カレイなる日々

隠井迅

文字の大きさ
38 / 226
一巡目(二〇二二)

第018匙 神田須田町のティックトック:トプカ(A15)

しおりを挟む
 この日、書き手は夕方に秋葉原に行く用事があった。 
 そこで、秋葉原付近で、日曜日の夕方に営業をしている、という基準で訪れる店を探す事にしたのだった。

 東京メトロの丸の内線を利用して、淡路町駅の須田町側の改札を出てから、〈A3〉出口の階段を上がると靖国通りがある。
 この辺りから秋葉原方面に向かう場合には、靖国通りを右にみて、歩道橋の先にある〈U〉字の分かれ道のうち、右の靖国通りではなく、左の細道に入り、白壁に〈BIG APPLE〉と書かれている建物を正面に見て、秋葉原の目抜き通りである中央通りに出るまで、ひたすら真っすぐに進んでゆくことになる。
 とまれかくまれ、A3を出てすぐの細い道をとって、しばらく行くと、その進行方向左手にある店の扉の左側に、コック帽を被り、カイゼル髭をたくわえた、こう言ってよければ、ドワーフのような、独特な雰囲気のある小柄なオジサンの像が目に留まるのだ。
 それが、カリー専門店トプカを象徴している人形なのである。
 日曜のトプカの営業は十八時までで、ラスト・オーダーは十七時四十五分、そして、書き手が淡路町駅に到着したのが十七時半だったので、書き手は、閉店直前にまさに滑り込むように入店したのであった。
  
 秋葉原に隣接している神田界隈で、カレーを食べるならばこの店だろ、といった代表的な店が何軒かあって、そのうちの一つとして〈トプカ〉を推す人が何人もいる。
 そんなトプカが提供しているカレー・ソースは、欧風カレーとインド風カレーの二種類である。
 冊子の店紹介頁や、店の公式サイトによれば、マイルドな「欧風カリーは、契約農家からの大量のリンゴやこだわりあるバター」「白ワインなどを使ってあめ色になるまで炒めたタマネギに、20種類以上のスパイスと鶏スープを加え12時間煮込んで作って」いるとの事であった。
 また、刺激的なインド風カリーは、「北インドの伝統的なカレーにフランス料理の要素を加え」、「シナモンやカルダモン、クミンなどで香りや辛さを引き立て」、「数々のスパイスが調和するように」「手間と時間をおしまない」との事であった。

 カレー・ソースはインド風と欧風の、わずか二種類のように思えてしまうが、驚愕したのは、「注文があってから、一皿一皿、フライパンで調理し」、加えて、「具によってベースになるルーを使いわけ、具材から抽出したブイヨンを加え、一つ一つ違う風味を感じてもらえるように」仕上げているという点だ。
 実際、ホームページには、「欧風エビカリー」や「キマカリー」、そして「カツカリー」の調理動画がアップされていた。

 トプカのホームページによれば、メニューは以下の如くである。

 インド風カリーは、ムルギカリー、インド風ポークカリー、インド風エビカリー、マトンカリー、そして、キマカリーの五種類である。

 欧風カリーの方は、純野菜カリー、牛すじ煮込みカリー、牛すじ野菜カリー、欧風ポーク野菜カリー、チーズカリー、欧風エビカリー、欧風ポークカリー、欧風チキンカリー、コロッケカリー、メンチカリー、カツカリーの十二種類だ。

 ソースと具次第で、上記のような数のメニューがある分けだから、その数だけ別々の味が楽しめる、という事になろう。

 さて、どっちのソースで、いったい何を注文するべきか、それが問題だ。

 トプカは、店の入口のレジにて、対面で事前に注文するスタイルで、そこにいた受付の店員さんによると、閉店間際なので、チキンは既に終わっている、という話であった。

 書き手は、メニュー一覧の中で、インド風カレーの具で「ムルギ」という名称を耳にしたことがなかった。
 そしてこの時、知らないモノに挑戦してみよう、という気がムクムクっと起ち上がってきて、通ぶって、「それじゃ、ムルギカリー」をお願いします、と注文してしまったのである。
 すると、店員さんはこう返してきた。「だから、チキンはありませんよ」
 「???!!!!」
 そこで、書き手は、〈ムルギ〉ではなく、インド風ポークカリーを注文したのであった。

 気になって、後で調べてみたところ、ムルギとは、ヒンディー語で鶏肉の事であった。
 なんで、鳥だけ、現地語を使ってんだよ、と思いつつも、次にインドカレーを食べる機会がある時には、赤っ恥をかかないように、しっかりと覚えて帰ろうと、書き手は思ったのであった。

 それにしても、である。
 ここの店名の「トプカ」は、自店の味に自信を抱いているのであろう、店名は「トップ・クオリティ・オブ・カリー」の頭文字をとったものであるらしい。
 ここから、書き手がつい発想してしまったのは、〈西洋〉は英語で〈オクシデント〉だし、「トップ・インド・カリー」にして「トップ・オクシデント・カリー」でもあるこの店を、「TicToc(ティックトック)」という別称で呼んでもよいかもな、って。

〈訪問データ〉
 トプカ 神田本店:神田・淡路町
 A15
 八月二十八日・日曜日・十七半
 インド風ポークカリー:九八〇円(現金)

〈参考資料〉
 「トプカ 神田本店」、『神田カレー街 公式ガイドブック 2022』、三十一ページ。
〈WEB〉
 『カリー専門店トプカ』、二〇二二年九月十三日閲覧。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

アルファポリス底辺ユーザーのポイント・スコア記録。鼻で笑いたい方は是非ご覧ください。他、涙ぐましいポイ活の記録とか。

筑前煮
エッセイ・ノンフィクション
タイトル通りです。ド底辺ユーザーのスコアなどを載せています。その他アンケートサイトなどで稼いだ実績などを、備忘録も兼ねて淡々とのせます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...