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第一章 始まり
鳴り響く笛【3】
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「――――――じゃあ、作戦通りに」
己の背に居る武装した男達に指示を出し、ゼンは愛刀の双剣に片手を添えながら音もなく包囲している建物の傍へと寄った。
そして、傍へ寄った建物の壁に耳を当てて中の様子を伺う。
――――だが。
「……………………っ! まさかっ…………!」
ゼンはせっかく先ほどまで静かに行動していたにもかかわらず、勢いよく建物の入り口に周り、その入り口を蹴破って双剣を素早く引き抜き構えながら中へと飛び込んだ。
「…………やられた」
「――――――ゼン殿! いかがなされた!?」
続いて、ゼンの様子がおかしかったので合図を待たずに、押し寄せる波のように周りを囲み武装していた男達がドゥースを先頭に、それぞれ所持していた武器を構えながら入口へと駆け付けた。
だが、せっかく駆け付けたドゥース達の間をするりと抜けながらゼンは叫ぶ。
「罠だ! 嵌められた! 皆、飛竜へ急げ!!」
「なっ!?」
*********
「じゃあ、リンタロウは、ここへは帰ってこないんだな」
目を合わせようとしないシャルル君の瞳が少しずつ、少しずつ潤んできている。
「でもね、シャルル君。俺…………、俺、皆の家族に、なってもいいかなあ」
「…………リン」
潤んで揺らいでいたシャルル君の瞳が、今言った俺の言葉でぴたりと止まった。
シャルル君のとても素直な反応に、思わずクスリと俺は笑顔になる。
やっぱりこの子は素直で優しい良い子だ。
たまに出てくる発言や悪戯はちょっといただけないがな。
「俺、皆の家族になりたい。旅に出ても、ここにいつでも帰ってきてもいいかなあ……」
「……ぐすっ、お、俺が兄上だからなあ!」
「なんでだよ! そこは俺が兄上だろ!」
どうやらいつものシャルル君に戻ってくれたみたいでよかった。
それに、今のお返事は家族になるの許してくれたってことでいいのかな。
「おぉーい! シャルルにリーン! 何してるんだよー!」
「リンにいちゃー! ルールルルルル!」
「あ! ごめんごめーん!」
俺とシャルルは慌ててベルを鳴らし、牛を誘導し集める作業に再び取り掛かった。
だが、その時。
ビィイイイイイイイイイイ!!!!!
「え!? 何? 笛??」
突如鳴り響く大きな笛の音。
かなり遠くから聞こえてくるので、俺はどこから聞こえてくるのか全然分からなかったが、双子お兄ちゃんズが二人して同じ方向を勢いよく振り向いたのでつられて俺も同じ方向を見る。おそらくこの先に音の発生源があるのだろう。
でも、この方向は確か…………。
「どうしたの? この音、何の音?」
鳴り続いている笛の音の正体が何なのか傍に居るシャルル君に聞いてみたのだが、シャルル君は真剣にサロモン君と同じ一点の方向をじいっと見つめて返事はしてくれなかった。
そして、俺がシャルル君にちょうど質問し終わった後に笛の音がスッと消える。
「…………本当に、どうし」
ビィイイイイイイイイイイ!!!!!
再びけたたましく鳴り響く笛の音。
「「――――っ! 逃げるぞ!!!」」
「えっ!?」
シャルル君とサロモン君は近くに居た牛のお尻を鞄から取り出した鞭で叩いて、いつもより激しくベルを鳴らし牛を走らせた。
「サロモン! プティを!」
「わかってる! プティ! おいで!」
牛を走らせたサロモン君はプティ君の、シャルル君は俺の手を握ると屋敷の方向へと走り出した。
「ちょっ! ちょっと! どういうこと!?」
「今の笛はベル兄上だ! 一回鳴らせば牛の脱走! 二回鳴ったら!!」
「鳴ったら!?」
「――――――――っ敵だ!!!」
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