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五章(快楽堕ちエンド編)
その3
しおりを挟む「ごめんね仁美ちゃん」
僕がもっと若くて健康ならと、申し訳なさげに呟く想い人を前に笑顔を繕う。
「謝らないで。俺は明人さんとこうして一緒にいられるだけで幸せなんです」
半分誠で、半分嘘の言葉だった。
本当は数日に一度、一夜に一回限りの交わりでなく、毎夜空が白むまで繋がり愛し合いたい。若さ故の余りある欲望を全て、この人に受け止めて貰いたいと望んでいた。
しかし彼に無理をさせたくないのもまた本音で、故にずっと長い間我慢をしていた。その忍耐が日常となり、いつしか苦痛を感じなくなってからも尚、それは自らの内に溜まり続けていたのだろう。
彼に良く似た青年に迫られたあの日からずっと。拒絶する心と裏腹に、自身の体は忘れていた筈の熱に苛まれている。
「あ、あ♡ ぁっ、う、ゃッ」
「あともう少しですから、頑張って」
「うぅ、やだぁ♡ ャ、ひ」
「嫌じゃないでしょ津村さん」
ほら、がちがちに勃ってる。そう言って、根本を戒められ先走りを零す陰茎を擦られ、口から声にならない悲鳴が上がる。
荷造りの手伝いを頼み、旦那のことを語り聞かせて以降、須藤は変わった。
一心不乱に、獣の如く自身を求めていた振る舞いはなりを潜め、代わりに良くも悪くも理性的かつ合理的に変わった。こちらに与える快楽を第一に考え、見たこともないような玩具で身体を弄られる日々。
引っ越しの準備は、全くといって良いほど進んでない。というより須藤が家を訪れる頻度が増してダメになった。
彼は仕事こそしているものの融通の効く自由業で、その気になれば毎夜時間を作れると、自身に迫ってきたのだ。それを、断れなかった。勢いに流されてしまった。その結果が今の惨状である。
「うぅ~~も、ッむり♡ ぁ、ぬ、ぬいてぇっ、ぁ、あ♡」
「一回中イキしておきましょうか」
「ア゛ぁっ!! ぉ、あ、アぁ~~っ♡」
「イき癖付けてからの方が、津村さんの体も辛くないですよね」
一体お前は何を見ているんだと、そう思った。現在進行形で泣くほど辛い目に遭わされている現状。後腔に極太のバイブを突っ込まれ、イきたくとも前をバンドで戒められ後ろでしかイくことを許されない。ああ、どうしてこうなった。
「ウぅ、アッ、あ♡ ッ~~ハァ、ぁ」
初めは、良識の範囲に収まるディルドを用いた拡張であった。少し違ったのは胸や陰茎を愛撫され、後ろの刺激が快楽と結びつくよう丁寧に、執拗に仕込まれたこと。
やり方を忘れただけで、元々後ろで快楽を拾い中だけでイくことは出来た。若い頃、性的な事柄には人並み以上に関心があり自ら仕込んだ賜物である。
しかし須藤の施すそれは、過去の自身を大幅に上回るほどの開発、いや調教といっても差し支えのないものだった。
須藤のものよりやや短く、しかし太いバイブが全て収まるようになってからが序の口。そこから一週間みっちりと後ろでの快楽を叩き込まれ、泣こうが喚こうが須藤の定めた時間や回数を終えるまで止めてもらえなかった。
「津村さんが怪我をしないよう、ちゃんと準備しておきたいんです」
限度があるだろうが。そうハッキリと言えればどれほど良かったことか。
須藤は以前と異なり、自身からの性的な接触を拒むようになった。
かつて旦那にしていたことを自身にして欲しくない。焼きもちだと言っても、可愛く思えるのは字面だけだ。
今までのよう色事でなあなあにして誘導する手は使えず、なおかつ自身はあまり口や頭が回る方ではない。理詰めされ、幾度も無茶な要求を通された。純粋な力だけでなく、重ねた年の功をもってしても勝てないのが哀しい。
ほぼ完全に、詰んでいる状況。どうしてこうなってしまったのか。そう思考を逃避させようにも、目の前の現実は待ってくれない。
「津村さん」
後腔に埋まっていたバイブを引き抜かれる。張り出た部位が中の良い所に当たり、図らずとも自身の口から嬌声が零れ出た。
「俺、以前津村さんに無理を強いてしまってから考えたんです」
「ウゥ……」
「自分には忍耐が足りない。口だけの軽い決意で、結果あなたに痛みや恐怖を与えてしまう。そんな有様じゃ、津村さんの好いてる相手に勝てる訳がないと気付いた」
「そ、そんなこと、ない。ないから」
「そう言ってくれるのは嬉しいです。でもそれに自分が甘えて、苦しい思いをするのは津村さんの方だ。この一週間半と少し、俺はただあなたの苦痛が無くなることだけを考えた」
「ぅ、う」
「ねえ。今の津村さんなら、俺が多少無理をさせても大丈夫ですよね?」
この所ずっと、感情を押し殺し平坦だった男の声に初めて色が戻った。
ぞわりと背筋が震える。まるで別人に変わったようでいて、本質は何も変わっていない。
自身もまたそうだった。さして長くもない期間で、すっかりと作り替えられた体。だがこの青年を拒絶したい気持ちは変わらず、それと同時に。
「い、イヤだ。いや」
「近ごろの津村さんは照れ屋だな。自分でも気付いてるでしょう」
「ちが、う、本当に」
「俺に奉仕してくれている間、ずっと物欲しそうな顔をしてた。初めて家を訪れた時からそうだ。本当は、誰かに抱かれたくて仕方がなかったんですよね、津村さん」
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