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第四章 都市防衛戦の波乱

苦労人の疾風劇【疾き閃華】

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ドーモ。ドクシャ=サン。チュウニビョウナヒトです。

 この回を入れたからにはタグにパロディを入れなければならない。
 別に後悔はしてない、だって楽しかったからね。

 最近、この作品をハイファンタジーだと言ってもバレない気がしてきてます。


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 所々に木が生えている坂道な山道。そこは少し前までは阿鼻叫喚が聞こえる地獄のような場所だったが今では数少ないロックルを狩れる者のみがいる場所となっていた。






 バスケットボールサイズの岩が凄まじい勢いでこちらに転がって来る。
 その速度、プロ野球選手の投げる豪速球並みだと思ってしまうほどに速い。
 正直バッターの気分になっている金髪碧眼の儚いというよりはワイルドな感じの美少年がいた。
 美少年はとんでもない長さの大太刀の鯉口を切り、回るように抜刀。丁度転がってきた岩の真ん中に当たり、文字通り一刀両断をした。
 
 まだまだ転がってくる岩に対して、先程の抜刀よりは遅い、しかし疾く鋭い一撃を入れてまるで岩が豆腐のように切れていく様は圧巻の一言だろう。
 
 太陽の光に刀身が煌めき、赤き閃光の華のようになっており、とても綺麗なのだがそれを褒めるものはここにはいない。


 一区切りがついて一息付くと納刀し、そこら辺にあるモンスターではない岩場に腰掛ける。
 美少年ことランはずっとここで高速で転がって来るロックルという岩のモンスターに対して刀で切るというとんでもない技を繰り出していた。
 もはや達人ですら敵わないほどに上達した刀の腕は、斬鉄も叶いそうなほどになっている。

「ここ、稼ぎはいいけど精神的に疲れてくるな。」

 ランはクリムとアリスが提案した勝負(イベントでポイントが一番高い人の言うことを一つする)に参加する気は無かった。
 草薙家の天然スキルで自分に向いている好意には鈍感なのに他の人に向いている好意を感じ取れるランは、もちろん二人の企みには気が付いており、もしも命令権を得てもどちらかに渡す予定だった。
 そして誰が勝つかも予想出来ていた。

 それはアリスだと、このメンバーの中で1番の殲滅力を誇るためである。前のダンジョン戦で見せたあの焔嵐は、より成長して攻撃性が増しているだろうと考えたためだ。
 ちなみにカルマは、一対一も一対多数も行けるが魔術が普通の敵に弱いことや主力攻撃が格闘なために殲滅力に欠けて優勝は難しいとの判断だ。



 しばらく休憩したり、斬岩したり、何となくまたカルマが厄介ごとに出遭っているような気がしていると、急に空気が、辺りの気配が冷たくなって行く。

「ん?」

 ランは自然と大太刀を構え直す。
 目を細めて気配の正体を探ろうとするが“気配探知”は、ランの才を持ってしても再現は難しい……が劣化版ならば使える。気配察知とでも言うべきもので調べるが中々に稀薄な気配で捉えにくい。
  
「後ろッ!」

 突如、風切り音が聞こえる方向に大太刀を大振りにそして上手く当てて弾く。それは苦無、かつて忍者が持つとされる道具の一つ。

 何かが降り立ったような気がして振り向くとそこには───







 ゴリラが居た。

 正確に言うならば全身が金属で出来た忍者風のゴリラである。ランは反射的に叫ぶ。

「アイエエエエ! ゴリラ!? ゴリラナンデ!?」

 鉄甲ゴリラとでも言うべきソレは、無機質な男声で答える。

「ドーモ。初めましてアーマードゴリラです。」

 そう言い目の前の鉄ゴリラは、合掌しながらオジギをする。なんと言う見事なアイサツ、これでアイサツを返さなければスゴイ・シツレイだ。
 そんな考えを一瞬でまとめたランは似たようなアイサツを返す。

「ドーモ。初めましてアーマードゴリラ=サン。スタイリッシュザムライです。」

 ランも同じくオジギをしながらアイサツを返す。顔を上げると鉄甲ゴリラは、とても満足そうな顔をしていた。

「ふっ」

「ゴっ」

 これは古事記にもそう書かれてる非常に奥ゆかしい行為である。別に同士がいて嬉しいわけではない、ないのだ。
 そこから0.2秒ほど経ち、唐突に戦闘が始まる。これはイクサの合図だからな! 不意打ちなんて上等だわ!

「イヤーッ!」

 金属の拳が見た目を遥かに超えた素早い動きで突っ込んでくる。拳の横スレスレで回避、代わりに蹴りを鉄ゴリラの腹にぶち込む。

「おらっ!!」

 渾身の蹴りを喰らった鉄ゴリラは、その見た目に反して数メートル後退りしてしまう。どうやら意外と軽いようだと判断する。

(イッッタァァ!! 足が、足がぁ!! 
 鉄の塊なんて蹴るんじゃ無かったぁ!)

「なんと、ワザマエ!」

 鉄甲ゴリラは、褒め称えるが答える暇が無いほどに速く近付き、重そうな拳を何度も振るう。
 ランも大太刀でガードや、回避したりするものの少なくないダメージを負ってしまう。

 代わりと言わんばかりに技を繰り出す。

「肆の太刀“幻刄” 漆の太刀“迅雷” 捌の太刀“牙狼”」

 効果は、『攻撃範囲延長』『速度増加』、そして突き技である。
 瞬間的に近寄り、余りの危険さに剣道では禁止されている突き技を解き放つ。大技故に隙が大きいがその分、当たればかなりのダメージを見込める。


 鋭い一撃が鉄甲ゴリラに迫る、が何と鉄甲ゴリラは、太い指2本で真剣白刃取りをしてしまったのだ。

 ランは大太刀を抜き取ろうとするが無理と判断し、大太刀を召喚で喚び戻す。
 この武具召喚アイテムスロットシステムが実装されて、投げても武器が戻ってくるために気軽に投擲できるようになっている。
 その上、相手に武器を取られても回収できるために、かなりの良アプデと言えるだろう。

(突き技は、当たらないか。幸にしてここら辺は開けてるから大太刀が何かに引っかかることもない……やはり物量で攻めるか)

 考えをまとめると鉄甲ゴリラは、指から青白い強烈な光を放つ弾を準備していた。急いでランは“ 不可視の槍”をSP10投入し、30ダメージを叩き込むという範囲攻撃をする。


 ゆらゆらと陽炎とように空気が揺れるかと思うと鉄甲ゴリラが突然、爆発する。“不可視の槍”が命中したようだ。

 大量の砂埃が舞う。
 視界が遮られたがあの攻撃を喰らうよりはマシと考えたランは、目を瞑り音が聞こえないか耳を澄ます。


 風が草を揺らす音。

 岩が転がるような音。

 何処からか聞こえる剣戟の音。

 限り無く小さいが草を踏む音。


 草を踏む音の方に小さく「参の太刀“飛影”」と呟き、横振りの斬撃を飛ばす。
 その衝撃で砂埃が晴れて、斬撃が鉄甲ゴリラへと命中する。

 鉄甲ゴリラは気にした様子もなく、次の手を繰り出す。ランに何かを投げたかと思うと胸に【555】という数字が現れたかと思うと急にドラミングをしだした。
 ランはチャンスと思い、体を動かそうとするが……動かない。

「……一体何が?」

 よく確認すると状態が追加されていた。それは“影縫い”、相手を一定時間行動不能にするものだと分かり、ランは焦る。
 どう考えてもあれは攻撃の予兆だと思ったからだ。

 何も出来ないまま、鉄甲ゴリラを観察しているとだんだんと赤の光を纏っていく。完全に包まれると鉄甲ゴリラは、顔以外が赤の赤忍ゴリラとなった。

「イヤーッ!」

 奇声を上げながらランに腹パンをしてきた。思わず咳き込みつつも“影縫い”からは逃れられた。

 素早くSPポーションを飲んで回復させながら、新たに手に入れたスキルである“加速”、そのアビリティ“アクセル”(AGL+10%)と強化アビリティ“アタックブースト”(攻撃力+5)唱える。
 さらに“身体強化”を発動させる。これは30分間、STRとVIT、AGLをレベル×10%強化する強スキルだ。

 大太刀を握り、考える。
 どうすればこの赤忍ゴリラを倒せるかを……そこで紅荊乃大太刀の鑑定結果を思い出す。


「行くぞ!」

「イヤーッ!!!!」


 鉄拳と大太刀がぶつかる。

 ランの両腕に凄まじい力がかかるがステータス補正で無理矢理押し込む。

「うおぉぉぉらあぁぁ!!!」

 一撃は、赤忍ゴリラの右腕にヒビを入れることに成功した。

 “パキリ”

 そんな音が聞こえる。ヒビは瞬間的に広がって行き、右腕は完全に使用不可となった。

「ぬぅ、だが」

 何かを言いかけるがランは相手が行動する前に大太刀で攻撃する。
 少しずつ、しかし着実にただでさえ速かった刃は、限界を超えてさらに速くなる。
 赤忍ゴリラでも対応しきれぬほどに速くなった大太刀は赤忍ゴリラを確実に倒しにかかっているだろう。

 ランのHPは残り5、一撃でも喰らったらアウト。そんな緊迫状態の中、ランはとんでもなく集中していた。

 世界に色が失われ、音が消え去り、鼻を擽る匂いが無くなり、思考が加速する。
 体感時間が引き伸ばされた状態。【明鏡止水ゾーン】に至ったランはとあることに気が付く。

(ん? ゴリラの右腕がひび割れていないだと?)

 そして右手に先程も見た青白い光が集まっている事にも気が付いた。あれが放たれればランは死ぬし、例え無理矢理回避したとしてもその後にトドメを刺されるのがオチ。


 詰み。

 それがランの弾き出した答えだった。
 諦めかけたその時、紅荊乃大太刀が紅刃を強く輝かせていた。

(これ……は? なるほどなぁ。これならば!)


 ランは不思議と浮かんできたこの状態を打開する魔法のキーワードを叫ぶ。

「紅蓮薔薇よ、今一度咲き誇れ! 開花・序!!」

 紅荊乃大太刀の刃がより強い光を放ったかと思うと紅蓮の刃となった紅荊乃大太刀があった。

「喰らえぇぇ!!! 拾の太刀“静寂”!!!」

 これは最後の刀術アビリティだ。相手をとんでもなく速く斬り、納刀する。正に仕舞いの技である。

 極短時間に刹那の一撃を放つというステータス補正をガン積みした赤き閃光は、いとも容易く赤忍ゴリラの首を斬り飛ばした。

「グワーッ! ……ワザマエ!! そして、サヨウナラッ!」

 赤忍ゴリラが爆発する。当然近くにいたランも巻き込まれるわけで……。

「へ? ちょま!! グ、グワーッ!」



 彼が帰ってきたのは数時間後であり、カルマ達ととんでもないポイント格差があったのは仕方がないことだろう。


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【スケジュール】
1月22日金曜日18時

【ニャルの語り】

 やっほー、そろそろ開始の挨拶が思いつかなくなってきたニャル様だ!!

 特に話すこともないので早速質問返答と行こうじゃないか。

@魅力的なジーニス様(笑)へ「みんなあなたのことが好き()なんだよ」

 …………。

 やっぱりキミは貶してるのかい? ボク、嫌われることした覚えがないんだけどな。
 まぁ別人格のニャルがキミの探索者を何度もロストさせたのか、それともGMにやられたのか、微妙なヒントばっかあげるから怒っているかとどれかかな?

@にゃるさん「別のゲームをしていたらあなたへのヘイトが溜まりました、なので弱点を教えてください」

 いやいやいや、さすがに理不尽じゃないか!?
 一体何のゲームやったらボクのヘイトが高まるんだ?
 弱点は……特に無いね。ボクを退散させるなら火の化身でも連れて来るといいさ。

 
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