーは彼女の様子を伺った。
「お久しぶりですわ。アレク様のお陰でまだ婚約者も決まりませんが、リリー様のお陰で退屈しておりませんわ」
つんとした態度でシシィはアレクに嫌味をいうが、彼女の本心を知ってしまえばこの態度も恥ずかしくて目を合わせられないのだろうとリリーは思った。
シシィの頬が上気しているのがその証拠だと彼女は見て取った。
「そんなこと言って。シシィの婚約者にふさわしい男かどうか見極めるのに時間をもらっただけじゃないか」
「先日は他の書類にまぎれたんだとおっしゃってましたけど」
「全く困ったもんだよねぇ。色々と忙しくてね」
『何度出されてもシシィの婚約に関しては私を通すことになっているから。次の婚約がすすんでも絶対とめる!!許さない!!シシィが選んだとしても絶対だ!!』
他人事のようにシシィの追求をサラリとかわしアレクサンダーはニコリとわらった。
本音を隠す笑顔だがアレクサンダーの美しい顔立ちでやることで向けられた相手の思考を止める効果は抜群であった。
「お、いそがしいのは、大変ですわね」
シシィの頬が更に赤く染まり視線が泳いだ。
(大好きですのね。シシィ様ったら。それにしても王太子様はまだ婚約の邪魔をするの?お二人の関係をはっきりさせて自分がシシィ様を幸せにしようという方向にはいかないのはなんでなのかしら?)
可愛らしいシシィの反応を見ているとリリーの心までむずむずとしてくる。
そこへなかなか席に来ない三人にしびれを切らして王妃が声をかけた。
「さ、あなた方お座りになって」
「母上、私の用事はすみましたので今日はこちらで失礼します」
「あらそう?じゃあまた近いうちに遊びに来て頂戴ね。あなた最近仕事ばかりで父さまも心配なさっていてよ」
「はい。かならず」
アレクサンダーはそういうと三人に会釈をして去っていった。
シシィとリリーの二人が席に着くと王妃は興味深そうにリリーを見つめた。
「アレクってば本当に気づかないのね。あなた達、本当にいっしょに働いているのでしょう?」
さて、王妃にまで男装姿で王太子執務室で働いているといつ言っただろうとリリーは思ったがシシィも驚いている様子はないので彼女から報告したのだろうかとあたりをつけた。
まぁ最高権力者の妻が知りたいと思えばどんな情報でも入ってくるのだ。不思議はない。
「一緒に働いている方たちもおねえさまに気付かないのだもの。男性が普段何を見ているのか考えさせられるわね」
ふぅと大きく息をついた拍子にシシィの胸がたゆんと揺れた。
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