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後日談 昔話 迷惑なわがまま魔法使い
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むかしむかしある国にそれはそれは美しい姫が三人、王子が四人おりました。
そしてその国にはとっても力の強い魔法使いがいたのです。
ですが魔法使いはその力を使ってわがまま放題、皆に迷惑をかけます。とっても困った国王は魔法使いを捕まえにたくさんの騎士を送りましたが騎士たちは皆カエルにされてしまいました。
魔法使いは王様にお姫様をお嫁さんによこせば騎士を人間に戻してやると言いました。
ですがお姫様たちは泣いて嫌がります。
「気に入られなかったら私達もきっとカエルにされてしまいます」
困ってしまった王様に一番末の王子様が言いました。
「僕が姉様たちの代わりに行きましょう。僕は男なのですからカエルにされるまえにきっと魔法使いをやっつけて見せましょう」
王様は王子様を愛していましたが、王子があまりにも自信満々に告げるので行かせることにしました。
王子は花冠をつけられたきれいな白馬に跨がり花嫁の白いドレスを身にまとい深い森の奥に住む魔法使いの家に向かいました。
お城で街で森へと向かう道でお見送りをした人はみな王子様の美しさに心を奪われました。そして王子様も騎士達のようにカエルにされてしまうのではと心配しました。
その国ではしばらく森の奥に消えた白い影の無事を祈る人の姿がそこここで見られました。
それから何日かしてその国に嵐が起こりました。
とっても強い風に牧場の子ヤギが飛ばされるほどの風が吹きました。
魔法使いの家のある森の方から嵐が起こったことにたくさんの人が気付きました。
嵐の後にはとても静かな青空が広がりました。
小鳥たちが歌いきれいな花が咲く暖かな日となりました。
それから魔法使いが皆に迷惑をかけることはもう二度とありませんでしたが、王子が戻ってくることもなかったのでした。
カエルになった騎士たちは日向ぼっこをしながらたまにゲコゲコと鳴いて過ごしましたとさ。
おしまい
※※※
街中の広場には子供向けの物語を語る男を囲む子どもたちが集まっていた。話し終わった男に子供達が次の話を口々にねだる。その近くで話を聞いていた人目を引くかわいい娘に男が声を掛けた。
「お待たせしました、面白かったです?」
「まぁまぁですね。よくあるお伽噺のように色々と美化されてますけど」
「わがままな魔法使いと王子の話ですか。子供に聞かせる話で昔からの話ですが、結局カエルになった騎士は救われないまま。王子も戻って来なかったし俺はあまり好きではないんです。隣の国の話がもとになっているらしいけど教訓はなんなんでしょう?自己犠牲は美しいってやつですか?」
「……でも王子はどこかで元気に過ごしていると思いますよ」
「ん?まあそうかもしれませんが」
「うん。美味しいご飯を食べながら元気にしてますよ。カエルのことは知らないですけどね」
そう言って笑う可愛い子の笑顔を眩しそうに見つめる騎士の顔には大きな刀傷があった。
「さーて今夜は何を作りましょうか?」
仲良く晩御飯の献立を考える二人の姿が市場の人波に紛れていった。
騎士は知らない眼の前の少年がその王子だということを。
王は王子の母を愛していたが出産時に母を死なせた王子を疎んでいたことを。
王子が女装を始めたのは父の愛を求めてだということを。
100年前の王族の本当の話は誰も知らない。
隣国の王都の森ではカエルがゲコリと鳴いている。
そしてその国にはとっても力の強い魔法使いがいたのです。
ですが魔法使いはその力を使ってわがまま放題、皆に迷惑をかけます。とっても困った国王は魔法使いを捕まえにたくさんの騎士を送りましたが騎士たちは皆カエルにされてしまいました。
魔法使いは王様にお姫様をお嫁さんによこせば騎士を人間に戻してやると言いました。
ですがお姫様たちは泣いて嫌がります。
「気に入られなかったら私達もきっとカエルにされてしまいます」
困ってしまった王様に一番末の王子様が言いました。
「僕が姉様たちの代わりに行きましょう。僕は男なのですからカエルにされるまえにきっと魔法使いをやっつけて見せましょう」
王様は王子様を愛していましたが、王子があまりにも自信満々に告げるので行かせることにしました。
王子は花冠をつけられたきれいな白馬に跨がり花嫁の白いドレスを身にまとい深い森の奥に住む魔法使いの家に向かいました。
お城で街で森へと向かう道でお見送りをした人はみな王子様の美しさに心を奪われました。そして王子様も騎士達のようにカエルにされてしまうのではと心配しました。
その国ではしばらく森の奥に消えた白い影の無事を祈る人の姿がそこここで見られました。
それから何日かしてその国に嵐が起こりました。
とっても強い風に牧場の子ヤギが飛ばされるほどの風が吹きました。
魔法使いの家のある森の方から嵐が起こったことにたくさんの人が気付きました。
嵐の後にはとても静かな青空が広がりました。
小鳥たちが歌いきれいな花が咲く暖かな日となりました。
それから魔法使いが皆に迷惑をかけることはもう二度とありませんでしたが、王子が戻ってくることもなかったのでした。
カエルになった騎士たちは日向ぼっこをしながらたまにゲコゲコと鳴いて過ごしましたとさ。
おしまい
※※※
街中の広場には子供向けの物語を語る男を囲む子どもたちが集まっていた。話し終わった男に子供達が次の話を口々にねだる。その近くで話を聞いていた人目を引くかわいい娘に男が声を掛けた。
「お待たせしました、面白かったです?」
「まぁまぁですね。よくあるお伽噺のように色々と美化されてますけど」
「わがままな魔法使いと王子の話ですか。子供に聞かせる話で昔からの話ですが、結局カエルになった騎士は救われないまま。王子も戻って来なかったし俺はあまり好きではないんです。隣の国の話がもとになっているらしいけど教訓はなんなんでしょう?自己犠牲は美しいってやつですか?」
「……でも王子はどこかで元気に過ごしていると思いますよ」
「ん?まあそうかもしれませんが」
「うん。美味しいご飯を食べながら元気にしてますよ。カエルのことは知らないですけどね」
そう言って笑う可愛い子の笑顔を眩しそうに見つめる騎士の顔には大きな刀傷があった。
「さーて今夜は何を作りましょうか?」
仲良く晩御飯の献立を考える二人の姿が市場の人波に紛れていった。
騎士は知らない眼の前の少年がその王子だということを。
王は王子の母を愛していたが出産時に母を死なせた王子を疎んでいたことを。
王子が女装を始めたのは父の愛を求めてだということを。
100年前の王族の本当の話は誰も知らない。
隣国の王都の森ではカエルがゲコリと鳴いている。
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