青いsquall

黒野 ヒカリ

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高島さんと会った京ちゃん

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 目の前にいる高島さんに私の体が震える。

 ぎこちなく動く首で顔を京ちゃんに向けると、キョトンした表情を浮かべていた。

 でも何かに気が付いた京ちゃんは、私と高島さんを交互に見るとニヤリと笑った。

 そしてドリンクが陳列された棚まで行くとお茶を手に取り、一目散に高島さんがいるレジまで駆け出す。

 こうゆう時の京ちゃんは鋭い。
 直ぐにレジに立つ人が高島さんだと分かったのだろう。

 「ちょっと京ちゃん待って!」

 私は京ちゃんに駆け寄り、手を掴んだ。

 「あれ?ナミちゃん、今日はおはようじゃなくてこんにちわだね」

 すでにレジまで来ていた私に高島さんはそう言って笑みを向けた。

 「あっ、こんにちわですね」

 「ちょっと、私もいるんだけど?」

 話に割って入る京ちゃんはニタニタして、とても楽しそうだ。私で遊ぶのは本当に止めてほしい。
 京ちゃんはこんな時、何をするか分からない。

 何かとんでもない事を言い出したりはしないかヒヤヒヤして鼓動が早くなり、私の額から垂れた冷や汗がツツッと頬を伝う。

 「うちのナミがいつもお世話になっております。私は友達の京子です。よろしくお願いします」

 予想外な京ちゃんの丁寧な言葉に高島さんは「高島です。こちらこそよろしくお願いします」と返した。

 「ほら、早くお金払って行こうよ」

 そう言って京ちゃんの手を引く。
 私は京ちゃんを連れてさっさとここから立ち去りたい。
 高島さんが京ちゃんを見て、好きにならないか気が気じゃない。

 「もぉ何よナミ、折角ナミお気に入りの高島さんに会えたのに」

 「なっ!」
 
 それは爆弾発言だよ、と言いたかったが言えない。やっぱり京ちゃんは嫌な期待は裏切らない。色々とやらかしてくれる。

 京ちゃんは鞄からスマホを取り出すと会計を済ませ、高島さんからお茶を受け取った。

 「それでは高島さん、また」

 「はい、また、ナミちゃんもまたね」

 笑顔の高島さんに頭を下げると京ちゃんの手を引き、出口を目指す。

 店内を出た所で振り返り、私は高島さんに向けもう一度頭を下げた。
 高島さんは私を見て手を上げると苦笑いを浮かべ、一瞬視線を京ちゃんに移した気がした。

 「本当に止めてよ京ちゃん!」

 コンビニを離れ、私の強めの言葉にも京ちゃんはあっけらかんとしている。

 「これでナミの気持ちを知って高島さんが告白するかもよ」

 京ちゃんはそんな事を言ってるが無責任だと思う。
 だけど本当に高島さんに告白されたら飛び上がって喜び、そしてお礼に京ちゃんに何でもご馳走する。

 「これでどうなるか…」とブツブツする京ちゃんに振り回された私はタメ息を吐き駅に向かった。
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