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第3章・炎帝龍の山

三十話・神父とシスター

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どうして、こうなったんだろう?
オレの目の前には、十数人の獣人達がいる
皆一様に膝をついてこちらを見ている

「「偉大なるお方、アイ様、我らが盟主よ」」

盟主…
なんでかな?
オレは、普通の人間だよ?
この状況になったのは、おそらく彼女…
この世界イレベリアの主神であるイレさんのせい…
彼女があの時にまたしでかしたから…


正直な話
ウマ耳茸とシモタレ草には、驚いたよ。
ヴァン君もそんな話を聞いた事もないって言ってたし
あの本に載っている内容は、かなりレベルが高い鑑定の結果だろうって話だった。
ちなみにカーディナルとモッカイトはその事を知っていたらしい…
あのシモタレ草が混じる種類のキノコは食べないんだとの事
一般人には、そんなに高い鑑定の能力スキルがないから仕方ないんだってさ

その話は、リオさんたちにしなきゃな
だが…それをひとまずは置いておいて
ボルドー達の所に合流したんだけど。
合流をしたのは、いいんだけど…

オレが今ちょっと困っているのは、後ろから抱きしめて離さないこの人の事だ
ケモ耳の女性…彼女の名前は、イライザだ
かなりのボイン…じゃなかった。
巨乳…ちがう!!
どうしても、彼女の胸に目が行く…
じゃなくて!!
彼女は、獣人の国の教会のシスターだったらしい。
彼女は、オレに会うなり…
涙を流しながら

「ああ、神が言われた通りです。皆さん!!本当にもう、大丈夫ですよ。私達を窮地から救ってくださる方が来ました。」

そう言うと、天を仰ぎ手を結んで
一心に祈りを捧げていた。
しかし、その一連の動作にあわせて、胸が…巨乳が揺れている。
その様子に少し引いていると…
リオさんが近寄って来て、耳打ちして来た

「はぁ~、すまない。アイくん彼女によく言っておいたんだけどね。」
「何がどうなったんですか?」
「実は…」

そう言ってリオさんは、こうなった経緯を話してくれた。

リオさん達が合流した時には、すでに彼女は、こんな感じだったそうだ。
ボルドーが探知した地点まで、森の中を駆け抜けた。
そうして、目的地の近くまで辿り着くと
ボルドーは、リオさんたちを外に出した。
ボルドーとリオさんたちが目的地に到着して、しばらくすると結界が解かれた。
結界を張っていた。義父に駆け寄って
リオさんが話をしようとしたら…
手を出して話を遮ったのだった。
そして…

「おはよう。リオ、それと君たちの話したいことは、もうすでに大体は、みんな分かっている。心配する必要は、いらないよ」

難民となった彼らの意思は、リオさんたちが話をする前に
すでに固まっていたのだ。

「妻が失礼をしてすみません。」

狐の獣人の神父のコーネリアスさん
猫耳の巨乳…じゃない!!
シスターイライザの旦那さんだ。
なんだ…旦那さん居るんだ…
ちょっと、残念。

「いえ、大丈夫です。」

後ろから抱きしめて離さなかった
イライザさんをコーネリアスさんが引き離した。
するとそこに…

「ママ~おんぶ~」
「パパ~抱っこ~」

二人の子供が走って来た。
コーネリアスさんとイライザさんにしがみつく
見た感じこの子たちは…

「双子さんですか?」

コーネリアスさんがその二人を抱き上げた。
コーネリアスさんがにっこりと笑って

「そうです。私達の子供です。」
「そして、あと…あの子達も私達の子ですよ。」

指差した方に…
三人の女性とその影に隠れている子供達が居た。
ライラ、メルラは、姉妹で、大臣の妻だったそうだ。
バルサは、騎士長の妻だった。
彼女たちは、夫亡き今…未亡人になってしまった。
彼女たちの影に隠れている子供達は、大半が彼女たちの子供ではない。
彼女たちの子供たちは、殆どがすでに成人していて…
国を守るために戦うっと言って
父親たちと一緒に国に残ってしまった。

なら…この子供達は?
夫婦揃って、騎士団に入団していた人達の子供だと言う。
自分たちだけが仲間たちを捨てて、逃げるわけにはいかないそう言って逃げなかった。
自分たちの幼い子達が脱出するように…っと一団に預けた。

そして…
よく似た容姿の少年少女
この二人は、獣人の国の王族の最後の二人…
第一王女ナターシャ
第三王子ウィリアム
今となっては、すでに王国は無い…
第一王子と第二王子は、国王とともに…


ホームワールドへと移動してもらう事にした。
移動してもらう理由は、いつまた
例の教会の追っ手とかが、彼らを狙ってくるか
全く分からないからだ。
まぁ、ボルドーが居れば大丈夫だろうとは思うんだけどね。
もしも、彼らの身に万が一があったら
…っと思うとやり過ぎと言われる位万全を期したいんだ。

「ボルドー、ホームワールドの入り口を開いてくれるか?」

ボルドーは頷き

『分かりました。入り口を開きます。』

ボルドーのすぐ隣の空間が歪み始めた。
空間が歪むとどよめきが起きた。
しかし、事前に説明していたので、あまり大きくはなかった。
「空間が…」とか「本当なんですのね。」とかだった。
そうして、歪みが安定するとボルドーの隣に入り口が開いた。

「どうぞ、中へ」
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