赤ちゃんの夜泣き

赤ちゃんの夜泣き

夜の静寂が町を覆っていた。月明かりが小川の上でキラキラと輝いている。この小さな町には、人々が穏やかに暮らしている家が点在している。だが、夜のこの時間には、ひとつの家で特別な音が響いていた。それは赤ちゃんの泣き声だ。

加奈は初めての母になったばかりの27歳。愛する夫とともに、この町で新しい家族の歴史を刻んでいた。しかし、その赤ちゃん、小太郎は夜ごと泣いていた。

「どうして、夜になると泣くのかな」と、加奈は心の中でつぶやく。夫は昼間の仕事が忙しく、夜は深い眠りに落ちてしまう。そのため、小太郎の面倒を見るのはほとんど加奈だった。

ある夜、加奈は突然の閃きを得る。彼女は小太郎を抱きかかえ、家の裏庭へと歩いていった。月が綺麗に輝いており、夜風が心地よく感じた。そこで、彼女は小太郎に向かって、祖母から聞いた子守歌を歌い始める。

やがて、小太郎の泣き声は小さくなり、彼の目はゆっくりと閉じていった。加奈は静かに微笑んで、優しく彼を揺り動かした。

それからの夜、加奈は毎晩、小太郎を裏庭に連れて行き、子守歌を歌って彼を寝かしつけた。すると、小太郎の夜泣きはだんだんと少なくなっていった。

町の人々も、その秘密の方法を知りたくて、加奈の家を訪れるようになった。そして、この小さな奇跡は町の伝説となり、赤ちゃんたちの夜泣きが減っていった。

加奈は、子守歌の力と、月明かりの下での穏やかな時間が、赤ちゃんの心を落ち着かせるのだと感じていた。そして、彼女は自らの経験をもとに、新しい母親たちにその方法を伝え続けた。

この町には、特別な音、赤ちゃんの泣き声が夜に響くことはもうなかった。