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第三章 愛の形

悲願する薔薇乙女

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今回はイベントシーン的な位置づけなのでダイス結果などはありません。
これだけじゃ物足りないと思うので早めに次の話を投稿する予定です。



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カルマ達は急いで広間から出て外へと向かう、幸いな事に敵などはいなかった為に地下室からの脱出は容易だった。

しかしここに来てトラブルが発生する。

「お兄ちゃん!ドアが開かない!」

「ッ……ダメだ!壊せない!」

謎の障壁のせいで外に出る事が不可能となっていた、そうこう騒いでいるうちにも地下室で何かあったのか屋敷全体が揺れていることに気がつくだろう。
その揺れはだんだんと大きくなりカルマはあちこちから何かが落ちる音などを聞き取れるだろう。

立てないほど強い揺れが起こるとパリンッと言うガラスが割れるような音が聞こえる。
それを聞いたカルマは匍匐前進でドアまで近づき柱を支えとして立ち上がるとドアノブを捻る、するとドアは先程までの不動だったことを忘れてしまったかのように簡単に開いてしまった。

これ幸いとカルマは屋敷から脱出すると

「ふ、二人とも!早くこちらへ!」

この間にも揺れはどんどん大きくなっていくもはや屋敷が倒壊していないのが奇跡だと言えるほどだった。
カルマに習って匍匐前進で進んでいるがそれよりも屋敷が倒壊する方が先だと察したカルマは変態技術の一つ縮地を使いユリとランの近くまで辿り着くと同時に二人を抱えて今度は格闘アビリティの“縮地”を使用して一瞬で屋敷の外に出る。

普通の人間ならば例え格闘アビリティの“縮地”があっても屋敷に再び入ることは出来ても二人を回収した上でもう一度縮地なんて出来ないだろうがこの男は縮地をしながら二人に近づきつつその勢いのまま二人を抱えたてもう一度縮地を行ったのだ頭がおかしいとしか言えないだろう。


「ふぅ……何とかなりましたね」

「し、死ぬかと思った……」

「大量のゴブリンに集られるより怖いぞこれ……」

ユリとランが項垂れてあると揺れが一際大きくなると共に木が折れるような音や石が崩れる音が聞こえる、屋敷が倒壊しているのだ。
美しかった屋敷はその原型も残さぬほどに壊れて綺麗な薔薇の庭園は倒壊した屋敷の下敷きになったり見るも無残な姿へと変貌していた。


この屋敷の倒壊と同時に揺れは収まった。


「……地下室にいたアマリスさんはどうなったのでしょう」

「確か身体が浮いてたよね……しかも紫色に輝きながら」

「どう考えてもあれは第二形態だろ、なんか周りの魔法陣っぽいのも同調してたし」

「ありえる……」

「一応警戒はしておきましょうか」

カルマが言葉を言い終わる前に屋敷の瓦礫が崩れる音がする、それに驚いて屋敷の方を見ると

そこには花の蕾があった、それも人並みの大きさのである。カルマ達が困惑している中、花の蕾が一枚一枚花弁を広げ出していく
まるでコマ送りのように開いていく巨大な花は開花した姿を見ると薔薇に似ていると思えるだろう
しかし普通の花にあるはずの“おしべ”と呼ばれる部分が存在せずそこには……


「アマリスさん!?」

「なっ!」

「………」

アマリス・ローズにそっくりな何かがあった、花冠から生えている“それ”はアルラウネのような姿をしておりその身には紅い花弁のドレスを纏っていた。

カルマ達が驚いていると突然、アマリス・ローズが上空へと飛び立つのかと思うほどに速く上昇する。
その下からは木の幹のように太い茎が伸びてくる、周りの瓦礫を強引に退かしつつ出現したそれは何本もの細い茎をカルマ達を囲むように配置する、そこから逃走しようにも茎には薔薇のようなとても鋭いトゲがあるために逃走するにはそれ相応の対価が必要なことが分かることだろう。


「囲まれた!?」

「強制戦闘ですかね、取り敢えず構えて!」

「お兄ちゃん!あれ!」

そう言って指差すユリの先にはアマリス・ローズがいた、カルマは不思議そうな顔にユリは察したのか

「お兄ちゃん、“識別”を使って!」

「ええと、どうやって?」

「取り敢えず使うって意思を持てばいけるはず」

「(……よく分かりませんけど……“識別”)」

すると本が飛び出してこんな表記がされる。


No.EX【悲願する薔薇乙女アマリス・ローズ
分類:悲劇の厄災ディザスター
脅威度:★★★★★
生息地:Unknownアンノウン
ドロップ品:???
解説:???

「なんですか、これ……」

「知らなかったの?アップデートで一部のスキルを使うとより詳細な情報が分かること」

「分かるわけないじゃないですか……ともかく悲願する薔薇乙女アマリス・ローズというのが今の彼女の名前ですか……」

よくよく観察してみるとアマリス・ローズは神に祈るように手を組んでいることが分かる
おそらく悲願というのは夫の蘇生だろうと推測しているとアマリスが動き出す。

「第二ラウンド開始ってところだな」

ランが戯言を呟きつつ戦闘が開始する。

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