呪いをかけられ婚約破棄をされた伯爵令嬢は仕事に生きます!なのに運命がグイグイ来る。

音無野ウサギ

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53 誤解

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「そもそも彼女が運命の人だとなぜわかったんだ?間違いという可能性はないのかな?」



 レオが国に帰りたいと願い続けた三年間を知っているだけに、アレクサンダーはこれが勘違い、希望的間違いだという可能性はおおいにあると思っていた。



「それはありません。リリーは私の唯一の運命だとわかりました。ただわかったんです」



「そうか……」



レオは居ずまいをただしアレクサンダーへと向き直った。美しい空色の瞳が同じ色をした瞳をひたりと見つめる。



「お願いというのはリリーとのこと。愛らしい彼女が他の誰かに見初められる前に婚約をしたいのです。リリーの父上はあまり賛同していただけていない様子ですが、リリーは私のことを好いてくれているはずなのです。アレク様は私の後見人としてご支持いただけますよね」



「好いてくれているはず……まぁ令嬢にとっては悪い話ではないのだし。その彼女の父親に話をしてみよう。結婚できる年齢まで婚約しておくのは常識的だしな。で、リリーとはどこのご令嬢かな?」



 アレクサンダーは少し考え込んだがレオの肩を持つことにした。他国とはいえ王族の一人、レオの本来の見た目はアレクサンダーとは違うが容姿は整っている。家だけの結びつきのために結婚させられることの多い貴族令嬢にとって乞われての結婚は悪い話ではないだろう、そう結論付けた。



「リリー様はアデノフォラ家の長女でらっしゃいます」



 レオの後ろからヨハンが告げた言葉にアレクサンダーはその家名を最近耳にしたことを思い出した。



「アデノフォラ……リリフォリア……リリー!!か」



「なんですか?ご存知なんですか?」



「あぁ先日、母上のところで。そうか、彼女が……あ!」



 アレクサンダーはレオを見て気まずそうに窓の外へと視線をうつした。



「どうされました?」



「レオのことは応援したいが……」



 アレクサンダーは言葉を濁す。



「その彼女は恋多き女性ということは……ないかな?」



 ダミアンと浮名を流したばかりの女性がレオの相手であるならば彼の言う『運命の相手だとわかった』というのは甚だ疑わしいとアレクサンダーは思った。



 実際ダミアンが本当の恋人でレオの勘違いかもしれないのだ。このまま王太子が婚約を押し進めてしまえばアデノフォラ家としては王家から勧められた縁談を断ることは難しいだろう。



 まだ入ってきて間もないとはいえダミアンは真面目に仕事をこなし、執務室の仲間として皆に可愛がられている。そのダミアンと恋人を引き離す一端になるのは正直言って避けたいとアレクサンダーは思う。



「そんなこと絶対にないです。リリーみたいに優しくて可愛らしい人はその優しさを男に誤解されてしまうかもしれないけれど、誤解に決まっています!!」



「自分のことを言っているのか?」



「そこまでわかっていてなんで……」



 アレクサンダーもヨハンもレオは自分の言葉を分かっていっているのかと顔を見合わせる。



「え?どうかしました?」



 キョトンとした表情でレオが二人を見た。



「やはり他に恋人が居たりするのでは?」



 そう言ったアレクサンダーはここでダミアンのことを言っていいものか迷っていた。十五歳になったばかりとはいえ彼は結婚できる年齢である。もし、アデノフォラ家に早急に婚約、結婚をさせたい意向があればダミアンのほうが有利になる。



 ただ『運命の相手だとわかった』というレオの言葉だが証明のしようがない。リリーがレオを愛した時にレオが本来の姿に戻るまで、誰にも証明できないのだ。



 アレクサンダーは若干気まずい気持ちで己と同じ顔した男をみつめた。



「そんなわけはないですよ!リリーは私が抱きしめたときも抱きしめかえしてくれたし」



 リリーを腕の中に収めていたときのことを思っているのかレオの表情が甘くとろけた。



「毎朝会いに来てくれるし」



「レオ様が毎日中庭でお待ちになっているのをお知りになったからでしょうね」



 ヨハンは小声で付け足した。



「プロポーズをしたときも父上に相談すると言ってくれた」



「それは……嬉しいとか言う言葉はなかったのかな?」



「にっこり笑ってくれました」



 『なるほど優しさを誤解している男がここに』そう思うアレクサンダーとヨハンであった。
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