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2話
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「ハッハッハッ!よろしく頼むぞクロキ君!」
目の前でアメコミヒーロー並みの高笑いをしているのは明るい茶髪を短く刈り込んだ二十代後半の伊達男だ。ライダースジャケットを着こんだ大柄なこの男こそ仕事先の研究所で俺と死闘を繰り広げた特撮野郎その人である。
「ああ、悪夢だ。ボスめこれ以上奇人変人を集めてどうするんだか」
今俺たちは異端者のアジトにいる。
こうなってしまったのはあの時の電話を取ってしまったのが運のつきだったんだ。今度から絶対ボスの番号は着信拒否にしとこう。
正義の鉄槌という声と共に視界が真っ白に染まる。ダメージはどのくらいだろうか?『高速治癒』でカバーしきれるのか?落ち着け冷静に考えるんだ。
俺のダメージは『高速治癒』に任せて無重力と身体強化で志織さんを抱えて『千里眼』で脱出経路をシミュレート、これしかない!
視界が段々と戻ってくる。もう一か八かやるしか…な……い?
「なんで…」
重症を覚悟していたのに俺は無傷だ。代わりにあのクソトカゲは木っ端微塵になっている。
何でだ?クリアノートはその気になれば俺ごと攻撃できた筈なのに。
俺が呟いたのを聞いてか奴はゆっくりとこちらを振り向いた。
「仲間のために全力になれる奴は悪党だろうと良い奴だ!!!」
特撮野郎が力強い声で断言する。思わず唖然としてしまった。
単純なんだか馬鹿なんだか…でも何だかこういう清々しい程の正義ってのは悪い気がしないな。ただ、これだけは言わせて貰おう。
「ありがとな特撮野郎」
互いの視線が交わる。もう敵意は感じられない戦う気はないようだ、まぁそれは俺も同じだしな。
『プルルルル』
懐から通信端末を取り出す。画面の表示を見るとボスからだった。
「はい、クロキです」
『サマエルから任務完了の報告があった。アジトに帰還しろ。あと目の前にいる男もアジトに案内してやれ』
「は!?それって勧誘するってことですか!!?」
なんでこんな奴を、それにこれ以上濃い奴はいらないっての!
『…何か問題でもあるのか?』
くそっ、断れそうにないじゃないか。
「いえ、了解しました」
ボスはご苦労と一言いうと通話を切った。
「おい、クリアノートだっけ?この後時間あるか?」
特撮野郎は無言でサムズアップした。…殴りてぇ。
廊下を歩きながら特撮野郎に軽く事情を話す。この異端者は特殊な人材を集めて仕事をしていること。ボスがおそらくお前を勧誘したがっていること。
ボスの部屋のドアをノックする。
「ボス、クロキです。クリアノートを連れてきました」
中から一言「ご苦労」とだけ聞こえた。
「じゃあな、特撮野郎。ほらボスが中で待ってる」
特撮野郎はニヤリと笑うと俺のほうに視線を向けた。
「おう!あと俺の名前はアキラだ、よろしくな魔王」
そう言って特撮野郎はボスの部屋に入っていった。
さて、俺は志織さんのお見舞いにでも行くかな。幸い怪我は『高速治癒』であらかた治療できたから部屋で安静にしているはずだ。
スキル『亜空間』を発動する。目の前に黒い靄が発生するその中に手を入れて目的の物を取り出す。エルフの森で採れる果物を幾つかかごにいれて用意する。
さて、さっそく行きますかね。
志織さんの部屋のドアを軽くノックする。なかから「どーぞー」と気の抜けた返事した。
ドアを開けて中に入るとピンクピンクピンク。部屋全面がピンクで溢れていた。家具に壁紙、そしてベッドにはたくさんのぬいぐるみが溢れていた。
「志織さん、大丈夫?果物持ってきたよ」
志織さんはベッドでパジャマのままボーッとしている。ちなみにパジャマはひよこの柄だ、可愛い過ぎだろ!
てかこの人寝ぼけてないか?
果物をサイドテーブルに置いて志織さんの顔をジーと覗き込む。
お、段々と目が覚めてきた。それと一緒に志織さんの顔がゆでダコのように真っ赤に染まっていく。
おお、人間こんなに急に赤くなるのか。
「おはよう、志織さん具合はどう?」
「きゃああああ!!!!!」
あれ、なんで悲鳴あげるの!?
「なんでクロキが!あたしの部屋にいるんだ!!?」
「そんな志織さんが入れてくれたんだよ」
志織さんは俺が部屋にいるのでパニックになっているようだ。
「それより志織さんの部屋って志織さんと同じでずいぶん可愛いんだね」
俺がニッコリ笑いかけると志織さんはアワアワと慌てて手の中に何故かステッキを出現させた。
え?まさか……冗談だよね?
頬を冷たい汗がたらりと流れる。
「出てけぇぇぇぇぇ!!!!!!」
志織さんがさらに真っ赤になり涙ぐみながらステッキを思いっきり振るう。てか本気でやりやがった!!?
「ぐへえええぇぇぇ!!!!」
俺は押し潰されたような声をあげてハートのシャワーに廊下まで押し流された。
お見舞いに来たのにこの扱いは酷くないか?てか肋骨が三本も折れたんだけど。
まあ、志織さんの意外な一面を見れたことだしよしとしますか。あ、『高速治癒』発動、危ない危ない忘れるとこだった。
目の前でアメコミヒーロー並みの高笑いをしているのは明るい茶髪を短く刈り込んだ二十代後半の伊達男だ。ライダースジャケットを着こんだ大柄なこの男こそ仕事先の研究所で俺と死闘を繰り広げた特撮野郎その人である。
「ああ、悪夢だ。ボスめこれ以上奇人変人を集めてどうするんだか」
今俺たちは異端者のアジトにいる。
こうなってしまったのはあの時の電話を取ってしまったのが運のつきだったんだ。今度から絶対ボスの番号は着信拒否にしとこう。
正義の鉄槌という声と共に視界が真っ白に染まる。ダメージはどのくらいだろうか?『高速治癒』でカバーしきれるのか?落ち着け冷静に考えるんだ。
俺のダメージは『高速治癒』に任せて無重力と身体強化で志織さんを抱えて『千里眼』で脱出経路をシミュレート、これしかない!
視界が段々と戻ってくる。もう一か八かやるしか…な……い?
「なんで…」
重症を覚悟していたのに俺は無傷だ。代わりにあのクソトカゲは木っ端微塵になっている。
何でだ?クリアノートはその気になれば俺ごと攻撃できた筈なのに。
俺が呟いたのを聞いてか奴はゆっくりとこちらを振り向いた。
「仲間のために全力になれる奴は悪党だろうと良い奴だ!!!」
特撮野郎が力強い声で断言する。思わず唖然としてしまった。
単純なんだか馬鹿なんだか…でも何だかこういう清々しい程の正義ってのは悪い気がしないな。ただ、これだけは言わせて貰おう。
「ありがとな特撮野郎」
互いの視線が交わる。もう敵意は感じられない戦う気はないようだ、まぁそれは俺も同じだしな。
『プルルルル』
懐から通信端末を取り出す。画面の表示を見るとボスからだった。
「はい、クロキです」
『サマエルから任務完了の報告があった。アジトに帰還しろ。あと目の前にいる男もアジトに案内してやれ』
「は!?それって勧誘するってことですか!!?」
なんでこんな奴を、それにこれ以上濃い奴はいらないっての!
『…何か問題でもあるのか?』
くそっ、断れそうにないじゃないか。
「いえ、了解しました」
ボスはご苦労と一言いうと通話を切った。
「おい、クリアノートだっけ?この後時間あるか?」
特撮野郎は無言でサムズアップした。…殴りてぇ。
廊下を歩きながら特撮野郎に軽く事情を話す。この異端者は特殊な人材を集めて仕事をしていること。ボスがおそらくお前を勧誘したがっていること。
ボスの部屋のドアをノックする。
「ボス、クロキです。クリアノートを連れてきました」
中から一言「ご苦労」とだけ聞こえた。
「じゃあな、特撮野郎。ほらボスが中で待ってる」
特撮野郎はニヤリと笑うと俺のほうに視線を向けた。
「おう!あと俺の名前はアキラだ、よろしくな魔王」
そう言って特撮野郎はボスの部屋に入っていった。
さて、俺は志織さんのお見舞いにでも行くかな。幸い怪我は『高速治癒』であらかた治療できたから部屋で安静にしているはずだ。
スキル『亜空間』を発動する。目の前に黒い靄が発生するその中に手を入れて目的の物を取り出す。エルフの森で採れる果物を幾つかかごにいれて用意する。
さて、さっそく行きますかね。
志織さんの部屋のドアを軽くノックする。なかから「どーぞー」と気の抜けた返事した。
ドアを開けて中に入るとピンクピンクピンク。部屋全面がピンクで溢れていた。家具に壁紙、そしてベッドにはたくさんのぬいぐるみが溢れていた。
「志織さん、大丈夫?果物持ってきたよ」
志織さんはベッドでパジャマのままボーッとしている。ちなみにパジャマはひよこの柄だ、可愛い過ぎだろ!
てかこの人寝ぼけてないか?
果物をサイドテーブルに置いて志織さんの顔をジーと覗き込む。
お、段々と目が覚めてきた。それと一緒に志織さんの顔がゆでダコのように真っ赤に染まっていく。
おお、人間こんなに急に赤くなるのか。
「おはよう、志織さん具合はどう?」
「きゃああああ!!!!!」
あれ、なんで悲鳴あげるの!?
「なんでクロキが!あたしの部屋にいるんだ!!?」
「そんな志織さんが入れてくれたんだよ」
志織さんは俺が部屋にいるのでパニックになっているようだ。
「それより志織さんの部屋って志織さんと同じでずいぶん可愛いんだね」
俺がニッコリ笑いかけると志織さんはアワアワと慌てて手の中に何故かステッキを出現させた。
え?まさか……冗談だよね?
頬を冷たい汗がたらりと流れる。
「出てけぇぇぇぇぇ!!!!!!」
志織さんがさらに真っ赤になり涙ぐみながらステッキを思いっきり振るう。てか本気でやりやがった!!?
「ぐへえええぇぇぇ!!!!」
俺は押し潰されたような声をあげてハートのシャワーに廊下まで押し流された。
お見舞いに来たのにこの扱いは酷くないか?てか肋骨が三本も折れたんだけど。
まあ、志織さんの意外な一面を見れたことだしよしとしますか。あ、『高速治癒』発動、危ない危ない忘れるとこだった。
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