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2 後悔
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「ひとまず陸に送ってあげる。ちょっと魚さん聞こえてたでしょう?よろしくね」
優しいちょうちょさんが声を掛けると、どんっと僕の乗った蓮の葉に衝撃が伝わった。どうやら水中で話を聞いていたお魚さんがお手伝いしてくれるらしい。それからしばらくして蓮の葉はゆっくりと動き出した、どうやら無事茎を食いちぎってくれたようだ。
それからドレスのリボンをちょうちょさんの足に結びつけるように言ってくれたので意外に刺々しい足にじゃっかんびびりながら結びつけてしっかりと自分の手首にもそれを結わえた。
これでばっちり岸まで連れて行ってもらえる。
って気づいた、おぉう、この展開、まさに親指姫。
小さい頃に妹に読んでやった絵本でも困っていた親指姫を助けてくれたのはチョウチョと魚。その後は確かモグラにお嫁にされそうになったのをつばめが助けてくれて最後は妖精の王子様との結婚式でハッピーエンドだったはず。
あれ?でもどっかにカナブン出てこなかったっけ?一目惚れして親指姫をさらった挙げ句に周りに同調して親指姫をブサイクって罵って捨てた自分の意見ないです男。
最初の方だったかな?じゃあ僕カナブンに蓮の池まで連れてこられたの?そんでなんかのショックで記憶喪失?
ほんとに親指姫の世界に転生したの?
いやーでも僕男だしなぁ。ミニミーがあるしなぁ。妖精の王子様との結婚はあんまり嬉しくないかも。あ、あれか、男女逆転の物語かな。だと僕が妖精のお姫様を幸せにしてあげるのか?むむむ。今のところ前世の記憶も知識も役に立ちそうにないんだけど。大丈夫かな?
ゆっくりと進んでいく蓮の葉の上で前でリズミカルに動くちょうちょさんの優雅な羽を見つめる。
ひらりひらりと夕焼けの中舞う羽がとてもきれい。
さっきまで怖かった黄昏時がゆっくりと優しい夜の始まりに変わっていく。
「ねえ、娘さんはどうしてこの池に来たの?」
「それが良くわからなくて」
「羽もないのにあんな池の真ん中にいるからお迎えが来るのかと思って見てたんだけどこんな時間になるまで誰も来ないから、おせっかいかと思ったけど声をかけちゃったの」
「ありがとう。助かったよ」
「いいえ、私にできることがあってよかったわ。夜はちゃんとお家に帰って寝なくちゃ。夜の世界は危険に溢れてるってね。ほら、もうそこが岸。お家はどのへんなのかしら?」
そう言ったちょうちょさんがこちらを振り返って僕の様子を伺う。
その時、何かが視界の端から伸びてきてちょうちょさんの身体に巻き付くのが見えた。僕の目にはコマ送りのように突然の衝撃にバランスを崩したちょうちょさんの羽が乱れるのが映った。それから空中から水の上に叩きつけられたちょうちょさんの羽の上に水の玉が乗り、撥ね、散る。一瞬だけ水中に姿を消したちょうちょさんが今度は巻き付いた紐に空中に引き上げられたタイミングで僕の体も宙に浮いた。その瞬間ぎゅわんっと空中で向きを変えるように振り回され、続いて衝撃が全身を襲う。
一瞬だけ気を失っていたのかもしれない、気づけば僕はねちゃりとした泥の中に倒れていた。
くん、くん、と手首のリボンがリズミカルに引かれている。体中の痛みに顔をしかめながら何がリボンを引っ張っているのか視線を彷徨わせた先に白いリボンのくくりつけられたちょうちょさんの足が見えた。
僕のリボンが上下に揺れなければ、手首を引くその力が伝わらなければそれを木の枝だと思ったかもしれない。
でも閉じた口からちょうちょさんの足を出したまま、ぎょろりとした視線を空へ向けもしゃもしゃと口を動かしているのは巨大な土色のカエルだったので。
(!!!)
良く噛み味わっているのだろうか永遠と思えるほどヒキガエルの咀嚼が続く。
その光景にどう考えてももうちょうちょさんの命が消えたのは明白で。
(ちょうちょさん……)
眼の前でヒキガエルの喉が大きく動き咥内のものを嚥下したのが見て取れた。
と、僕のリボンも強く引かれた!抵抗できずずるりと引かれた身体がヒキガエルに近づく。
(やばいやばいやばい)
僕は必死で手首のリボンを外そうともがくけど泥で滑る指先が結び目を解くことは出来なくて。
視線を感じながら最後のあがきに泥の上で引きずられないように踏ん張ろうとしてすべり、また泥の中に伏せる。
ひゅっと風切り音がしたかと思ったら僕の身体は宙に浮いた。
胴体にぐるりと巻き付いたヒキガエルの舌が僕を暗闇に放り込んだ。
暗闇の中で僕が感じれたのは冷たさと後悔だけ。
(ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
僕のせいで、ごめんなさい。
僕のせいで、ごめんなさい。
ごめんなさい)
優しいちょうちょさんが声を掛けると、どんっと僕の乗った蓮の葉に衝撃が伝わった。どうやら水中で話を聞いていたお魚さんがお手伝いしてくれるらしい。それからしばらくして蓮の葉はゆっくりと動き出した、どうやら無事茎を食いちぎってくれたようだ。
それからドレスのリボンをちょうちょさんの足に結びつけるように言ってくれたので意外に刺々しい足にじゃっかんびびりながら結びつけてしっかりと自分の手首にもそれを結わえた。
これでばっちり岸まで連れて行ってもらえる。
って気づいた、おぉう、この展開、まさに親指姫。
小さい頃に妹に読んでやった絵本でも困っていた親指姫を助けてくれたのはチョウチョと魚。その後は確かモグラにお嫁にされそうになったのをつばめが助けてくれて最後は妖精の王子様との結婚式でハッピーエンドだったはず。
あれ?でもどっかにカナブン出てこなかったっけ?一目惚れして親指姫をさらった挙げ句に周りに同調して親指姫をブサイクって罵って捨てた自分の意見ないです男。
最初の方だったかな?じゃあ僕カナブンに蓮の池まで連れてこられたの?そんでなんかのショックで記憶喪失?
ほんとに親指姫の世界に転生したの?
いやーでも僕男だしなぁ。ミニミーがあるしなぁ。妖精の王子様との結婚はあんまり嬉しくないかも。あ、あれか、男女逆転の物語かな。だと僕が妖精のお姫様を幸せにしてあげるのか?むむむ。今のところ前世の記憶も知識も役に立ちそうにないんだけど。大丈夫かな?
ゆっくりと進んでいく蓮の葉の上で前でリズミカルに動くちょうちょさんの優雅な羽を見つめる。
ひらりひらりと夕焼けの中舞う羽がとてもきれい。
さっきまで怖かった黄昏時がゆっくりと優しい夜の始まりに変わっていく。
「ねえ、娘さんはどうしてこの池に来たの?」
「それが良くわからなくて」
「羽もないのにあんな池の真ん中にいるからお迎えが来るのかと思って見てたんだけどこんな時間になるまで誰も来ないから、おせっかいかと思ったけど声をかけちゃったの」
「ありがとう。助かったよ」
「いいえ、私にできることがあってよかったわ。夜はちゃんとお家に帰って寝なくちゃ。夜の世界は危険に溢れてるってね。ほら、もうそこが岸。お家はどのへんなのかしら?」
そう言ったちょうちょさんがこちらを振り返って僕の様子を伺う。
その時、何かが視界の端から伸びてきてちょうちょさんの身体に巻き付くのが見えた。僕の目にはコマ送りのように突然の衝撃にバランスを崩したちょうちょさんの羽が乱れるのが映った。それから空中から水の上に叩きつけられたちょうちょさんの羽の上に水の玉が乗り、撥ね、散る。一瞬だけ水中に姿を消したちょうちょさんが今度は巻き付いた紐に空中に引き上げられたタイミングで僕の体も宙に浮いた。その瞬間ぎゅわんっと空中で向きを変えるように振り回され、続いて衝撃が全身を襲う。
一瞬だけ気を失っていたのかもしれない、気づけば僕はねちゃりとした泥の中に倒れていた。
くん、くん、と手首のリボンがリズミカルに引かれている。体中の痛みに顔をしかめながら何がリボンを引っ張っているのか視線を彷徨わせた先に白いリボンのくくりつけられたちょうちょさんの足が見えた。
僕のリボンが上下に揺れなければ、手首を引くその力が伝わらなければそれを木の枝だと思ったかもしれない。
でも閉じた口からちょうちょさんの足を出したまま、ぎょろりとした視線を空へ向けもしゃもしゃと口を動かしているのは巨大な土色のカエルだったので。
(!!!)
良く噛み味わっているのだろうか永遠と思えるほどヒキガエルの咀嚼が続く。
その光景にどう考えてももうちょうちょさんの命が消えたのは明白で。
(ちょうちょさん……)
眼の前でヒキガエルの喉が大きく動き咥内のものを嚥下したのが見て取れた。
と、僕のリボンも強く引かれた!抵抗できずずるりと引かれた身体がヒキガエルに近づく。
(やばいやばいやばい)
僕は必死で手首のリボンを外そうともがくけど泥で滑る指先が結び目を解くことは出来なくて。
視線を感じながら最後のあがきに泥の上で引きずられないように踏ん張ろうとしてすべり、また泥の中に伏せる。
ひゅっと風切り音がしたかと思ったら僕の身体は宙に浮いた。
胴体にぐるりと巻き付いたヒキガエルの舌が僕を暗闇に放り込んだ。
暗闇の中で僕が感じれたのは冷たさと後悔だけ。
(ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
僕のせいで、ごめんなさい。
僕のせいで、ごめんなさい。
ごめんなさい)
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