44 / 63
44 宰相の思惑
しおりを挟む
「この魔石というのは面白い物なんだよ。広い世界の中で発掘されるのは我が国と隣国の一部。まだ見つかっていない魔石の鉱脈がどこかにあるのかもしれないが。魔道具と一緒に使わなければただの石だからね。妖精との相性が悪いというのもつい最近の発見でね。いやー面白いね」
はっはっはっと大きな声で笑う宰相はリリーに向かってニヤリと笑った。
「さて、君にお願いした仕事の件だが首尾はどうかな?」
ぎょろりとした灰色の瞳は知性を感じさせるがその輝きはおねだりしておいたおもちゃを貰う前のこどものように興奮している。
「あの?お願いした仕事?とは?」
リリーには宰相が何を言っているのかさっぱりわからない。灰色の瞳の上の太い眉根が寄せられたが、そんな顔をされてもリリーだって答えられるものならこたえている。
「君は自分の仕事の内容がわからないまま王太子執務室でオーベアライヒの不正を暴こうとしていたのかな?」
「え?あの。本当になんのことだか」
「ヨーグ、お前の娘はいいなぁ。お前の代わりに私の部署に入ってもらおうかな。お前よりよっぽど可愛げがあるしな」
「娘が聡いのは私譲りです。可愛げは妻からですが」
憮然とした父がたしかに可愛げのない口調でこたえたのを聞いてリリーは思わずくすりと笑ってしまった。だが次の言葉でその笑みも消える。
「仕事熱心だし王妃様にも可愛がられているし精霊にも気に入られているようだし家に閉じ込めておくのはもったいないな」
宰相という決まりを作る立場のこの人でさえ四角四面に貴族界の伝統を疑うこともしないのだ。仕事ができ人脈があっても女性が結婚後家に縛り付けられることを良しとしている。リリーの胸が暗い未来の想像で重たくなる。宰相の顔を見ていられなくて視線が落ちた。
アルフォンスとの婚約を邪魔することが出来てもこのままではすぐに次の婚約者を連れてこられるのだろう。王妃との繋がりができた今リリーは不名誉な噂に目をつぶっても良い物件として見られるのだ。レオのことを解決すれば静かな修道院生活まであと少しだったのに、何故こうなってしまうのか……
「そうそう。王妃様だけでなく未来の王太子妃にも懐かれているようだね」
その言葉にリリーは膝上で固く握りしめていた手に落としていた視線をあげた。
「未来の王太子妃……」
「そうだ。君の本来の仕事だよ。さ、あの二人の様子はどうなのかな?そろそろ報告がほしいと思っていたんだ」
ワクワクを隠そうともせず宰相はリリーにねだった。
「……え、あの二人って、あの、お二人ですか?」
リリーの頭に浮かんだのはもちろん王太子とシシィであったが、いや、まさかという思いが言葉を詰まらせた。
「まさかお互いなんとも思っていないということはないだろう?」
「え?私が王太子殿下の執務室に行かされたのはそのためだったのですか?」
「何のためだと思っていたのかね?」
「嘘を見抜ける精霊の呪いをつかって不正を見つけるためだと思っておりましたが」
「そんなのわざわざ王太子殿下の執務室でなくても君がやったように資料を当たればある程度のことはわかる。だが人の心のことは資料からはわからないだろう。王太子殿下とシシィ様のことはなかなかに繊細な問題でね。まずはお二人の気持ちを確かめたかったんだ」
「お二人の気持ち……」
自分が期待されていた役割が全く思っていなかった方向から託されていたと知りリリーはパチパチとまばたきを繰り返すのだった。
はっはっはっと大きな声で笑う宰相はリリーに向かってニヤリと笑った。
「さて、君にお願いした仕事の件だが首尾はどうかな?」
ぎょろりとした灰色の瞳は知性を感じさせるがその輝きはおねだりしておいたおもちゃを貰う前のこどものように興奮している。
「あの?お願いした仕事?とは?」
リリーには宰相が何を言っているのかさっぱりわからない。灰色の瞳の上の太い眉根が寄せられたが、そんな顔をされてもリリーだって答えられるものならこたえている。
「君は自分の仕事の内容がわからないまま王太子執務室でオーベアライヒの不正を暴こうとしていたのかな?」
「え?あの。本当になんのことだか」
「ヨーグ、お前の娘はいいなぁ。お前の代わりに私の部署に入ってもらおうかな。お前よりよっぽど可愛げがあるしな」
「娘が聡いのは私譲りです。可愛げは妻からですが」
憮然とした父がたしかに可愛げのない口調でこたえたのを聞いてリリーは思わずくすりと笑ってしまった。だが次の言葉でその笑みも消える。
「仕事熱心だし王妃様にも可愛がられているし精霊にも気に入られているようだし家に閉じ込めておくのはもったいないな」
宰相という決まりを作る立場のこの人でさえ四角四面に貴族界の伝統を疑うこともしないのだ。仕事ができ人脈があっても女性が結婚後家に縛り付けられることを良しとしている。リリーの胸が暗い未来の想像で重たくなる。宰相の顔を見ていられなくて視線が落ちた。
アルフォンスとの婚約を邪魔することが出来てもこのままではすぐに次の婚約者を連れてこられるのだろう。王妃との繋がりができた今リリーは不名誉な噂に目をつぶっても良い物件として見られるのだ。レオのことを解決すれば静かな修道院生活まであと少しだったのに、何故こうなってしまうのか……
「そうそう。王妃様だけでなく未来の王太子妃にも懐かれているようだね」
その言葉にリリーは膝上で固く握りしめていた手に落としていた視線をあげた。
「未来の王太子妃……」
「そうだ。君の本来の仕事だよ。さ、あの二人の様子はどうなのかな?そろそろ報告がほしいと思っていたんだ」
ワクワクを隠そうともせず宰相はリリーにねだった。
「……え、あの二人って、あの、お二人ですか?」
リリーの頭に浮かんだのはもちろん王太子とシシィであったが、いや、まさかという思いが言葉を詰まらせた。
「まさかお互いなんとも思っていないということはないだろう?」
「え?私が王太子殿下の執務室に行かされたのはそのためだったのですか?」
「何のためだと思っていたのかね?」
「嘘を見抜ける精霊の呪いをつかって不正を見つけるためだと思っておりましたが」
「そんなのわざわざ王太子殿下の執務室でなくても君がやったように資料を当たればある程度のことはわかる。だが人の心のことは資料からはわからないだろう。王太子殿下とシシィ様のことはなかなかに繊細な問題でね。まずはお二人の気持ちを確かめたかったんだ」
「お二人の気持ち……」
自分が期待されていた役割が全く思っていなかった方向から託されていたと知りリリーはパチパチとまばたきを繰り返すのだった。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました
さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。
そんな事ある日、父が、
何も言わず、メイドして働いてこい、
と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。
そこで、やっと人として愛される事を知る。
ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。
そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。
やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。
その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。
前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。
また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m
毎日朝6時更新です(*^^*)あとは、
気分でアップします
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
悪役令嬢の断罪――え、いま婚約破棄と?聞こえませんでしたわ!
ちゃっぴー
恋愛
公爵令嬢アクア・ラズライトは、卒業パーティーの最中に婚約者であるジュリアス殿下から「悪役令嬢」として断罪を突きつけられる。普通なら泣き崩れるか激昂する場面――しかし、超合理的で節約家なアクアは違った。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる