転生したら親指王子?小さな僕を助けてくれたのは可愛いものが好きな強面騎士様だった。

音無野ウサギ

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12 給食着出すの忘れて怒られるタイプ?

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レオさんに料理を作りはじめて数日がたった。帰ってきたら美味しいご飯が食べれるって嬉しいと話すレオさんを寝たふりしつつ細目でこっそりうかがう僕も毎日心がほくほくあったかい。

(なんか家族って感じ)

こっそり確認したその顔は仕事明けだというのに疲れなんて微塵も感じさせない様子だったよ。

(家族かぁ)

この世界にいるはずの家族は僕がいないことで心配してたりしないんだろうか?

(きっと心配してるんだろうなぁ)

前世の僕が一日でもいなくなれば両親はもとより妹も大騒ぎで探してくれたはず。

(ごめんね、覚えてない家族達)

かけらも思い出せないこの世界の家族を思ってちょっとしんみりしつつキッチンで小麦粉をバターと砂糖と混ぜ合わせる。今日はデザートにリンゴのクランブルケーキを作成中。イースト生地の上にリンゴを並べてクランブルをバラバラーっと広げてオーブンに入れる。

「美味しくなーれ。レオさん元気になーれ!」

いつものように中二病的おまじないで料理の仕上げ、やりきったって自己満足だけどね。

このケーキ、型がいらないからお手軽だし、フルーツたっぷりで健康的だしね。余っても紙に包めばお弁当がわりに持っていけるし。

「今日も美味しいって言ってくれるかなぁ」

塩漬け肉と豆のスープを低温のオーブンにいれて保温。

身体が小さくなったら白いドレスからピンクのドレスに着替える。よく考えたら毎回ソファカバーまきまきしなくても身体が小さいうちに白いドレスにきがえればいいんじゃない?って気づいたのはこの家にきてしばらくしてからのこと。

大きくも小さくもなる白いドレスを着っぱなしにしたいところだけど最初にピンクのドレスに着替えさせられてたわけだからその印象を変えるのはまずいだろうと思って毎回律儀にベッドにはいる前にはピンクのドレスに着替えてるんだ。小細工をろうする僕。なんとなく生きてるのはばれているだろうけどサイズが変わることは気づいてないはず。

(呪いの人形コースは避けたいもんね)

その日もレオさんは嬉しそうにご飯の感想を聞かせてくれたよ。職場でも仕事の合間に持っていったケーキを食べれて嬉しいって。「家政婦さんにお礼をしないとなぁ」だって。

そこは僕にしてほしいけど、知らないんだからしょうがないね。と今日も僕は寝たふりをかますのだった。

※※※

数日後。キッチンにきた僕は机におかれたメモを見て頭を抱えた。

確かにちょっと多めにケーキを焼いた、お弁当がわりにもできるヘルシーなバナナケーキ、ニンジンケーキ、ケーキじゃないけどキッシュ系も作った。

メインのスープはオーブンに。デザート系は持ち運びできるものをほぼ毎日テーブルに置いておいたよ。

鶴の恩返しならぬ親指王子の恩返しってね。

でもさぁ、まさか家政婦さん宛のメモに12人分のケーキをお願いしたいって書かれるとは思わないじゃん。

毎回職場に持っていったものを羨ましがられてたから同じ隊の皆にふるまいたいって。

明日、誕生日だからお願いしたい。って。



「あーっもう!」

急に言われても困るんだけど!!

(僕には制限時間ってものがあるんだけど!!)

大きな身体でいられるうちに出来ることには限りがある。でも間に合わなくて中途半端な状態でキッチンを放置したらレオさんもさすがに家政婦さんの仕業じゃないと気づくだろう。

まずは泥棒を疑うレオさん。そして騎士達の調査。からの外部からの侵入はない、と証明されて……

この屋敷で唯一の怪しいものは、僕。

(魔法使いの家で拾った呪いの人形コース……)

王様お抱えの魔法使いとかそういうのに渡されて、身体中いじくり回されての研究材料に……

(ひぃぃぃ!!!!!!!!)

脳裏でマッドサイエンティストチックな魔法使いが僕のことをおいでおいでする。

「くぅぅ!やってやろーじゃないか!!」

まずは!!
食料庫の中にはいって確認。小麦粉!チーズ!塩漬け肉!卵!ハーブ!野菜!

うーん、持っていきやすくてちょっと見栄えして美味しくてお腹にたまるもの、イズ 何?

チッチッチ、チーン!!

はい、決定。

まきまきピザパンです!

ケーキじゃない?そういうこと言うなら自分で作って?いい?心の中のマイマザーが真顔で呟く。

よし!そうと決まればめっちゃ急いで生地をこねるよ。小麦粉、水、イースト、砂糖にオイル。
こねこねこねこねこね。
ビターンビターンビターン!
こねこねこねこねこねこねこね。
まるめてー。
あったかいオーブンの側で生地をねかせてー
その間に玉ねぎ切って、チーズも切って。塩漬け肉も小さく切る!
切る!
切る!
きぃぃるぅぅぅ!!

平べったくしたパン生地にざらざらざらーって切ったものを乗せる!

そして巻く!
パン生地をロールケーキを作る要領で、巻く!
巻く!
巻く!
まぁぁき終わったら、

再び切る!
イエス!渦巻き!イェイ渦巻き!!
ピンクのお肉と黄色いチーズがお顔を覗かせてかわいいぞ!

ごめんね、かわいすぎて寝かせられない。
君の罪さ。
なーんて茶番しながら天板にならべ二次発酵はスキップ。
大丈夫。信じてるよ!君なら出来る。
君はこのキッチン始まって以来の最高のピザパン!

「おいしくなーれ。笑顔になーれ。素敵な誕生日になーれ」

そして焼く!!オーブンあとは君に任せた!!

そして待つ!!きれいに膨らんでこんがり美味しく焼きめがつくのを信じて待つ!!

チクタクチクタクチクタクチクタク。ボーンボン!
ワンミシシッピー トゥーミシシッピー スリーミシシッピー
そろそろじゃない?

重たい鉄の扉を腕までカバーしてくれるキッチンミトンをはめて開ける。

ぼふっと蒸気を含んだ熱い風が僕の顔を焼く。
火傷をしないように引っ張り出して……

ひゅー。できたぁ!!

僕の想像通りカタツムリのお家みたいに形良くぐるんと巻かれたピザ生地たちは倍近く大きくなり綺麗な艶のある焦げ目に食欲をそそるお肉とチーズの香りをお供に登場した。

(めちゃめちゃ美味しそうー)

なんとか12人分の渦巻きまきまきピザを作り終えた僕は思った。

(レオさんぜったい日曜日の夜にお母さんに洗濯物だして怒られるタイプだろ……)

いつもの倍疲れた僕は部屋に戻り身体が親指サイズになったとたんベッドに倒れ込んだ。

夢の国へ旅立ちながら考えたのは

(あ、スープも何も今日の分がないや)

ってこと。

その日昼寝から目を覚ますと渦巻きまきまきピザはなくなってたし、レオさんももういなかった。

「お誕生日おめでとう」

誰もいない家で僕の歌うハッピーバースティの歌が空気にとけた。
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