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訓練ルーム

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 訓練ルームは何もなく白い壁と床のすごく広い空間である。
 三人は中に入ると驚く。
 そこには、クロが立っていたからである。

「やっと来たか」

 と、ずっと待っていたかのように言った。

「なんで、先生がここに?」

 ソラが驚いたままクロに聞く。

「毎年一年生は自習の自主性を確かめられるんだ。今年は遅かったようだが」

「ほかのクラスの人たちはどうですか?」

 アリスはクロにほかの状況について質問をする。

「ほかはもうとっくに終わってる、お前たちが最後だ。担任としてがっかりだ」

 そう言ってクロは落ち込んだ様子で言う。

「どうしてこんなことしたんですか?」

 クロにアレンが質問をした。

「だから、自主性の確認だ」

 立ち直って、クロは質問にいつものように面倒くさそうな様子で答える。

「それだけ?」

「それだけだ」

 クロの言葉に三人は唖然とする。

「そう言う事だから、ここを自由に使っていいぞ」

 そう言って、クロは訓練ルームを出ていく。

 三人はクロが出て行ってから少しの間その場で立ったままである。

「そう言えば、ここでなにする気なんだ?」

 ソラが最初に我に返って、アレンにここへ来た理由を聞く。

「ああ、魔力操作を向上させるための訓練をするんだよ」

 アレンはそう言って持ってきた本を開けて座り込む。
 ソラとアリスは本を覗き込む。
 そこには、魔力操作の向上のための訓練方法が三つ書いてある。


 一つ目は、魔力で球を作りそれを長い時間そのまま宙に浮かしておく。

 二つ目は、魔力でいろいろな形を作り出し、それをだんだんと早く変えられるようにする。

 三つ目は、心を落ち着かせ精神統一をする。


 簡単に言えば、その三つが書いてある。

「どれをするんだ?」

 ソラは、アレンに三つのうちどれをするのかを聞く。

「どれがいいかな?」

 アレンはどれをする方がいいのかわからず悩む。

「一つ目の球を浮かすので良いんじゃないの」

 アリスが、一つ目の訓練方法を提案する。

「じゃあ、それにするか」

 そう言って、アレンは本を閉じて後ろの方へ置く。
 そして、ソラとアリスも座り込む。
 三人は集中して手のひらを上向きにして魔力でビー玉程度の大きさの球を作る。
 初めは三人とも余裕だったが時間がたつと、ソラとアレンの球が少しぶれ始める。

「……もう……も、たねえ」

 そう言って二人とも魔力の球が消える。

「はぁ~~、意外と疲れるな」

 ソラは、あきらめて倒れこむ。

「アリスはすごいな」

 アレンは全然ぶれないアリスの魔力の球を見て感心する。

「そんなことないよ」

 少し照れくさそうにアリスが答える。

「確かに、すごいな」

 起き上がってソラもアリスの球を見て感心した。
 その後もアレンとソラは何度も挑戦するがすぐに球が崩れてします。
 アリスはずっと球を崩すことが無くすごいコントロールだと二人は感心しつつも、良くできるアリスに嫉妬してしまう。
 そして授業の終わりのチャイムが鳴り響く。
 二人ともあきらめて立ち上がる。
 アリスも魔力の球を消して立ち上がり、三人は訓練ルームを出て教室へと向かって帰って行く。

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