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第四章 都市防衛戦の波乱

神殿の攻略3【ラン編&第三視点】

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え?お前シリアスさせる気ないだろって?当たり前じゃないですか。
しっかりとあらすじにもシリアルなお話って書いてありますからね。
多分次回はちゃんとシリアスします。




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 俺達は茫然と目の前の光景を眺めていた。
美しい銀月のような髪を揺らしながら真剣な目をする。兄貴ことカルマ。
対するはハットを被ったまるで手品師のような格好の骸骨。目のあった部分に赤い光を宿してその挑戦者を見つめている。

 緊張が高まった瞬間に二人は同じタイミングで開始の言葉を叫ぶ。

「『デュエルスタートッッ!』」

───同時に山札にあるカードをドローする。

 俺は頭を押さえつつ深呼吸して状況を把握しようと周りを見る。
均等に建てられた神殿を支える為の巨大な柱に、まるで王城のような端に金の装飾が施されたレッドカーペット。
そしてその先にある玉座の上にはクリスタルのようなものが光りながら鎮座していた。
 その横に白亜の空間には破滅的に似合わない黒いテーブルと椅子、その上にプレイマットらしき線が描かれた魔法陣付きのカラフルな布があり、そこには兄貴と骸骨のものと思わしきカードの山がある。

うん………どうしてこうなった……。

 この事を語るには数十分前に遡る。







 俺らはボスであるミノタウロスを倒し休憩をした後に20階層へ行くための魔法陣に乗っていた。
転移時の視界が歪む現象を流しながら周囲の確認をする。
 白亜な壁や床なのは変わらないのだが今までの通路ではなく先程まで居た、ボス部屋のような部屋だった。
均等に並べられた柱は浮き彫りにされており縦縞模様のようになっている。
俺たちの足元にはハリウッドのレッドカーペットみたいなものが長方形に続いてその先を目で辿ると短い階段があり、その上には赤く塗装された革に金色の金属で作られたほぼ全ての人がイメージするような玉座がある。
 それだけならばまだ分かるのだが玉座の上にブリオレットカットと呼ばれるドロップ型の宝石カットの成された虹色の光を放つ不思議な宝石があった。

「……なんだ、あれ」

思わず溢れた言葉に兄貴が口を開く。

「……恐らくダンジョンコアとかそう言う物じゃないですかね。」

 確かに創作物でのダンジョンコアはダンジョンの最奥にあるのがお約束だし宝石って言うのも一致している……本当にダンジョンコアなのか?
 その宝石の光を見ていると何だか本能的な恐怖を感じて気がつかないうちに半歩足を後ろにしていた。
アレは何だ。と俺が警戒を高めると何処からかカラカラという軽い音が鳴る。

『ハッハッハッ……フハハハハハ』

 そしてこの場には合わない重圧の乗った笑い声が広間に響き渡る。
各々が武器を引き抜いてより警戒を高めていくと玉座の前に禍々しいオーラを纏った手品師のような装いの骸骨が不気味に妖しく光る眼がこちらにギョッと向けられる。
骸骨は紅い眼光を細めて嬉しそうな声でその言葉を告げる。

『よくぞ来た!挑戦者よ!我が名はボルガルト・ロード……この神殿の主にして魔を束ねるロードの名を持つ者である!』

 何やら喜んで見るだが何でだ?と俺の顔に出ていたのか、愚痴を言うように語り出す。

『我輩が死んでデーモンロードとなってはや1400年ほどが経ち挑んできた者はゼロ……何故だか崇拝されるようになりより人は寄り付かなくなりやっと来たのがお主らだ!いやぁ暇好きてこの世の全ての娯楽を遊び尽くしたわ。』

 さて、と仕切り直すと先程の嬉しそうな表情はすっかり抜け落ちて戦意に溢れた引き締められたものとなる。(骸骨なので表情はない)

『我輩に挑み、富と名声を得ようとする勇敢なる探索者よ。いざ尋常に───』

勝負と言おうとするまえに無防備な状態で兄貴がボルガルトに歩み寄っていく。
それにボルガルトは混乱しながら

『お主、まさか我輩と一騎討ちなどと言うではあるまいな。我輩とお主ではステータスに天と地との差が──』

と暗に仲間と共に戦った方が勝率高いよと優しく教えているがそんなことはどうでも良いと言わんばかりに突き進み1mもない場所まで辿り着くと歩みを止めて口を開く。
 一体何を話すんだと緊張が高まる。クリムが拳を握りしめ、アリスは息を呑み、ユリは何故だか呆れたような目で兄貴を見ている。
俺は目の前で起こる戦闘を目に焼き付けようと集中しようとすると兄貴の言葉が紡がれる。



「貴方、レジェンダーではありませんか?」

 レジェンダー……それは世界中で大人気なトレンディングカードゲーム【ヒーローヴィランレジェンドストーリーズ】と言うゲームのプレイヤーの呼称である。
このゲームは戦略性が必要とされ地形やカードの効果を駆使して英雄や悪党、はたまた神やモンスターまでも使い相手と対戦する遊びだ。
カルマはガラクタ堂の店主と度々このゲームをやっていたらしくハマったとのこと。

「「「は?」」」

「!?」

 ボルガルトはどうやら相当驚いているようで紅い瞳が大きく見開かれる。
そして何処からかデッキらしきものを突き付ける。

『フッ、お主……否、貴殿はどうやら同志のようだな』

「ええ、貴方からは同志の匂いがしましたからね。あと私はカルマと呼んでください」

『うむ、分かったぞ。我輩はボルと呼ぶが良いカルマよ。』

 お互いに「フッ」と格好良く笑いながら握手する。俺の頭にハテナが量産される中で二人の話は続いていく。

「さて、レジェンダーの目と目が合えば」

『あぁ、分かっとる。カルマよ!ここには人間、モンスターの境目などなく、あるは友の遊びのみだ。』

「地形は“フラット”でいいですね?」

『もちろんだ。』

いつの間にか黒いテーブルと椅子が用意されており二人はそこに座るとカードを広げて目を合わす。
バトルが───

「では、行きますよッ!」

「『デュエルスタートッッ!』」

──始まった。


◇scene ~第三者視点~


 そうして今に至る……意味が分からないと思うが恐らく現場にいるラン達の方が混乱していると思われる。

「先行は私がさせて頂きます。コストを3払いモンスター・ウルフを召喚!」

 カルマがプレイマットに狼の絵が描かれたカードを置くとホログラムなのだろうか、動く狼が表示される。
コストとは初期は10あり、ターンが進む毎に+10されるモンスターの召喚や魔術の使用などに使われるポイントである。

「さらに、コストを5払いマジック・群狼を発動!効果はフィールドにウルフがいる時に手札からウルフを二体、コストなしで召喚できる。」

 一匹の狼が二匹増えて三匹の狼がプレイマットの上で生き生きと動いている。
マジックは強い効果が多いのだがその代わりに制限が設けられたクセの強いものが多いカードだ。

「まだ私のターンは終わっていない!コストを2払いウルフの効果、統率を使う!それによりフィールドに居る狼×100の攻撃力が3ターンの間、ウルフに上乗せされる。」

 一匹の狼が遠吠えをすると呼応するように二匹の狼も遠吠えをするとその頭上に500と赤く表示されていたものが800となる。
他にも青い数字として350ある。
これは防御力でこれが攻撃力を下回るとモンスターは破壊されて墓地に送られる。

「ターンエンド」

 そしてこのゲームは召喚したモンスターは次のターンではないと攻撃できないと言う制約がある。
ボルは面白そうに目を細めて骨をカラカラと鳴らす、ふむむと悩んでいるところを見ると戦略を考えているようだ。

『フハハハ、さすがだな我が友よ。だが我輩も負けてはいまいぞ!』

ボルが手札からカードをフィールドに置きその効果を読み上げる。

『我輩のターン!コスト5を払いモンスター・グリーンゴブリンを召喚!さらにコスト・5を払いマジック・進化の秘宝をグリーンゴブリンに使用する!』

 フィールドに居たグリーンゴブリンの上にマジック・進化の秘宝を置くとゴブリンが光り輝き収まるとそこには貧弱なゴブリンなど居らず、そこには強靭な肉体と立派なツノを携えた赤い鬼がいた。
オーガ……ではなくゴブリンが二段階進化したレッドゴブリンである。攻撃力は1200、防御力850とかなり強いモンスターだ。
進化の秘宝の効果は最低進化のモンスターを二段階進化させるもの、デメリットは3ターン後には元のグリーンゴブリンに戻ってしまうことだがそれでもかなり強いカードには変わりがない。

コストが尽きたためにカルマのターンとなると3枚ドローする。
マジック・群狼をさらに発動させ狼を二匹増やすと新たにモンスターを召喚する。

「コスト10払いウルフ五匹を生贄に、モンスター・狼の統率者ウルフコマンダーを召喚しコスト5消費して効果、狼の招来を使う。効果はフィールドにウルフ三匹を召喚する。」

 五匹の狼が同時に遠吠えを上げて光に包まれるとそこには眼帯を付けた白い狼が鋭い目つきで立っていた。
このゲームの勝敗は1万のHPが0になるか、カードが全部無くなるかで決まる。

『フッ、やるではないか!』

「ふっふっふっ、伊達にアナログゲームをやってませんからね!」


 長いのでここからはダイジェスト形式で進めさせてもらう。

◇5ターン目

「コスト10を消費、マジック・王たる資格をウルフコマンダーに使用する。条件は整いました。コスト20を使いコマンダーを白銀の神喰う狼王フェンリルに進化させ、さらに20を支払いマジック・覇者を使う。効果は進化段階が3より下のものを敵味方問わずに破壊する。」

◇14ターン

『コストを100支払いッ!深淵なる餓鬼アビス・オーガにマジック・龍化の儀式を使うことによりアビス・オーガはヴィラン・深淵龍ガブリトラに進化する。そしてこのモンスターは既に1ターン以上前から場に出ているために攻撃が可能だ。そしてコスト15を使い深淵龍がブリトラの効果、深淵の濁流を使用ッ!効果はモンスターを無視して攻撃できる!
さぁ!我が友よ、この攻撃に耐えられるか!?』

 カルマはフィールドの前に伏せてあるカードをめくふと効果を告げる。

「マジック・リフレクトを発動。このカードはプレイヤーに直接攻撃された時にのみ使えるもので効果は相手の攻撃を二倍にして返す。
膨大な効果の代わりにコストは100と大きいですがまぁ仕方ないでしょうね。」

『なっ!そのカードはかなりのレアモノのはずだが……』

「知り合いの骨董屋から買い取ったんですよ。」

『なるほどな、我輩に紹介してもらえるだろうか』

「ええ、もちろんですとも」

 この後もカードバトルは続き、何故か置いてあったオセロで遊びながらラン達は暇を潰していたがバトルは2時間に及んだと言う……。

【Tips】ヒーローヴィランレジェンドストーリーズについて。ミリオンセラーを達成した世界的に大人気なゲーム。複雑なゲーム性とキャラが表示されると言う点から大人から子供まで遊んでいるのだとか。


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おかしいな……途中までシリアスしてたのに後半が面白いことになってる。
誰だよ、カードゲームなんて書いたのは……楽しかったです。

え?お前シリアスさせる気ないだろって?当たり前じゃないですか。
しっかりとあらすじにもシリアルなお話って書いてありますからね。
多分次回はちゃんとシリアスします。


【スケジュール】
10月25日日曜日 18時投稿予定
11月2日金曜日 18時投稿

【ニャルの語り】

一週間ぶりだね。ニャル様だぞ?
今回も質問が来てるから答えるよ……最近、ボクのキャラが崩れている気がするけど、まぁいっか
そんなことよりも質問はまだまだ募集してるからね!

Q「召喚失敗してもいいんで懐でクトゥグア召喚してもいいですか?」

む、辞めてくれよ。
ボク、アイツ嫌いなんだよ。ボクの住処を壊されただけじゃなく昔からいろいろとあってブッコロ
コホン!絶対に会いたくないんだから……人間で言うならば根本から合わないんだよ。
アイツってば見た目通り熱血系だしうざったいんだよね。
ええとボクが陰キャならクトゥグアは陽キャなんだよ、キミもボクが嫌いなのは結構なんだけどさ
キミだって人間だろ?ならその大っ嫌いな人間がボクにとってのクトゥグアなんだよ……まぁ嫌いな人間がいないなんて言うのなら理解は出来ないだろうけどね。

Q「オススメの漫画とかある?」

……キミ本当に同一人物かい?
ボクに死ねとかクトゥグア召喚するとか言ってくるやつなんだよね……まぁいいや。
ともかくお勧めの漫画か……ボクは確か今、ドラマをやってる極道が主夫やる漫画が好きだね。
喧嘩をやりそうなんだけど絶対に喧嘩ではなく平和的な解決方法で終わるんだよね。
顔が怖いのに主夫力が高すぎて笑えてくるんだよ……え、ボクがこんなのなんで紹介するって?もっとヤバイものを紹介しろ?
仕方ないな~!作者がこれ紹介しろって煩かったからボクのが紹介出来なかっんだよね!

ボクが紹介するのは仲良し老夫婦が謎の力によって若返る漫画だよ。
二人ともカッコ良いのに何だかほっこりしちゃう作品だね!
……なんだよ、その目はボクだってこう言うのも見るに決まってるじゃないか
人をなんだと思ってるんだい?

ふぅ……この二つの漫画はニコニコしてそうな漫画アプリで『極道』や『若返る』で検索したら出てくるから是非読んでみると良いよ。
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