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第五章:ロングヘアーとの和解

ロングヘアーとの和解

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あれから1年。梓の髪は背中の下まで伸び、彼女のアイデンティティの一部となっていた。日々のケアの大変さや、スタイリングの難しさは変わらないが、梓はそれを楽しむ方法を見つけていた。

菜摘にアドバイスを求めることも多く、月に1度の美容室の訪問は、梓にとっての楽しみとなっていた。カットやトリートメントを通じて、菜摘との会話はロングヘアに関するものだけでなく、日常の出来事や趣味、夢など、さまざまな話題で弾んでいた。

涼介とも、頻繁にカフェや図書館で会うようになり、二人の間には深い信頼感が生まれていた。涼介は梓のロングヘアを「君の魅力の一部」と言って、彼女を応援してくれた。

ある晴れた日、梓は真希と公園でピクニックを楽しんでいた。真希が言った。「梓、君の髪、本当に美しいよ。ショートカットの頃の君も大好きだったけど、今の君もとっても魅力的。」

梓は微笑み、真希の言葉に心から感謝した。彼女は過去の自分と、現在の自分を比べることなく、自分の髪の長さやスタイルを心から愛することができるようになっていた。

ロングヘアになったことでの変化は、外見だけでなく、内面にも表れていた。新しい髪型との葛藤を乗り越え、梓は自分を受け入れる強さを手に入れたのだった。そして、その日、彼女は自分の心の中で、ロングヘアとの和解を果たした。
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