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本編
30:侯爵様の溜飲
しおりを挟む何とも言えない結末だったな。
ヒロインとメインヒーローが自爆オチって、乙女ゲームならお粗末なバッドエンドだろ。……俺は笑いが止まらんけどな。
何せリディの襲撃は帝国皇子にも目撃されたので王家も隠蔽できず、公的に迷惑罪と傷害罪で逮捕されたんだよ。あ、あと器物破損もだ。
ルシャードは意気揚々と事情聴取に協力し、国の失態を厳しく咎めた。
慌ててやって来たリディの養父、ベジエ男爵は常識人だったみたいで平身低頭する姿に同情した。
あの後お嬢様はすぐにマレクラルス邸に帰り、何故かルシャードもついて行きそのまま泊まった。
暫く侯爵様とルシャードが話をしていたらしいので、婚約話でも進めていたんじゃないかと推測。
俺や侍女さん達は離宮からの引っ越し作業に追われて侯爵邸に戻れたのは二日後だった。
侯爵邸に戻るとすっかり邸に馴染んだルシャードに出迎えられる。婿養子か!とツッコミ入れたくなるほどの掌握ぶりに言葉が出なかったわ。
侯爵夫妻とルシャードは元々お嬢様の帝国留学時代に会っているので知らない仲ではないのだが、そのシャディが第三皇子だと知った時は腰を抜かしそうなほど驚いたとか。当時ルシャードは身分を隠し領主の遠縁の子と名乗っていたそうだ。
そう密告してくれたのは弟のジュール坊ちゃん。
どうやらルシャードが気に入らないらしい。
大好きな姉上を奪う敵だからな。その気持ちは分からんでもないが、諦めて気持ちを切り替えた方が楽だぞと言いたい。何せアルベールより遥かにハイスペックで、しかもフェリシテお嬢様に長年片思いをしていた強者だ。何があっても娶る気だろうよ。
落ち着いたところで俺は侯爵様に呼び出された。
大体のことは報告していたが、詳細はこれからだ。
「あの男爵令嬢は他の三人とも関係していたと言うのか?それがバレてアルベール殿下が女性不信に?」
侯爵様は目を丸めて俺の話に驚愕する。
「えぇ純潔は守られていたそうですが、クロヴィス様のみの証言ですので他の二人がどうだったかは確認できていません」
「うむ。特にギャロワ伯爵の長男は手が早いとの噂だからな。まぁあそこは早々に手を打って大人しくしてやったが」
悪い顔で微笑う侯爵様。
攻略キャラでチャラ男担当のエデルは特に重要な家柄ではないと判断され、お嬢様の断罪後すぐに伯爵領の大口取引を退いて経済制裁をしていた。
ギャロワ伯爵は自領に戻り挽回するべく奔走し、長男のエデルも補佐のために王都を去っていた。
偶然が重なり謹慎させた脳筋騎士のマルセルは、第十騎士団に配属されエリートコースからは外れ、輝かしい出世は遠回りとなるだろう。
アルベールは女性不信で暫く婚姻を考えられないと陛下に懇願したらしく、同情した陛下はフェリシテお嬢様との婚約を王子有責で解消したそうだ。当然、侯爵家には多額の賠償金が支払われるとか。
リディはすぐに有罪判決が下され、貴重な聖属性持ちにも拘らず地方の修道院で監視付きの生活を命じられた。
前世の日本みたいに裁判に何年も掛かることなく、目撃証言が明らかな犯行は判決も早い。
聖属性持ちは癒しの魔法を操れる。
神職者がよく祝福と言って施す魔法は、リラクゼーション効果のある魔法らしく強く使うと睡眠になる。
実はこれも精神干渉魔法の一種であり、資格のある神職者しか使用できない魔法であった。
リディはそれを利用し相手の思考を誘導するという、中々高等な技術で攻略キャラを落としたみたいだ。いわゆる催眠術に近いスキル持ちだと把握。
色々難しい説明されたけど俺の脳みそじゃ理解するのに何回転生しても足らんわ。
残念なのは精神干渉魔法は現行犯もしくは魔力痕跡証明なので、アルベール達に掛けていたとしても証拠がなく罪を問えなかった。
けれども勾留中にリディは守衛に脱獄を促し逃亡しかけた事で、余罪も重なる。魔法制御装具を付けられ、彼女は一生監視される生活になるだろう。
「それでセブ。ペリゴール子息はどうなった?」
あ……。
クロヴィスか。
「ん?どうしたセブ。彼にも何か制裁を加えたのではないのか?」
他のキャラは偶然や自滅で図らずもダメージを与えた結果になった。
だがクロヴィスに至ってはフェラまでしちゃったからな。寧ろご奉仕した俺。
俺は脂汗を垂らしながら沈黙する。
「まさか何もしていないことは、ないだろう?セバスティアン?」
フェリシテお嬢様と同じ、侯爵様のアイスブルーの瞳が俺を突き刺す。
ヤダ怖い。睨んでる!目を合わせたら死んじゃう!
俺は視線を外し、
「こ、これから…です」
「ほぅ?いつ、何を、どうするのかね?」
静かに俺を追い詰める侯爵様の口元が歪み、目が笑っていない。
「一週間以内には、ご報告いたします」
「そうか。期待しているぞ、セバスティアン?」
パタンと閉じられた扉の外で、俺は激しく撃沈した。
怖かったぁぁぁーーー!
マジで俺を射殺す勢いだったもんな!
正直に話してたら俺、息してねーよな?
だって俺がした事と言えばクロヴィス誘惑して味方につけただけだもんな。
しかもイジドールが俺の情報隠してくれたお蔭で自由に動けただけの話だったし。
実はマルセルの実家やアルベール個人からも同じく俺に関する調査依頼が諜報部のイジドールへ来ていたらしく、全てクロヴィスと同じ返答をしてくれた。まじイジドール感謝だ。
しかしクロヴィスの件は参ったな。
何の成果も得られませんでしたー!なんて土下座したって通用しないだろうしさー。
トボトボと廊下を歩き、これからどう動こうかと広い邸を散歩する。
「セブ」
良い声に振り向けば、良い男ヴィラード。
ルシャードが滞在しているということはこの男もいるのは当然だったが、この邸にヴィラードが歩いている不自然な光景にどきっとする。いや、何もしないけどね?流石に侯爵邸でイチャコラはできないし。
チラリと周囲を見ると、ヴィラードを見つけて頬を染める侯爵邸のスタッフ達。特に男性陣からの熱い視線が目立つように思える。
ナニが残念でなければ選び放題のイケメンだから当然だな。
「あぁご機嫌ようヴィラード様。何か不都合等ありましたら遠慮なく仰って下さい」
俺はこの邸の侍従らしく振る舞った。
「不都合はない。ルシャード殿下も快適に過ごされている……それよりも少し話をしたいのだが、良いだろうか?」
「構いませんよ」
俺は侍従スマイルを貼り付けて中庭へ促した。
古くから王家に仕えるマレクラルス侯爵邸の中庭はとても広く、細部に侯爵夫人の拘りもある美しい庭園だ。
密談するには丁度いい見晴らしで、俺達はゆっくりと歩きながらお喋りをする。
そしてヴィラードは声のトーンを落として俺に尋ねる。
「クロヴィス殿の件は、どうするつもりだ?」
「あーそれねー。今丁度それを考えててさー……って、ヴィル?まさか…」
俺は気付いて彼の顔を見上げれば、少し気まずそうに視線を外すヴィラード。
おい。
またか!
アンタまた俺を尾けてたのかよ!
侯爵様との会話全部聞いてたのね!
ヤダもー!この変態!ムッツリスケベ!エロ雄っぱい!
「アンタここまで来てやるこたねーだろ…」
「すまない…」
謝るならやんないで!
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