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一章 遭遇⑤
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「災難だったな!」
授業が終わり、自席へ戻ってきた俺に寛太が声をかけてきた。
「全くだよ……」
疲れたように吐き出された俺の言葉に寛太が苦笑した。
「でも、結構八卦ちゃんと仲良くなれたんじゃない?」
千歳に言われて後ろを見てみるが、八卦は授業中と変わらず本を読んでいた。自身の名前が出たというのに無関心すぎる気がする。……どうして、こいつは教師に怒られなかったのやら。
「あなたと違って私は要領がいいから」
「ナチュラルに心の声に返すな」
「え? あなたみたいな考えの足りない人の思考なんて簡単に想像つくけど」
「……なんでまともに話をしていないお前からそんなことを言われないといけないんだ。俺は猿とでも言いたいのかよ」
「いくらなんでもそれは失礼でしょう? 謝りなさい、猿に……いや、アメーバに」
「俺は単細胞以下とでも言いたいのかよ!」
「……っ! あなた……分かるの?」
「そこで驚くんじゃない!」
「あはは、八卦ちゃん、最高だわ! あ、私は直江千歳っていうの。ちなみにこっちはバ寛太よ。よろしくね」
「誰がバ寛太だよ! 俺の名前は鮎川寛太だ! 八卦さん、よろしくな。……それにしても、圭。お前、もう八卦さんと仲良くなっているのか」
寛太に呟かれた言葉を全力で否定したい。そして、実は結構、千歳はひどいんじゃないだろうか。幼馴染と親友の言葉に何か言おうと俺が口を開く前に八卦の口が開かれた。
「えっと、私が誰と仲良くなっているというの? ここにはあなたたち二人と」
八卦が寛太と千歳を指さす。そして、俺の方へ指を向けて――
「見るのもはばかられる存在しかいないわよ?」
「どういう存在だよ!」
しっかりと目を逸らしているところがなおのこと腹立たしい。
さっきから連続してけなされる俺は八卦と仲良くすることは無理な気がしてきた。
そんな俺に向かって八卦がいじけたように呟く。
「占いを馬鹿にする人なんて、そんな扱いで十分よ」
どうやら、占いにあまり興味を持っていない様子が気に入らなかったらしい。
俺達のことを視線から外し、八卦はカードを出し始めた。色々な絵と数字が描かれている。あれはタロットカードとかいうやつだろうか。
「きた! 私の中にいいアイデアが降りてきたわ!」
千歳が大きな声を出すが、寛太は気にすることなく俺に耳打ちした。
「なにやら面白そうな子だよな」
「一度、お前の頭は病院で見てもらった方がいいと思うぞ」
八卦みたいなやつを面白そうと言えるなんて気がしれない。後ろですごい勢いで何かを描いている千歳を無視しつつ、俺は言った。
「それに最高じゃないか!」
何が、とは聞かないでおこう。今のこいつと同じ存在に落ちたくない。俺は知っている。寛太が色々な女性のことを調べていることを。そこに決まった属性がないことを。
「寛太、お前いつか捕まるぞ」
「見つかるようなヘマなんてしないさ! 第一、お前も似たようなものだろう?」
「俺を一緒にするな!」
「事実だろう?」
「驚くような顔をして言うな! そんなわけがないだろう!」
いつの間にか、八卦がタロットから顔を上げてこちらを見ていた。目が蔑みの色を浮かべている気がする。無表情なのに器用な奴だ。そして、俺に向かって見えるように握られている死に神の描かれているカードで何が言いたい。
俺はため息をついた。寛太だけでも疲れるのに八卦が加わると、さらに精神的な疲労が増す気がする。
チャイムが鳴り、元の席に戻っていった寛太を見ながら、俺はもう一度ため息をついた。願わくは、これ以上厄介な奴が来ませんように。
「いいのが描けそうだわ!」
……もう、千歳だけでお腹いっぱいです。
授業が終わり、自席へ戻ってきた俺に寛太が声をかけてきた。
「全くだよ……」
疲れたように吐き出された俺の言葉に寛太が苦笑した。
「でも、結構八卦ちゃんと仲良くなれたんじゃない?」
千歳に言われて後ろを見てみるが、八卦は授業中と変わらず本を読んでいた。自身の名前が出たというのに無関心すぎる気がする。……どうして、こいつは教師に怒られなかったのやら。
「あなたと違って私は要領がいいから」
「ナチュラルに心の声に返すな」
「え? あなたみたいな考えの足りない人の思考なんて簡単に想像つくけど」
「……なんでまともに話をしていないお前からそんなことを言われないといけないんだ。俺は猿とでも言いたいのかよ」
「いくらなんでもそれは失礼でしょう? 謝りなさい、猿に……いや、アメーバに」
「俺は単細胞以下とでも言いたいのかよ!」
「……っ! あなた……分かるの?」
「そこで驚くんじゃない!」
「あはは、八卦ちゃん、最高だわ! あ、私は直江千歳っていうの。ちなみにこっちはバ寛太よ。よろしくね」
「誰がバ寛太だよ! 俺の名前は鮎川寛太だ! 八卦さん、よろしくな。……それにしても、圭。お前、もう八卦さんと仲良くなっているのか」
寛太に呟かれた言葉を全力で否定したい。そして、実は結構、千歳はひどいんじゃないだろうか。幼馴染と親友の言葉に何か言おうと俺が口を開く前に八卦の口が開かれた。
「えっと、私が誰と仲良くなっているというの? ここにはあなたたち二人と」
八卦が寛太と千歳を指さす。そして、俺の方へ指を向けて――
「見るのもはばかられる存在しかいないわよ?」
「どういう存在だよ!」
しっかりと目を逸らしているところがなおのこと腹立たしい。
さっきから連続してけなされる俺は八卦と仲良くすることは無理な気がしてきた。
そんな俺に向かって八卦がいじけたように呟く。
「占いを馬鹿にする人なんて、そんな扱いで十分よ」
どうやら、占いにあまり興味を持っていない様子が気に入らなかったらしい。
俺達のことを視線から外し、八卦はカードを出し始めた。色々な絵と数字が描かれている。あれはタロットカードとかいうやつだろうか。
「きた! 私の中にいいアイデアが降りてきたわ!」
千歳が大きな声を出すが、寛太は気にすることなく俺に耳打ちした。
「なにやら面白そうな子だよな」
「一度、お前の頭は病院で見てもらった方がいいと思うぞ」
八卦みたいなやつを面白そうと言えるなんて気がしれない。後ろですごい勢いで何かを描いている千歳を無視しつつ、俺は言った。
「それに最高じゃないか!」
何が、とは聞かないでおこう。今のこいつと同じ存在に落ちたくない。俺は知っている。寛太が色々な女性のことを調べていることを。そこに決まった属性がないことを。
「寛太、お前いつか捕まるぞ」
「見つかるようなヘマなんてしないさ! 第一、お前も似たようなものだろう?」
「俺を一緒にするな!」
「事実だろう?」
「驚くような顔をして言うな! そんなわけがないだろう!」
いつの間にか、八卦がタロットから顔を上げてこちらを見ていた。目が蔑みの色を浮かべている気がする。無表情なのに器用な奴だ。そして、俺に向かって見えるように握られている死に神の描かれているカードで何が言いたい。
俺はため息をついた。寛太だけでも疲れるのに八卦が加わると、さらに精神的な疲労が増す気がする。
チャイムが鳴り、元の席に戻っていった寛太を見ながら、俺はもう一度ため息をついた。願わくは、これ以上厄介な奴が来ませんように。
「いいのが描けそうだわ!」
……もう、千歳だけでお腹いっぱいです。
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