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第二章 現象⑤
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「いったい、どうすれば……」
俺は何とか雫を家に連れ帰った後、夢を元に戻す手がかりがないか探すために街の中を歩き回っていた。
正直、街を探してもあんな不思議な出来事を解決することができるものが見つかるか怪しいし、可能性なんてないかもしれない。それでも、俺はいてもたってもいられなかったのだ。
妹である雫を泣かせないため。それに妹分である夢を純粋に助けたい気持ち。この二つの気持ちから俺は動いていた。
日が暮れてから、だいぶ時間が経ってしまった。街灯の明かりがあるとはいえ、かなり暗い。
「そういえば八卦と会った日もこんな時間だったっけ」
あまりに色々なことが起こりすぎて、ほんの二日前のことがずいぶんと前に感じてしまう。
でも、今はそんなことを考えても仕方がない。
何か、何か夢を助ける手がかりとなるものがないだろうか。
探し回る俺の耳に蝉のうるさい鳴き声が飛び込んでくる。
夏の暑さに騒音が加わり、焦りをトッピングした俺の気持ちを激しくざわつかせる。正直な気持ちを言うとかなり苛立っていた。
しばらく進むと目の前に十字路が見えた。
「ここで八卦と会ったんだよな……」
俺がそう呟いたとき、目の前に黒い影が見えた。
しかし、その影は前回と違い、ただ目の前を横切ろうとしていた。
「お、おい! 待ってくれ!」
影の正体が八卦であると確信した俺は気づくと声をかけていた。
俺の声に反応したのか、影は立ち止まってこちらを見る。急いで近づくと影はやはり八卦だった。あの時と同じく、八卦は黒い巫女服を着ていた。
「……なに?」
八卦は少しだけ不満そうな声で訊ねてくる。
「急に呼びかけて悪い。でも、どうしても聞きたいことがあったんだ」
「……なに?」
同じ言葉だったが、先ほどよりも少しだけ不満の色が減っているように感じた。
「夢が……。夢の時が止まったんだ」
「……え?」
俺の言葉に八卦は呆けた表情をした。感情をあまり見せることのないと思っていた八卦にはかなり珍しい表情だった。
「急に言われても何のことか分からないかもしれない。でも、もし、もしもだけど、何か分かることがあったら教えてほしいんだ」
俺はなぜか八卦なら夢を助ける方法を知っているに違いないと思った。いや、あの初めて会ったときにおかしなことを言った八卦だからこそ、何か不思議なことについて知っているのではないか、と無意識に考えたのかもしれない。
「よく分からないけど、ひとまず教えて」
「ああ」
俺は八卦に説明した。
夢が不思議な力を使えるようになったこと。
その不思議な力は時を止めることで、実際に俺たちも確認したということ。
そして、最後に夢がその不思議な力のせいで自身もまた時が止まってしまったということ。
「……話を聞いてみたけど、やっぱり分からないわ……」
「そうか……」
八卦なら知っていると確信していたせいか、ショックは大きかった。
「……? ああ、貴方は勘違いしているのね」
「勘違い?」
一体、何を勘違いしているというのだろうか。
「その時が止まったという子のことは見当がついているわ。場合によっては解決もできるかもしれない」
「本当かっ!」
俺は驚きのあまり、大きな声を出してしまった。
目の前では八卦が目を丸くしていた。
「え、ええ……。でも、解決するためにはたぶんあなたの力も必要よ」
「俺の力……?」
意味が分からなかった。あんな不思議な現象を解決するような力が俺にあるとは思えなかったからだ。
「きっとそれこそ貴方がその子の現象に巻き込まれなかった理由だから」
「……どういうことだ?」
疑問を口にした俺に八卦は答えず、言葉を続けた。
「いいから私をその子の元へ案内して」
「あ、ああ」
有無を言わさない八卦の言葉に、疑問を飲み込んだ俺は八卦を夢の家に案内した。
俺は何とか雫を家に連れ帰った後、夢を元に戻す手がかりがないか探すために街の中を歩き回っていた。
正直、街を探してもあんな不思議な出来事を解決することができるものが見つかるか怪しいし、可能性なんてないかもしれない。それでも、俺はいてもたってもいられなかったのだ。
妹である雫を泣かせないため。それに妹分である夢を純粋に助けたい気持ち。この二つの気持ちから俺は動いていた。
日が暮れてから、だいぶ時間が経ってしまった。街灯の明かりがあるとはいえ、かなり暗い。
「そういえば八卦と会った日もこんな時間だったっけ」
あまりに色々なことが起こりすぎて、ほんの二日前のことがずいぶんと前に感じてしまう。
でも、今はそんなことを考えても仕方がない。
何か、何か夢を助ける手がかりとなるものがないだろうか。
探し回る俺の耳に蝉のうるさい鳴き声が飛び込んでくる。
夏の暑さに騒音が加わり、焦りをトッピングした俺の気持ちを激しくざわつかせる。正直な気持ちを言うとかなり苛立っていた。
しばらく進むと目の前に十字路が見えた。
「ここで八卦と会ったんだよな……」
俺がそう呟いたとき、目の前に黒い影が見えた。
しかし、その影は前回と違い、ただ目の前を横切ろうとしていた。
「お、おい! 待ってくれ!」
影の正体が八卦であると確信した俺は気づくと声をかけていた。
俺の声に反応したのか、影は立ち止まってこちらを見る。急いで近づくと影はやはり八卦だった。あの時と同じく、八卦は黒い巫女服を着ていた。
「……なに?」
八卦は少しだけ不満そうな声で訊ねてくる。
「急に呼びかけて悪い。でも、どうしても聞きたいことがあったんだ」
「……なに?」
同じ言葉だったが、先ほどよりも少しだけ不満の色が減っているように感じた。
「夢が……。夢の時が止まったんだ」
「……え?」
俺の言葉に八卦は呆けた表情をした。感情をあまり見せることのないと思っていた八卦にはかなり珍しい表情だった。
「急に言われても何のことか分からないかもしれない。でも、もし、もしもだけど、何か分かることがあったら教えてほしいんだ」
俺はなぜか八卦なら夢を助ける方法を知っているに違いないと思った。いや、あの初めて会ったときにおかしなことを言った八卦だからこそ、何か不思議なことについて知っているのではないか、と無意識に考えたのかもしれない。
「よく分からないけど、ひとまず教えて」
「ああ」
俺は八卦に説明した。
夢が不思議な力を使えるようになったこと。
その不思議な力は時を止めることで、実際に俺たちも確認したということ。
そして、最後に夢がその不思議な力のせいで自身もまた時が止まってしまったということ。
「……話を聞いてみたけど、やっぱり分からないわ……」
「そうか……」
八卦なら知っていると確信していたせいか、ショックは大きかった。
「……? ああ、貴方は勘違いしているのね」
「勘違い?」
一体、何を勘違いしているというのだろうか。
「その時が止まったという子のことは見当がついているわ。場合によっては解決もできるかもしれない」
「本当かっ!」
俺は驚きのあまり、大きな声を出してしまった。
目の前では八卦が目を丸くしていた。
「え、ええ……。でも、解決するためにはたぶんあなたの力も必要よ」
「俺の力……?」
意味が分からなかった。あんな不思議な現象を解決するような力が俺にあるとは思えなかったからだ。
「きっとそれこそ貴方がその子の現象に巻き込まれなかった理由だから」
「……どういうことだ?」
疑問を口にした俺に八卦は答えず、言葉を続けた。
「いいから私をその子の元へ案内して」
「あ、ああ」
有無を言わさない八卦の言葉に、疑問を飲み込んだ俺は八卦を夢の家に案内した。
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