転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。

音無野ウサギ

文字の大きさ
2 / 19

2 後悔

しおりを挟む
「ひとまず陸に送ってあげる。ちょっと魚さん聞こえてたでしょう?よろしくね」

優しいちょうちょさんが声を掛けると、どんっと僕の乗った蓮の葉に衝撃が伝わった。どうやら水中で話を聞いていたお魚さんがお手伝いしてくれるらしい。それからしばらくして蓮の葉はゆっくりと動き出した、どうやら無事茎を食いちぎってくれたようだ。

それからドレスのリボンをちょうちょさんの足に結びつけるように言ってくれたので意外に刺々しい足にじゃっかんびびりながら結びつけてしっかりと自分の手首にもそれを結わえた。

これでばっちり岸まで連れて行ってもらえる。

って気づいた、おぉう、この展開、まさに親指姫。

小さい頃に妹に読んでやった絵本でも困っていた親指姫を助けてくれたのはチョウチョと魚。その後は確かモグラにお嫁にされそうになったのをつばめが助けてくれて最後は妖精の王子様との結婚式でハッピーエンドだったはず。

あれ?でもどっかにカナブン出てこなかったっけ?一目惚れして親指姫をさらった挙げ句に周りに同調して親指姫をブサイクって罵って捨てた自分の意見ないです男。

最初の方だったかな?じゃあ僕カナブンに蓮の池まで連れてこられたの?そんでなんかのショックで記憶喪失?
ほんとに親指姫の世界に転生したの?

いやーでも僕男だしなぁ。ミニミーがあるしなぁ。妖精の王子様との結婚はあんまり嬉しくないかも。あ、あれか、男女逆転の物語かな。だと僕が妖精のお姫様を幸せにしてあげるのか?むむむ。今のところ前世の記憶も知識も役に立ちそうにないんだけど。大丈夫かな?

ゆっくりと進んでいく蓮の葉の上で前でリズミカルに動くちょうちょさんの優雅な羽を見つめる。
ひらりひらりと夕焼けの中舞う羽がとてもきれい。

さっきまで怖かった黄昏時がゆっくりと優しい夜の始まりに変わっていく。

「ねえ、娘さんはどうしてこの池に来たの?」

「それが良くわからなくて」

「羽もないのにあんな池の真ん中にいるからお迎えが来るのかと思って見てたんだけどこんな時間になるまで誰も来ないから、おせっかいかと思ったけど声をかけちゃったの」

「ありがとう。助かったよ」

「いいえ、私にできることがあってよかったわ。夜はちゃんとお家に帰って寝なくちゃ。夜の世界は危険に溢れてるってね。ほら、もうそこが岸。お家はどのへんなのかしら?」

そう言ったちょうちょさんがこちらを振り返って僕の様子を伺う。

その時、何かが視界の端から伸びてきてちょうちょさんの身体に巻き付くのが見えた。僕の目にはコマ送りのように突然の衝撃にバランスを崩したちょうちょさんの羽が乱れるのが映った。それから空中から水の上に叩きつけられたちょうちょさんの羽の上に水の玉が乗り、撥ね、散る。一瞬だけ水中に姿を消したちょうちょさんが今度は巻き付いた紐に空中に引き上げられたタイミングで僕の体も宙に浮いた。その瞬間ぎゅわんっと空中で向きを変えるように振り回され、続いて衝撃が全身を襲う。

一瞬だけ気を失っていたのかもしれない、気づけば僕はねちゃりとした泥の中に倒れていた。
くん、くん、と手首のリボンがリズミカルに引かれている。体中の痛みに顔をしかめながら何がリボンを引っ張っているのか視線を彷徨わせた先に白いリボンのくくりつけられたちょうちょさんの足が見えた。

僕のリボンが上下に揺れなければ、手首を引くその力が伝わらなければそれを木の枝だと思ったかもしれない。
でも閉じた口からちょうちょさんの足を出したまま、ぎょろりとした視線を空へ向けもしゃもしゃと口を動かしているのは巨大な土色のカエルだったので。

(!!!)

良く噛み味わっているのだろうか永遠と思えるほどヒキガエルの咀嚼が続く。
その光景にどう考えてももうちょうちょさんの命が消えたのは明白で。

(ちょうちょさん……)

眼の前でヒキガエルの喉が大きく動き咥内のものを嚥下したのが見て取れた。

と、僕のリボンも強く引かれた!抵抗できずずるりと引かれた身体がヒキガエルに近づく。

(やばいやばいやばい)

僕は必死で手首のリボンを外そうともがくけど泥で滑る指先が結び目を解くほどくことは出来なくて。
視線を感じながら最後のあがきに泥の上で引きずられないように踏ん張ろうとしてすべり、また泥の中に伏せる。

ひゅっと風切り音がしたかと思ったら僕の身体は宙に浮いた。
胴体にぐるりと巻き付いたヒキガエルの舌が僕を暗闇に放り込んだ。

暗闇の中で僕が感じれたのは冷たさと後悔だけ。

(ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

僕のせいで、ごめんなさい。

僕のせいで、ごめんなさい。

ごめんなさい)


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

【8話完結】勇者召喚の魔法使いに選ばれた俺は、勇者が嫌い。

キノア9g
BL
勇者召喚の犠牲となった家族—— 魔法使いだった両親を失い、憎しみに染まった少年は、人を疑いながら生きてきた。 そんな彼が、魔法使いとして勇者召喚の儀に参加させられることになる。 召喚の儀——それは、多くの魔法使いの命を消費する狂気の儀式。 瀕死になりながら迎えた召喚の瞬間、現れたのは——スーツ姿の日本人だった。 勇者を嫌わなければならない。 それなのに、彼の孤独に共感し、手を差し伸べてしまう。 許されない関係。揺れる想い。 憎しみと運命の狭間で、二人は何を選ぶのか——。 「だけど俺は勇者が嫌いだ。嫌いでなければならない。」 運命に翻弄される勇者と魔法使いの、切ない恋の物語。 全8話。2025/07/28加筆修正済み。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。

春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。 チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。 
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。 ……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ? 
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――? 見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。 同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

処理中です...